「子どもの権利」って何? 川崎市が具体化した「子ども会議」と「夢パ」がスゴい 他の自治体に拡げるには?

子どもの権利条約批准30周年“子どもの権利”の現在地#2~川崎市の取り組み~

フリーライター:浜田 奈美

「避難所が学校であれば、運営方針の権限は学校長にあります。『勉強をしたいから空き教室を使わせてほしい』とか、子どもからの生の意見を、大人たちに伝えてください」

すると子ども側からも、「大人たちに伝えやすいしくみが必要だよね」と意見が出て、「避難所でも、子ども会議のような場を作ろう」とか、「子どもたちの意見を取りまとめて大人に伝える役割を、中学生や高校生が担ってはどうか」といったアイデアが出ました。

参加した小学6年生の男児は「たくさん意見を出せた。大人たちが自分たちの話を真剣に聞き、一緒に考えてくれて、うれしかった」と満足げでした。この議論は「子ども会議」で続けられ、3月には市長に「提言」として伝えられます。

子どもの力を信じるビッグイベント「こども夢横丁」

もうひとつ、川崎市の「子どもの権利条例」を「見える化」した形が、すべての子どもたちに開かれた居場所「川崎市子ども夢パーク」(以下:夢パ)です。条例の第31条にはこうあります。

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第31条 市は、子どもの自主的及び自発的な参加活動を支援するため、子どもが子どもだけで自由に安心して集うことができる拠点づくりに努めるものとする。
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この条文に基づき、「夢パ」は、子どもが自分の責任で自由に遊び、ありのままでいられる場として、約1万平方メートルの土地に川崎市が建設しました。対外的には「社会教育施設」と説明されますが、実質的には子どもたちのための自由空間といえます。

土の上で思い切り駆け回り、どろんこ遊びもできる屋外広場や、雨の日でも体が動かせる全天候広場、思い切り楽器を鳴らせる音楽スタジオ。そして子育て中のママさんたちが集える乳幼児の部屋「ゆるり」、子どもたちが自由に寝っ転がれる部屋「ごろり」などがあります。

最大の特徴は、学校の中に居場所を見い出せない子どもたちが通える「フリースペースえん」を、夢パの施設内に取り入れていることです。現在40人ほどの子どもたちが「えん」にやってきて、自分のペースで過ごしてます。

川崎市子ども夢パークのお祭り「こどもゆめ横丁」にあった「来場者の方へのお願い」。「子ども達が主役のおまつりです」と記されている。  写真:浜田奈美
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2024年に開催した「こどもゆめ横丁」では31の出店でにぎわった。  写真:浜田奈美

そして「夢パ」が大切にしている考え方を具体的な形にしたビッグイベントが、毎年11月にあります。子どもたちが思い思いの模擬店をつくり、1日店長を務め、実際の現金を使ってモノやサービスを売る「こどもゆめ横丁」(以下:横丁)です。

「横丁」の参加条件は、子どもたちだけですべてをやり切ること。廃材を使った模擬店づくりも、「横丁」当日に何を販売するかも、一切、大人に助けてもらってはいけません。

毎年10月下旬になると、夢パでは子どもたちが釘と金づちとペンキを使ってお店を作り上げる光景が見られます。親たちは、手伝いたいところをぐっと我慢し、黙って見守ります。

今年(2024)は31組が参加し、合計約65万円を売り上げました。「横丁」では各自の売り上げの1割を「納税」するきまりで、「税金」の使い道も子どもたち自身で決めます。今年も自分たちの「税金」を何に使うか、「横丁会議」で話し合いました。

「横丁」の当日、市内在住のマユミさん(35)は、2回目の参加を果たした長男の様子を、笑顔で見守っていました。長男のチームは保育園児と小学校低学年の計4人で、「輪投げ屋」を運営。平均年齢が「ひとけた」の幼いチームでしたが、模擬店もしっかり自分たちで作りました。

マユミさんは、長男たちが初めて参加した昨年、事前の説明会で「幼い子どもたちなので、建物も完成しないかも。大丈夫でしょうか」と、運営スタッフに尋ねたそうです。こう振り返ります。

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