子どもに急増中「マイコプラズマ肺炎」に抗生物質がきかない? 過去最多の感染拡大 親が知っておくべきことは何?〔医師が解説〕

子どもの「マイコプラズマ肺炎」2024秋冬~“マクロライド耐性”マイコプラズマ肺炎とは~

小児科専門医・アレルギー専門医:岡本 光宏

──国立感染症研究所のデータでは、マイコプラズマ肺炎(以下:マイコプラズマ)の患者数が過去最多を記録しています(2024年10月現在)。現場ではいつごろから増えてきたと感じますか。検査キットが不足しているという情報もありますが、現場ではどうですか。

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現在も患者数は上昇中です。2024年の発生数は2016年の流行期を超える勢いです。当クリニックでも、2024年5月ごろからマイコプラズマ患者が増え始め、7月ごろから「かなり多い」と実感するようになりました。8月にはクリニックでも検査キットがなくなりました。

検査が必要な症例だけを選んで検査するようにしたことで、検査キットの不足はある程度解消しつつあります。しかし、感染者数が高止まりしている現状ですから、今後も予断を許さない状況です。

──検査が必要な症例とは?

中には「咳が出たからマイコプラズマかどうか調べてください」と要望する親御さんもいますが、本来はそうやって使用するものではありません。なかなか熱が下がらないから風邪じゃないかも? と疑った場合、検査キットの出番となります。

ただ、この検査キットは感度が低いです。インフルエンザの検査のように発熱後24時間経てばほぼ正しい結果が出る、というものではありません。つまり、間違った検査結果が出ることもある、ということを前提としていただきたいです。

場合によっては検査しなくても、陰性が出たとしても、症状や状況によって“みなし陽性”とし、「マイコプラズマ肺炎」と診断することもあります。

──どのような症状が出るのでしょうか。

赤ちゃんやお年寄りはあまり感染しない病気です。感染していたとしても重症化しづらい。菌自体はそれほど悪さをしない非常に弱毒の菌です。

菌自体が暴れるというより、免疫反応が悪さをするタイプなので、免疫が弱い人にはあまり悪さをしません。だから免疫機能がしっかりしている年齢、つまり6歳以上から若者世代に強い免疫反応が出がちです。飛まつや接触で感染します。

一番の特徴はだらだら続く熱と咳、倦怠感です。風邪によく似た症状から始まります。熱は高熱になることもあり、通常は5日間程度で下がりますが、免疫機能が極端に暴れた場合は2週間程度続くこともあります。夜間に熱が上がりやすいです。

──受診のタイミングを教えてください。

いきなり熱が出たからといって、すぐに小児科にかかる必要はありません。風邪なら2~3日で熱が下がります。3~4日目になっても熱が下がらない場合は、「風邪じゃないかも?」と疑って受診したほうがよいでしょう。

睡眠をさまたげるほどの強い咳が出る場合も受診のタイミングです。乾いた咳から始まり、だんだん痰(タン)が絡んできます。熱は下がってもしつこい咳が2~3週間続くことも特徴の一つです。喉の痛みや鼻水の症状を訴える人はそれほど多くありません。

症状の程度は人によって軽いものから重いものまでさまざまで、自然治癒する人、無症状の人もいます。必ず肺炎になるわけではありません。

──受診時に医師に伝えるとよいことはありますか。

受診の際、ぜひ周囲の流行状況を医師に伝えてください。インフルエンザ、コロナとの鑑別に、周囲の流行情報は大いに役立ちます。潜伏期間は約2週間ですので、ここ数日だけの接触歴ではなく、2~3週間前から思い出してください。

インフルエンザやコロナは潜伏期間が約2日間と短いので、周囲の状況は分かりやすいですが、マイコプラズマは知らず知らずのうちに感染していることが多いです。「軽い風邪だと思っていた」「肺炎と知らずに出歩いていた」ということも多いので“歩く肺炎”とも呼ばれています。

──マイコプラズマ肺炎には、どのような治療がなされるのですか。

通常の風邪はウイルスに感染するので抗菌薬(=抗生物質)は効きませんが、マイコプラズマは「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染する呼吸器の感染症なので、抗菌薬が有効です。

子どもに使える抗菌薬はいくつか種類がありますが、まずはジスロマックやクラリスといった「マクロライド系抗菌薬」(以下マクロライド系)を選択するのが一般的です。

ですが、今の流行には「マクロライド系」が効かない「マクロライド耐性」のマイコプラズマも含まれています。マクロライド耐性かどうかを疑うポイントは「マクロライド投与後およそ48時間で解熱しない場合」です。

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