900万人が驚いた“たいせつな疑似体験” 日本の子が「視覚障害者・聴覚障害者・高齢者」を知る意味とは

暗闇体験を経て見える新しい世界とは #1~「ソーシャルエンターテイメント」とは?~

ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表:志村 真介

障害者と健常者が助け合い「お互いさま」を実感

ソーシャルエンターテイメントの価値は他にもあります。障害者と健常者が対等な関係性を築いていけることです。

私も含め健常者は、障害者に対し「助ける」という概念を少なからず持ってきた人が多いでしょう。例えば、近くにいる人が耳が聞こえない、もしくは目が見えないと、その人たちが動きやすいようにサポートしようという合理的配慮がこれまであったと思います。

ところが、「ダーク」では、私が体験したように健常者が視覚障害者に「助けられ」ます。暗闇の中では「助ける」「助けられる」の立場が逆転する。

そして、「見えなくても見えても一緒に遊ぼうよ」という対等性を保ちながら、ともに楽しみお互いの尊厳を認めていく。こうしたシチュエーションは日本ではまだなかなかないのではないでしょうか。

同じ時間を対等に過ごして、障害者も参加者も、できることもあればできないこともあることに気づく。そして、お互いさまの関係性ができる。これは、日常生活では得難い体験です。

今夏開催している「ダーク」の夏祭りイベントでは、視覚障害者の引率のもと、参加者8人がチームになり、屋台や花火、盆踊りなどの夏祭りを楽しみます。

みんながニックネームで呼び合って、暗闇の中で童心に帰って輪投げをしたりヨーヨー釣りをしたりする。屋台で買った懐かしい駄菓子の味に歓喜する。その体験だけでもすごく楽しいんですね。楽しい経験を先に味わうと、隣で会話を交わす相手に自然と関心を持つようになり、関係性が少しずつ良くなっていきます。

そうやって、「勉強して相手のことを学ぶ」のではなく「ともに楽しむ体験を経て、自然と相手のことが気になる」という形で、障害者に思いを馳せるようになる。その先に、お互いの文化を尊重し多様性のある未来が立ち現れてくると思っています。

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「サイレンス」と「タイム」は不定期イベントですが、「ダーク」は東京では2ヵ所で常時開催しています。東京竹芝では夏期限定プログラム『夏祭り』を、また神宮外苑の「内なる美、ととのう暗闇。」では『涼をたのしむ』を開催中です。

『夏祭り』は小学生以上から参加できるので、夏休み中、親子でお出かけするのにもぴったり。自由研究の題材にもなりそうです。完全予約制で、チケットはHPから購入できます。

実際、体験した子どもたちはどんな気づきを得ているのでしょうか。次回は子どものソーシャルエンターテイメント体験について伺います。

取材・文/桜田 容子

●対話の森HP チケット「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」夏期限定プログラム『夏祭り』【~2023年8月27日(日)まで開催】
https://taiwanomori.dialogue.or.jp/did-ticket/

●ダイアログ・イン・ザ・ダーク「内なる美、ととのう暗闇。」
 夏期限定プログラム『涼をつくる夏』(開催期間はHPを参照)
https://did.dialogue.or.jp/totonou/

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しむら しんすけ

志村 真介

Shinsuke Shimura
ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表

ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表。1962年生まれ。関西学院大学商学部卒。コンサルティングファームフェローを経て1999年からダイアログ・イン・ザ・ダークを主宰。1993年『日本経済新聞』の記事で「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」と出合う。感銘を受け発案者ハイネッケに手紙を書き日本開催の承諾を得る。日本初開催後10年間短期イベントとして開催。視覚障害者の新しい雇用創出と、誰もが対等に対話できるソーシャルプラットフォームを提供している。2020年東京竹芝にダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」をOPEN。現在に至る。 著書に『暗闇から世界が変わる ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの挑戦』(講談社現代新書)など。 東京・竹芝にある「ダイアログ・ダイバーシティミュージアム『対話の森』」では、2023年9月10日までは、同ミュージアムにて、さまざまなマイノリティと楽しみながらゲームをする「リアル対話ゲームⅡ 囚われのキミは、」を開催。 ●ダイアログ・ダイバーシティミュージアム『対話の森』

ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表。1962年生まれ。関西学院大学商学部卒。コンサルティングファームフェローを経て1999年からダイアログ・イン・ザ・ダークを主宰。1993年『日本経済新聞』の記事で「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」と出合う。感銘を受け発案者ハイネッケに手紙を書き日本開催の承諾を得る。日本初開催後10年間短期イベントとして開催。視覚障害者の新しい雇用創出と、誰もが対等に対話できるソーシャルプラットフォームを提供している。2020年東京竹芝にダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」をOPEN。現在に至る。 著書に『暗闇から世界が変わる ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの挑戦』(講談社現代新書)など。 東京・竹芝にある「ダイアログ・ダイバーシティミュージアム『対話の森』」では、2023年9月10日までは、同ミュージアムにて、さまざまなマイノリティと楽しみながらゲームをする「リアル対話ゲームⅡ 囚われのキミは、」を開催。 ●ダイアログ・ダイバーシティミュージアム『対話の森』

さくらだ ようこ

桜田 容子

ライター

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。