
【子どもの熱中症】「汗をかかせたほうがいい」は危険な誤解! 正しい暑さ対策とは〔小児科医が解説〕
#10 令和の「子どもホームケア」~子どもの熱中症~
2025.07.23
小児科専門医:森戸 やすみ
エアコンを使う際も同じですね。「冷房の設定温度は何度がいいのか」と聞かれることがありますが、エアコンの機械や環境などによって設定温度と実際の温度が異なることも多々ありますし、数字ではなく、お子さんの様子で判断するのがよいと思います。
汗をびっしょりかいていたり、顔が真っ赤であれば設定温度は下げたほうがいいですし、寒がっていれば当然上げるべきです。子どもも大人も快適に過ごせる温度に設定しましょう。
「冷房をつけたまま寝てもいいのか」ともよく聞かれますが、特に小さなお子さんの場合、寝ている間に大量の汗をかくと熱中症のリスクが高まります。夜中に何度も起きてしまうほどの暑さなら、睡眠不足も心配です。直接お子さんに風が当たらないように注意して、上手に使用すればよいのではないでしょうか。
また、同居するおじいちゃんおばあちゃんが「エアコンは贅沢品」「冷えは体に悪い」などと、エアコンを使いたがらずに困っているご家庭もあるようです。毎年、熱中症で死亡する悲しいニュースがありますが、死亡例で圧倒的に多いのは高齢者です。年齢を重ねると、暑さや口の渇きを感じにくくなることがわかっています。
平均気温が上がっている昨今、エアコンは贅沢品ではなく、命を守るための必需品です。子どもに暑さをがまんさせたら強い子になるわけではありません。大事なお孫さんのためにも、おじいちゃんおばあちゃん自身のためにも、冷房を適度にきかせて命を守る行動をとっていただきたいと思います。
熱中症予防にはこまめに水分と塩分の補給を
熱中症は、何より予防が大切です。汗をかきすぎて体内の水分や塩分が不足することで起こるので、こまめに水分や塩分を補給しましょう。水やお茶と、塩分のあるおやつを一緒に摂るのがいいですね。
乳児の場合、水分補給は母乳かミルクで。特別量を増やす必要はないので、欲しがったらあげます。ミルクは薄めずに、いつもどおりの濃度で作ってください。離乳食を食べ始めた子なら水やお茶でもいいですし、母乳やミルクの回数を増やしても。欲しがったら、その都度あげましょう。
特に夏場になると、市販のスポーツドリンクを「健康にいいから」と、お子さんに飲ませているケースがよく見られます。たしかに水分の補給にはなりますが、スポーツドリンクは糖分が多く含まれた清涼飲料水です。
毎年暑い時期になると、清涼飲料水を大量に飲むことで起きる急性の糖尿病「ペットボトル症候群」が問題になっています。甘いお菓子は一度にたくさん食べられませんが、甘い飲料は飲めてしまうものです。熱中症予防のための水分補給なら、水やお茶のほうが安全だと思います。
〔小児科医:森戸やすみ〕
【子どものホームケアの新常識 その10】
暑さをがまんして無理やり汗をかかせなくても、汗腺は発達する。命を守るためにも、エアコンは積極的に使ってOK。
取材・文/星野早百合
●森戸 やすみ(もりと・やすみ)PROFILE
小児科専門医。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。医療と育児をつなぐ著書多数

星野 早百合
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
森戸 やすみ
小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。
小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。