鎌倉市立由比ガ浜中学校【学びの多様化学校】「不登校」だった生徒の8割が毎日登校する驚きの理由「学校は来るだけで100点!」

不登校の子の新たな学びの選択肢「学びの多様化学校」#5 (2/3) 1ページ目に戻る

自分の居場所や学ぶ場所を考えることに意味がある

──「鎌倉市立由比ガ浜中学校」は2025年度に開校したばかりの学校ですが、どのような経緯で設立されたのでしょうか。

分校長・岩田明先生(以下、岩田先生):もともと私は市内の中学校で教員をしていたのですが、2021年から教育委員会の教育センター相談室に配属されました。コロナ禍というのもあって、このころから不登校の相談がすごく増えていました。

市内の不登校の状況について調べていくと、学校、行政、カウンセラー、民間のフリースクールなどのどこともつながっていない子が一定数いることがわかってきました。そういう子どもたちを一刻も早く支援につなげようという動きもあり、当時の教育長の下、学びの多様化学校の設立準備が始まりました。

現在(2026年3月時点)、本校に在籍している生徒は31人。もちろん、この学校だけで市内の不登校の問題を解決できるわけではありません。しかし大切なのは、いろいろな居場所の選択肢があることを知って、自分がどこなら安心して過ごせるのか、学ぶことができるのか、子ども自身が考えることだと思っています。

設立から携わっている由比ガ浜中学校分校長・岩田明先生。  写真提供:由比ガ浜中学校
すべての画像を見る(全9枚)

岩田先生:鎌倉市では不登校支援として、校内フリースペースや、教育支援を行う教育支援教室を設置している他、2021年からは「かまくらULTLAプログラム」という体験型の探究プログラムにも取り組んでいます。

総合的な学習の時間に相当する新教科「ULTLA」での一コマ。地域特性を生かした体験的な学びの機会を設けている。  写真提供:由比ガ浜中学校

自分らしい学びを発見する体験型探究プログラム「ULTLA」

岩田先生: 「ULTLA」は、「Uniqueness Liberation Through Learning optimization and Assessment(学びの最適化と評価による個性の解放)」の略称で、自分に合った学び方を通じて個性を発見していくことを目指したプログラムです。

子どもたちは皆一人ひとり違った思考スタイルや認知特性、得意不得意、関心領域を持っています。たとえば認知特性で言えば、視覚的な情報が頭に入りやすい子もいれば、耳からの情報が入りやすい子もいますし、体を使って学ぶのが合っている子もいます。また、アウトプットの方法も話すことが得意な子、書くことが得意な子、絵で表現することが得意な子などさまざまです。

「かまくらULTLAプログラム」では、まずそういった“学び方のクセ”をアセスメント(分析や課題の特定)により把握し、それを実践してみる形で探究活動に取り組みます。学校での勉強が合わないと感じている子でも、ここでは目を輝かせて学び、力を発揮するんですよ。

新教科「ULTLA」では、最初に一人ひとりの「学びのポートフォリオ」を作成。

岩田先生:この「かまくらULTLAプログラム」の要素を、由比ガ浜中学校では総合的な学習の時間の位置づけで新教科「ULTLA」として取り入れています。

年間授業時数770時間(通常の中学校は1015時間)のうち、140時間を割り当てています。囲碁、梅シロップ作り、ゲーム作り、スポーツ、動画編集など、各自の好きなことや得意なことに取り組む「MY探究」のほか、テーマに沿って地域特性を活用しながら体験的に学びを深める探究活動も行っています。こちらも活動の大枠は教員が決めますが、生徒の裁量に任せる部分を残しています。

──地域特性の活用とは、具体的にどんな活動をしているのですか?

岩田先生:2025年度は、「EARTH(愛す)プロジェクト」と称して、「海のプログラム」と「森のプログラム」を実施しました。

「海のプログラム」では地元の漁師さんを講師に招き、前日に由比ガ浜海岸で採った海水を煮詰めて、できた塩の粒の大きさなどの違いを考察したり、魚をさばいて料理を作りました。また「森のプログラム」では、近くの峯山にハイキングに行き、竹箸作りにも挑戦しました。

「EARTHプロジェクト」の締めくくりとして食と環境をテーマに開催した「EARTH(愛す)祭」。由比ガ浜海岸で回収した海藻を使って飼育されている「鎌倉海藻ポーク」の発案者を招き、鎌倉海藻ポークについて学んだ後、料理を作った。

不登校生徒に不足しがちな「体験」を埋める人とのつながり

41 件