子どもの「脳の発達」と「習い事」の意外な関係 「早く習い事を始めるのがよい」とは言えない理由を専門家が解説
【セミナーレポート】「うちの子、遅れてる?」を専門家が解説! 「0・1・2・3歳児の発達を知ろう」#3
2023.11.16
小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一
発達が遅いようで心配〔質問11〕
母子手帳などに載っている発達の表と照らし合わせて我が子の発達が遅い場合、どのくらいまで様子をみるべきなのでしょうか?
一般的な目安を過ぎて心配なら小児科医に相談を〔回答11〕
今日のお話にも、おすわりや発語、立って歩く、二語文などいろんな発達の項目が出てきましたが、それぞれにできるようになる一般的な目安があります。
育児書などでは○歳○ヵ月〜○歳○ヵ月と幅を持たせて図表で示されていることも多いですね。
100人の子がいるとして、ある項目ができるようになるのが1歳2ヵ月〜1歳8ヵ月とあれば、その真ん中の1歳5ヵ月で50人の子ができるようになっている計算になります。
逆に言えば、まだ50人はできていません。1歳8ヵ月になっても全員ができるようにはなっていない可能性は高いです。それくらい個人差があります。ですから、あくまでも目安として捉えて、おおらかに見守ることが大切です。
先ほど、私が勤務していた病院では発語がないことを3歳になるまでは見守っていたことをご紹介しました。たいていは待っていればいつかできるようになります。
けれど、焦ってしまうのもわかります。
発達の項目によって許容すべき範囲は異なります。そのあたりを判断するのが医師の役目です。一般的に示されている時期が過ぎても変化の兆候が見られないようなら、一度小児科医に相談してみるといいと思います。
おすすめの絵本、育児参考書〔番外編〕
榊原先生のおすすめの本、育児参考書を教えてください
ご自身が面白いと思える絵本を〔回答〕
絵本の大切な役割は、子どもと大人が時間と空間を共有することだと思います。
では、そのためにどのような絵本がいいかというと、私はどんな絵本でもいいと思っています。ただし、世界中にいろんな作家さんがいて、いろんなストーリーと絵のタッチが多種多様にある中で、どうせ選ぶなら親御さん自身が面白いと素直に思える絵本がいいですね。
親が面白いと思えない絵本は一緒に読んでいても苦痛なだけです。親も楽しめるというのが重要なポイントだと思っています。
それから、お子さんからの視点では、たくさんある絵本の中で特にお子さんが興味を示すものがあるはずです。それらを優先的に読んであげるのもいいと思います。
発達について理解を深めるための書籍に関しては、私のほうから特にこの1冊をと強く勧めるものはありません。気になったものを手に取っていただければと思います。
ただし、ひとりの専門家のアドバイスとしては、「○○をすれば○○になる」のような強い主張があるものは、たいていは科学的根拠に乏しいのでおすすめはしません。
たとえば、「○○でIQが伸びる!」といった主張が典型ですが、そもそもIQとは元々遺伝的に備わっているものであり、特別な訓練をすることによって伸びるものではありません。
ついそのようなキャッチーな謳い文句に惹かれてしまうとは思いますが、読んでも害はないですし、それを実践しても害はないとは思いますが、プラスになることもないでしょう。
しいて言えば、長い間読み継がれている定番の育児書、たとえば、文字ばかりなのであまり人気があるとは言えませんが、『スポック博士の育児書』などは内容的にとてもいい本だと思います。
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以上でセミナーレポートはおしまいになります。講談社コクリコCLUB会員の方には、本セミナーの様子をアーカイブ配信しています。榊原先生のお話を聞いてみたい方は、ぜひ動画アーカイブをご覧ください。
榊原 洋一
小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。
小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。