「コンドームの使い方」を高校生全員に教える 離島の産婦人科医の「性教育」の中身とは?
産婦人科医・小徳羅漢先生に聞く、本当に役に立つ「性教育」 #1 ~奄美大島の高校での取り組み編~
2024.10.09
産婦人科医・総合診療医:小徳 羅漢
学生の梅毒患者が相次いで受診
──患者さんを救うには、性教育という根本から取り組む必要があったのですね。
小徳先生:はい。ところが調べれば調べるほど、日本の性教育には矛盾があることが分かりました。
性教育は、文部科学省が決めたルールに従って教えようとすれば、妊娠の経過を取り扱うことができなかったり「性交渉」という言葉を使うことができなかったりなど、本当に役立つ生きた知識を教えることができません。
私は、従来の学校教育で教わっているような表面的な性教育ではなく、本当に受ける意味のある性教育をしたいと思いました。産婦人科医としての経験をもとにした、実生活に役立つ知識を伝えたかったのです。
小徳先生:このように考えているとき、ちょうど今年の春ごろに梅毒に感染した10代の学生が立て続けに外来を受診しました。
梅毒とは性感染症の一種で、粘膜や傷口などと接触することで感染し、セックスやキスなどでも感染します。梅毒というと昔の病気のように思う人もいるかもしれませんが、実は今、梅毒の感染が非常に増えています。2023年度の感染者数は1万4906人で、今の制度で統計を取り始めてから最多の患者数です。今年も上半期だけですでに6772人が感染しています。
梅毒は症状の兆候を見逃しやすいので、感染していると気づかないで他の人にもうつしてしまうことがあります。つまり、受診した数人は、氷山の一角に過ぎないかもしれない。
これは一刻の猶予も許されないと感じ、何とか夏休み前にコンドームを含めた性教育をしたいと思いました。そこで、すぐに勤務する病院の上司を通して、高校の校長先生や養護教諭に連絡を取ったところ、快諾を得て実施できることになったのです。
高校生全員にコンドームを配り、使い方を教えた
──実際にはどのような内容を伝えたのですか?
小徳先生:実際の教育では、梅毒をはじめとしてHIV・エイズなどの性感染症についてレクチャーした上で、コンドームの目的は避妊だけではなく性感染症を防ぐためにも大切であることを伝えました。
また、デートDVや性的同意などについても触れています。さらに妊娠した場合の体への負担、経済的な負担も解説し、主な避妊方法としてコンドームや避妊用ピル、避妊リングなどを紹介し、アフターピルも紹介しました。
この流れの中で、生徒全員にコンドームを配って、2人1組で実際に使い方を学んでもらいました。