理不尽“PTA”を見極める方法 入会届とポイント制が2大要チェック

ノンフィクションライター・大塚玲子さん「PTAの手引き」#1 ~今さら聞けないPTAって何ですか?~

ノンフィクションライター・編集者:大塚 玲子

2013年頃からPTAに関する取材をはじめた、ノンフィクションライターの大塚玲子さん。現状のPTAに違和感を持ち、なんとか変えたいと願う人たちに寄り添って話を聞き続けます。 Zoom取材にて

理不尽PTAかどうか見極める ふたつのチェックポイント

PTAがどのようなルールにのっとり、どのように活動がなされているのか、実際の内情や雰囲気はわかりづらいところです。

自分の学校のPTAのホワイト度を見極める最初のステップとして、まずは以下の2つのことを確認してみてはどうか、と大塚さんは言います。

【1】『入会届』はあったか?  
「入学説明会や保護者会、おたよりなどで、会長や役員さんがみなさんに向けて『入るも入らないも自由の、任意加入の団体である』との説明をきちんとしていれば、だいぶ安心なPTAだと思います」(大塚さん)

また、なんらかの団体に所属するときには、書類にサインして同意をするはずです。

「届けをだしていないのに、駅前のスポーツジムの会員にされていた、なんてことがあるわけないですよね。PTAの入会にも、本来きちんとした『入会届』があってしかるべきです」(大塚さん)

そもそも「学校」と「PTA」は別団体。入会届の提出なく入学と同時に自動的に入会させられてしまうのが、大きな問題となっている「自動強制入会」です。

最近は、紙ベースの『入会届』ではなく、オンラインで入会登録する形もあると大塚さん。いずれにしても、入会についての説明を受け、なんらかの意思確認がされているのならば、第一段階はクリアです。

【2】ポイント制を取っていないか?
PTAや地域によってさまざまですが、活動に独自のルールを持っている場合があります。

例をだすと、「ポイント制」などと言われるものもそのひとつ。この仕組みは、会員に活動の強制を強いるものです。

「役職に応じて、仕事のポイントが加算されていくのがポイント制です。

たとえば、本部役員をやったら10ポイント、委員長は5ポイント、委員は3ポイント、その他の係は1ポイントといったように、役職の負荷に応じて付与されるポイント数が決まっており、小学校であれば在学の6年間で一定数のポイントを貯めなければならないというルールです。

ポイントを貯めた人は、役員選出の対象になることを免れることができます」(大塚さん)

これは一見、平等に活動を分配できる便利なシステムのようで、裏を返せば、着実に仕事をしてポイントを貯めていかないと、将来的に意に沿わない役職に就かざるをえない事態に陥(おちい)る可能性がある、ということです。

「ポイント制は、PTAの仕事のノルマを《保護者全員に平等にさせる》ために編み出されたものです。

このほか、クラスから必ず◯人の委員を出すというやり方や、クラス全員がなんらかの委員や係につかなければいけない『一人一役制』などもありますが、これらのルールはすべて、《強制を前提とした理不尽な仕組み》。

そもそもPTAの活動は義務じゃないので、このような活動を強制するルールがあるのが間違いなのです」(大塚さん)

大塚さんの著書『さよなら、理不尽PTA!』には、この2つを含めた10のチェックリストが挙げられています。

「全10項目はかなり厳しめのチェックリストです。これらすべてをクリアしないとダメ! ということになると、ほぼすべてのPTAが引っかかってしまうかもしれません(苦笑)」(大塚さん)

大塚さんの著作『さよなら、理不尽PTA!』には、理不尽チェックリストとして10項目を掲載。「これはかなり厳しめです。すべてに当てはまらないPTAは現状まだ少ないかもしれません」(大塚さん) 引用:『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版刊)

次回は、大塚さんによるもう少し難易度低めの「うちのPTAは大丈夫? チェックリスト7」を公開。このチェックリストにひっかかってしまったら、立ち向かう術を考える必要があるかもしれません。

また、退会したらどうなるのか? 非会員の子どもへの不当な対応のエピソードなどをうかがいます。

大塚 玲子(おおつか・れいこ)
ノンフィクションライター・編集者。編集プロダクションや出版社勤務を経てフリーになり、書籍やムックの企画編集、執筆等に携わる。「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者の問題)」をテーマにした著書多数。

取材・文/遠藤るりこ

大塚玲子さんは、2021年11月に『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版刊)を上梓。みんな知らないPTAのABCから、改革の虎の巻、実録エピソードまで盛りだくさん!

※PTA連載は全6回。第2〜3回目も大塚玲子さんインタビュー、第2回は22年6月13日、3回6月14日、4回6月15日、5回6月16日、6回6月17日日公開予定です(公開日時までリンク無効)。

#2 非会員差別に免除儀式… 危険PTAを判定する7つのチェックリスト
#3 令和の理想PTAは「便利ツールを駆使しつつ やりたいことをやる!」
#4 PTAやめちまえ! ママ漫画家が見た恐ろしい世界
#5 PTA革命を起こしたママ落語家の“PTA経験を宝”に変える方法
#6 PTAを魔界から大人の原っぱへ!PTA会長1000日間で政治学者が見たもの

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おおつか れいこ

大塚 玲子

ノンフィクションライター・編集者

1971年生まれ、千葉県出身。東京女子大学文理学部社会学科卒業。主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者の問題)」。編集プロダクションや出版社勤務を経てフリーに。書籍やムックの企画編集、執筆等に携わる。 著書に『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版刊)、『オトナ婚です、わたしたち』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『PTAがやっぱりコワい人のための本』(以上、太郎次郎社エディタス刊)、『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(ソフトバンク新書刊)。 共著に『子どもの人権をまもるために』(晶文社刊)、『ブラック校則 理不尽な苦しみの現実』(東洋館出版社刊)がある

1971年生まれ、千葉県出身。東京女子大学文理学部社会学科卒業。主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者の問題)」。編集プロダクションや出版社勤務を経てフリーに。書籍やムックの企画編集、執筆等に携わる。 著書に『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版刊)、『オトナ婚です、わたしたち』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『PTAがやっぱりコワい人のための本』(以上、太郎次郎社エディタス刊)、『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(ソフトバンク新書刊)。 共著に『子どもの人権をまもるために』(晶文社刊)、『ブラック校則 理不尽な苦しみの現実』(東洋館出版社刊)がある

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe