
【子どものワクチン接種】「ワクチンを打つより病気になったほうが免疫はつく」は危険な誤情報 ワクチンの正しい知識〔小児科医が解説〕
#12 令和の「子どもホームケア」~子どものワクチン接種~
2025.09.04
小児科専門医:森戸 やすみ
乳幼児の難聴は気づきにくい
現在、任意接種であるおたふく風邪のワクチンは、実は接種率があまり高くなく、一年中感染者がいます。おたふく風邪の症状自体はそれほど重くないのですが、合併症を起こすことがあるので注意が必要です。
以下は、おたふく風邪に自然感染したときの症状と、ワクチン接種時の副反応の頻度を比較したものです。

※『予防接種に関するQ&A集』(編:日本ワクチン産業協会)より抜粋
表のとおり、ワクチン未接種の自然感染では感染者の400~1000人にひとりが、治療法のない聴覚障害「ムンプス難聴」を起こすことがありますが、ワクチン接種時の副反応では極めてまれです。
おたふく風邪にかかっても、発熱や耳下腺の腫れが少ない「不顕性(ふけんせい)感染」の場合、本人も保護者もおたふく風邪と認識しないまま合併症だけを起こし、小学校入学前の聴覚検査で初めて難聴だと発覚するケースも。幼い子どもが「耳が聞こえない」と自分から言い出すことはまずないですから、保護者が気づくのは難しいでしょう。
また、「おたふく風邪なら子どものうちにかかるだろうから、ワクチンはいらないだろう」と思っても、大人になるまでかからないこともあります。
思春期以降におたふく風邪に感染すると、男性の4人に1人は精巣炎になります。不妊症の原因になることはまれですが、さまざまな程度の睾丸萎縮を伴います。女性も、妊娠後期の妊婦がおたふく風邪にかかれば、27%の確率で流産するといわれています。
合併症を引き起こすリスクを考えたら、自然感染よりワクチンで予防したほうがいいことは明白です。SNSに投稿された根拠のない情報に惑わされず、正しい知識を持っていただきたいと思います。