子どもの「性教育」 3歳児〜小学校高学年〜高校生 家庭での伝え方を産婦人科が伝授

産婦人科医・小徳羅漢先生に聞く、本当に役に立つ「性教育」 #2 ~自宅で行う性教育編~

産婦人科医・総合診療医:小徳 羅漢

小学校高学年以上の子への伝え方

──小学校高学年以降の子どもには何を伝えるべきですか?

小徳先生:まずはプライベートパーツから始めて、中学生くらいになったら具体的にコンドームの使い方などを教えていいと個人的には思います。コンドームは恥ずかしいことでもなんでもなくて、自分と相手の身を守る大切なものだからです。

私は中学高校と男子校だったのですが、一時期、誰かがコンドームを買ってきて、皆それをお守り代わりのように財布に入れていたことがありました。

私の家は比較的保守的で、母親が息子とコンドームについて話すということなどなかったのですが、多感なあの時期にコンドームについて知っておいたことは、今では良かったと思っています。

新聞でも性教育講演について取り上げられました。  写真提供:小徳羅漢

子どもが性感染症になっても𠮟らずに寄り添う

──性教育について大切なことを教えてください。

小徳先生:性に関しては、親が否定したり、𠮟ったりしないことが重要だとも考えています。

今回、高校で性教育をすることになったきっかけの一つに、10代の学生が相次いで性感染症の梅毒で外来を受診したという出来事がありました。どの患者さんも親に付き添われていましたが、困ったときに親に相談できることはとても良いことだと思います。

何でも相談できる親子関係を築くには、性感染症への感染などの思いもよらないトラブルが起きても、決して頭ごなしに𠮟ったり、否定したりしないことが重要です。

また、必要以上に性のことを禁止したり隠さなければならないことと扱ったりすると、子どもはいざ性感染症などになったときに隠そうとしてしまいます。

そうならないためには「今回は失敗してしまったね。まずはしっかり治療して、次はどうすれば防げるかを一緒に考えよう」と、子どもに寄り添うのが大人の役目ではないでしょうか。

あえて「抜け道」を伝えるワケ

小徳先生:また、私は性教育や講演会では、必ず子どもたちに「抜け道」を教えるように意識しています。例えば、どうしても病院を受診できなければ、保健所でも匿名・無料でHIVや梅毒などの性感染症の検査を受けることができますし、保健所によっては他の性感染症(淋菌やクラミジア感染症など)の検査も受けられることがあります。

あるいは、どうしても親にばれたくないと思ったら、費用は2~3万円などかかってしまいますが、保険証を使わずに自費診療ならば親に医療費通知などが届いてばれてしまうこともありません。

性感染症の多くは治療できます。ただし、感染症によっては合併症や後遺障害が残ることもあるため、早期発見、早期治療がとても重要です。だからこそ、どのような形でもいいのでまずは受診してしっかり治療してほしいのです。

──最後にメッセージをお願いします

小徳先生:性教育は、自分と相手を大切に守り、より良く生きるための教育です。「教育」と名前はついていても、肩肘を張らずにざっくばらんに、まずは家族で性について話題にしてみてほしいと思います。

子どもが相手だからといってごまかしたりせずに、あくまでフラットに。人間同士として話し合うことで、自分のことも相手のことも大切にする大人に成長できるはずですから。

───◆───◆───

自宅で行う性教育で重要なことは、性を否定したり、恥ずかしいことだと扱ったりしすぎないことが重要だと教えていただきました。

大切なことだからこそ、隠さずにしっかり我が子と向き合い、自分と相手の身を守れる知識を身につけさせたいと思います。

取材・文/横井かずえ

小徳羅漢先生の性教育は全2回。
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ことく らかん

小徳 羅漢

Kotoku Rakan
産婦人科医・総合診療医

産婦人科専門医・総合診療医。 1991年、茨城県生まれ。小学校高学年から神奈川県で暮らす。2016年、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)卒業後、鹿児島市医師会病院で初期臨床研修。2018年は長崎県上五島病院、2019年には離島へき地医療の最先端といわれるオーストラリア・クイーンズランド州で研修。 2020年~現在は鹿児島県立大島病院に勤務。 病院勤務以外に、街中で医師らに無料相談ができる「暮らしの保健室」を開催。 2018年に結婚、2020年に夫婦で鹿児島県奄美市に移住。2児の父。趣味は温泉巡りと映画鑑賞、そして島巡り。 @rakankotoku

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産婦人科専門医・総合診療医。 1991年、茨城県生まれ。小学校高学年から神奈川県で暮らす。2016年、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)卒業後、鹿児島市医師会病院で初期臨床研修。2018年は長崎県上五島病院、2019年には離島へき地医療の最先端といわれるオーストラリア・クイーンズランド州で研修。 2020年~現在は鹿児島県立大島病院に勤務。 病院勤務以外に、街中で医師らに無料相談ができる「暮らしの保健室」を開催。 2018年に結婚、2020年に夫婦で鹿児島県奄美市に移住。2児の父。趣味は温泉巡りと映画鑑賞、そして島巡り。 @rakankotoku

よこい かずえ

横井 かずえ

Kazue Yokoi
医療ライター

医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL:  https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2

医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL:  https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2