
【アニメ化で話題沸騰】『とんがり帽子のアトリエ』 才能を「特別なもの」にしない 東京藝大卒の漫画家が語る、子どもの可能性を遮らない“親の作法”
白浜鴎さんインタビュー【第3回】
2026.05.08
全世界で750万部発行、現在アニメ放映中の『とんがり帽子のアトリエ』作者である白浜鴎(しらはまかもめ)さんへの全3回のインタビュー。
最終回となる今回は白浜さんの芸術的なルーツと、東京藝術大学で培われた「才能」への考えかた、そして、子どもたちの個性をどう見守るべきかという、教育にも通じる深い眼差しについて伺います。
【とんがり帽子のアトリエ】
累計発行部数750万部突破、アイズナー賞をはじめ数々の賞を受賞、世界各国で高く評価されているファンタジー作品。魔法への憧れを抱く少女・ココは、魔法使い・キーフリーと出会い、大きな秘密を知る。魔法使いたちが隠した「絶対の秘密」とは──。
「絵を描く」と「字を書く」に境界線はない
──白浜さんは東京藝術大学でデザインを専攻され、圧倒的な描写力で世界を魅了されていますが、ご自身の才能をどう捉えていらっしゃいますか。
白浜鴎さん(以下、白浜):よく絵のことを褒めていただくのですが、私自身は「でもみなさんだって絵を描いていますよね」と思っていて。
例えば漢字なんかは「象形文字」、つまりもともとは絵だったものが進化して字になったもの。文字は「図形を正確に書いて、何が書かれてあるかを視覚的に伝える」という点では、実ほとんど同じカテゴリのものだと思うんです。
もちろん、描写のレベルの差や写実的か抽象的か図形的か…などといった違いはあっても、その本質は変わらない。 私はほとんど「字を書いているつもり」で絵を描いています。
だから、絵が描けない…と思っている子も、毎日字を書いている(=絵を描いている)のに、どうして絵にだけ特別な壁を感じるの? あなたはもう描き始めているかもよ? と。認識を少し変えるだけで、世界の見え方はけっこう変わってきて、憧れていることにも挑戦がしやすくなると思うんです。
──「自分は特別ではない」というフラットな視点は、作品の隅々にまで注がれている、すべての存在への敬意や優しいまなざしにも繫がっている気がします。
白浜:そう受け取っていただけたら嬉しいです。私にもあまり「自分が特別だ」という意識はありません。もともと誰しもが技術を習得する可能性は備わっていて、ただ“興味”や“環境”が違うだけ。そういう視点を伝えるために、よりたくさんの種類の物語が必要なのかなと思っています。
「デザイン」と「マンガ表現」の関係
──高校・大学と一貫して「デザイン」を専攻されていますね。油画などのファインアートではなく、デザインを選んだ理由は?
白浜:これはもう、単純に就職に有利だと思ったからです(笑)。あとは実家がそこまで裕福というわけではなかったこともありますね。
それから私は、映画や漫画といったエンターテインメントが大好きだったので、自己表現を突き詰めるファインアートよりも、より商業的に何かを伝える「デザイン」の方が、自分の好きな世界に近いような気がしたんです。
今にして思えば、ファインアートも必ずしも私が思っていた感じではないな、と思うのですが、当時はなかなかそこまでわからなかったですね。
──その「伝えるための技術」が、マンガの表現にも生きているのでしょうか。
白浜:そう思います。私はスケッチのような「状況説明のための絵」というのが得意な方で。プロダクトデザインを学んでいたこともあって、「いつ、どこで、誰が、何をしているか」が見た相手に100%伝わるような絵を好んで描いてきました。それが、マンガというメディアにはたまたま合っていたのかもしれません。
──上橋菜穂子さん『神の蝶、舞う果て』の装画など、他の作家さんの世界を絵にするお仕事も多いですね。
白浜:上橋先生の作品は、日本のファンタジー好きなら誰もが通る道。『精霊の守人』だったり、『獣の奏者』だったり、『鹿の王』だったり……私も大好きだったので、お話をいただいた時は「えっ、ウソ! 上橋先生ですか!?」と信じられない気持ちでした。
キャラクターデザインではリテイクを重ねて、上橋先生の作品が持つ独創的で力強いイメージに近づけていきました。先生にイメージをいろいろと教えていただいて描いたものをお見せして、また直して……という感じですね。
白浜:私はもともとイラストレーターとしての活動が先だったので、他の方の作品のイメージを膨らませる作業はリフレッシュの時間でもあるんです。なので、スケジュールが許せば、まだまだやってみたいですね。
──逆にというか、ご自身の作品がグッズやアニメになっていくこともありますよね。そこで「こう直してほしい!」ということもありますか。
白浜:違うと思ったときはもちろんNGを出しますが、あがってくるものが素晴らしいので……。あまり大きなこだわりもありませんし、魔法陣などはもともと子どもたちに真似して描いてほしいと思っていたので、いろいろな人に描いてもらえること自体、嬉しいです。アニメはもう、アニメーターさんに苦労をかけてばかりで……(笑)。
上映会で拝見したものも大迫力で素晴らしかったので、たくさんの方に見ていただけたらと思っています。作中のキャラクターであるフデムシのぬいぐるみがあるんですが、それをみなさんが連れてきてくれて、ペンライトのように振ってくださっていたのも嬉しかったです。
大人が子どもにできる一番大事なこと
──子どもの才能を伸ばしたいと願う親たちへ、ご自身の経験からアドバイスをいただけますか。


































