PTAの《お金》問題がアウトソーシングで解決? 余剰金の適切な使い方とは?

PTA専用支援サービス「PTAアウトソーシング」#4 ~PTA会費~

ライター:遠藤 るりこ

放課後の見守りにもIoT技術を活用 アウトソースで発想の転換を

増島さんが全国のPTAとやりとりをしていて、もっとも多いのは、旗振り当番に関する相談や依頼だそうです。

「旗振り当番を外注したいとのご依頼を受けたことがあります。『朝と夕方の数時間、複数箇所に人を配置したらいくらになるのか?』と。

でも、一日2回短時間で複数箇所に人を配置しようと思うと、かなりお金がかかります。とてもじゃないけれど毎日の旗振り派遣は、PTA予算で継続的にまかなえる費用感ではないんです。

そのときは、お近くのシルバー人材センターなどへの相談をご提案しました」(増島さん)

しかし、その後も似たような相談が続きます。共働き世帯が増え、日中の旗振り当番はどんどん難しくなります。そして、そもそも旗振りは何のためにしているのだろうと増島さんは考えます。

「子どもたちの活動をみてみると、朝はおおむね同じ時間に登校するんですが、帰りは学童や習い事などで、時間もルートもバラバラです。

ということは、夕方はいつもの交差点に、旗振り当番の保護者や、おじいちゃんおばあちゃんが立っていても、それほど子どもは通らない。子どもたちの登下校を安心安全にしたいのに、それをあまり果たせていないんですよね。

さらに、立ってくれる人を集めるために苦労をしなければならない状況も、おかしい。だったら、登下校というピンポイントのタイミングだけではなく、放課後という視点で、IoTを活用できないかと思ったんです」(増島さん)

そこで、福岡県にある『otta(オッタ)』という見守りサービスを展開している企業と協業をすることに。子どもや高齢者への見守りニーズが高まるなか、社会構造や地域コミュニティの変化をとらえた、新しい位置情報サービスです。

BLE(Bluetooth Low Energy)を利用した見守りサービスotta(オッタ)とコラボして、放課後の子どもたちを見守る。  画像提供:otta

「まずは子どもたちにビーコンというBluetoothの電波を発信する端末を持たせます。その上で、校区内の『こども110番』の家などにBluetoothの受信機を設置した見守りスポットや、見守りタクシー、アプリをインストールした見守り人を増やしていきます。

すると、見守りスポットやタクシー、見守り人とすれ違った子どもたちの行動履歴が記録されるんです。携帯は学校持ち込みが不可だったり、いざというときに充電が切れていたりしますが、ottaのBluetooth端末なら、6年間電池交換不要なので、その心配もありません。

受信範囲も細かく設定できるので、いざというときには、かなり精度の高い位置情報の確認が可能です」(増島さん)

旗振り当番は、「人を置くこと」が目的ではない。そこから発想して、「子どもたちの安心安全な放課後」を見守るための「システム」を校区に導入する。こういったPTA予算の使い方も、ひとつの手なのかもしれません。

他にも、PTAの抱える「困りごと」を、アウトソーシングで解決する手段があります。次回は、PTA活動の大きな転換点となりうる、《お金》を使ってアウトソースした実例をおうかがいします。

〈PTAにくわしい労働・子育てジャーナリスト 吉田大樹さんから〉

PTA現場でアウトソーシングに賛否があるのは、やはりお金についての問題だと思います。「お金をかけてまで頼むことなのか」ということですよね。

コロナ禍で行事が縮小されるなか、例年と同額のPTA会費を集めていたとしたら、使い道に迷っているなんてところもあるかもしれません。余剰金をどうするのか、解決先のないまま翌年度に繰り越されていく慣習があるPTAも少なくないでしょう。

会費は、子どもたちがいる間に還元しないといけないのが原則です。しかし、PTA予算のなかには長年手がつけられておらず、どう手をつけていけばいいかわからない特別会計もあります。

実はいま私が会長を務めている次男の中学校PTAも同じような状態なので、今後は精査して、一本化するなり使うなりしていかないと、と考えているところです。

PTAアウトソーシングが大きく取り上げられた今は、お金の使い方を見直す時機にもなるのではないでしょうか。何にどう使うかを考えたときに、高額なところにダラダラとお金を流し続けていくのでは、理解が得られないだろうと思います。

PTA会員ひとりひとりを納得させるのは難しいことですが「これならお金を使ってもいいよね」と、多くの人が思えないといけない。コストに見合ったサービスなのか、意味のある活動に転化できているのかをみんなで考えていくことが必要だと思います。

吉田大樹(よしだ・ひろき)プロフィール
労働・子育てジャーナリスト。1977年東京生まれ。NPO法人グリーンパパプロジェクト代表理事。3児のシングルファーザーで、小~高のPTA会長を経験。現在、埼玉県鴻巣市のP連(PTA連合組織)会長。元内閣府「子ども・子育て会議」委員、内閣官房「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会委員も務めている。

増島佐和子(ますじま・さわこ)プロフィール
愛知県名古屋市出身。1995年、日本大学経済学部を卒業後、株式会社三晃社に入社。 J.Walter Thompson Japan、株式会社電通、社会福祉法人東京児童協会などを経て、独立。社会課題の解決を目的とする、神奈川県主催のKSAP(かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム)に採択。2021年に「合同会社さかせる」を設立し、同社代表社員に就任(現任)。自身のPTA経験をきっかけに、全国のPTAを助けたいという思いで、アウトソースのサポートなどを行う専用支援サービス「PTA’S」を運営、情報発信や課題解決に努めている。

取材協力/PTA’S(ピータス)
https://ptas.site

PTA’S代表の増島佐和子さん

取材・文/遠藤るりこ

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よしだ ひろき

吉田 大樹

労働・子育てジャーナリスト、NPO法人グリーンパパプロジェクト代表理事

1977年東京生まれ。札幌出身、埼玉県鴻巣市在住。日本大学大学院法学研究科政治学専攻修了(政治哲学)。 2003年より労働関係の専門誌記者として、ワーク・ライフ・バランスや産業保健(過重労働・メンタルヘルスなど)の問題を取材。働き方や生き方の変革を訴える。 2012年7月から2年間、NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事。2014年から労働・子育てジャーナリストとして活動開始。2016年NPO法人グリーンパパプロジェクトを設立。代表理事に就任。2019年5月から放課後児童クラブ「南よつばの願い学童」の運営開始。 これまでに、内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚生労働省「イクメンプロジェクト推進委員会推進」委員、経済財政諮問会議「今後の経済財政動向等についての点検会合」有識者などを歴任。 現在、厚生労働省「社会保障審議会児童部会子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」委員、内閣官房こども家庭庁準備室「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会委員、東京都「子供・子育て会議」委員、鴻巣市「男女共同参画審議会」委員、鴻巣市「鴻巣市PTA連合会」会長などを務める。 著書に『パパの働き方が社会を変える!』(労働調査会刊) 3児(長男03年生まれ、長女06年生まれ、次男08年生まれ)のシングルファーザー。

1977年東京生まれ。札幌出身、埼玉県鴻巣市在住。日本大学大学院法学研究科政治学専攻修了(政治哲学)。 2003年より労働関係の専門誌記者として、ワーク・ライフ・バランスや産業保健(過重労働・メンタルヘルスなど)の問題を取材。働き方や生き方の変革を訴える。 2012年7月から2年間、NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事。2014年から労働・子育てジャーナリストとして活動開始。2016年NPO法人グリーンパパプロジェクトを設立。代表理事に就任。2019年5月から放課後児童クラブ「南よつばの願い学童」の運営開始。 これまでに、内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚生労働省「イクメンプロジェクト推進委員会推進」委員、経済財政諮問会議「今後の経済財政動向等についての点検会合」有識者などを歴任。 現在、厚生労働省「社会保障審議会児童部会子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」委員、内閣官房こども家庭庁準備室「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会委員、東京都「子供・子育て会議」委員、鴻巣市「男女共同参画審議会」委員、鴻巣市「鴻巣市PTA連合会」会長などを務める。 著書に『パパの働き方が社会を変える!』(労働調査会刊) 3児(長男03年生まれ、長女06年生まれ、次男08年生まれ)のシングルファーザー。

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe