日本でも24万人超が体験! 子どもと親の“真っ暗闇体験”で起きた想定外の「5つの変化」

暗闇体験を経て見える新しい世界とは ~#2「ダイアログ」の子どもへの影響とは?~

ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表:志村 真介

前述した5つの変化について、くわしく説明しますね。

【変化1:街で障害者が視界に入るようになった】

例えば暗闇の中を視覚障害者らとともに歩き回る「ダーク」を体験すると、その日から街の中で視覚障害者によく会うようになります。その日から視覚障害者が突然増えたわけではなく、もともといたのに目に入らなかった存在を、意識するようになったのです。

障害者に興味関心を抱くようになった証(あかし)でもあります。子どものときに障害者に出会い、対話し、自らも障害者のような体験を得たことによって、障害者の状況や気持ちを想像することができるようになります。

これは子ども自身も気づいていないごく小さな変化ですが、遅かれ早かれ「行動」を生みます。

写真は東京・竹芝の「ダイアログ・ダイバーシティミュージアム『対話の森』」会場までの公道。アテンドの視覚障害者が毎日通勤で使うこの近辺では、点字ブロックが増えたり、音付き信号機、そして地域のダイバーシティ化が進んできた。  写真提供:ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン

【変化2:シルバーシートに座っていた子どもが席を譲るようになった】

ある日、「ダーク」を子どもと一緒に体験した母親から、こんな連絡をいただきました。

「体験後、息子に『どうだった?』と聞いても特に反応がなかった。ところが、その日の帰りの電車で、いつものようにシルバーシートに座っていた息子が、目の前のお年寄りに自ら『ここはシルバーシートですよ。どうぞ』と声をかけたんです」

それまでそのお子さんは、堂々とシルバーシートに座り、周りを見ずひたすらゲームをしていたそうです。母親が、お年寄りに席を譲るように声をかけても、反抗してわざと席を立たなかった。そんな息子が、自ら声をかけて席を譲った──。

親は、会話で体験後の変化を感じることができなかった。ですが、子どもの中では確実に変化が起きていて、さらに行動が生まれたんですね。

【変化3:子どもの知らない一面を見ることができた】

比較的密接した親子に多い体験談です。親は、自分がいないとわが子は何もできないと思い込んでいる。ところが、初対面の人とチームを組んで暗闇に入ると、頼りないと思っていた子どもが、いきなり堂々とリーダーシップを取る場面を目にする。本来の子どもの力があらわになる瞬間です。私はこうした場面をたくさん見てきました。

子ども同士で入ったら、普段はジャイアンのような男の子が暗闇の中では震え、逆に弱いと思っていた女の子がリーダーシップをとったこともあります。これは固定化していた関係が変わっていくきっかけになります。

【変化4:子どもへの向き合い方が変わった】

関係性の変化は、親子関係にも起こります。頼りないと思っていた子どもが、実はリーダーシップを発揮できていた。そんなシーンを目の当たりにすると、親は驚き、子どもを見直し、態度を変えるようになります。

子どもがリーダーシップをとる場面が家庭内で増えていけば、親は「子どもにまかせてみよう」と思えるようになり、子どもは自信がついてどんどん成長していくでしょう。

実は親子で立場が変わる機会は日常で多々あるはずです。ただし、関係性が固定したままだと、なかなか変えられない。だからこそ、こうした体験で子どもの意外な一面を見て、関係性が変わるきっかけをつかんでほしいと思います。

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