子どもに急増中「マイコプラズマ肺炎」に抗生物質がきかない? 過去最多の感染拡大 親が知っておくべきことは何?〔医師が解説〕
子どもの「マイコプラズマ肺炎」2024秋冬~“マクロライド耐性”マイコプラズマ肺炎とは~
2024.10.28
小児科専門医・アレルギー専門医:岡本 光宏
──最近、その「マクロライド耐性」という言葉をよく聞くようになりました。子どもがよく処方されるジスロマックやクラリスといったマクロライド系抗菌薬が効かないケースもあるということでしょうか。
現在、日本のマイコプラズマのマクロライド系耐性率は約50%です。こう聞くと「マクロライド系以外の抗菌薬を処方してほしい」と思うかもしれません。しかし、こうした状況をふまえても、マイコプラズマの第一選択薬はマクロライド系です。
マクロライド系投与から48時間経過しても解熱しない場合に、マクロライド耐性菌を考えて別の抗菌薬に変更します。この順序を守ることが大切です。ですから、ジスロマックなどのマクロライド系を飲み始めて2~3日で熱が下がらなければ、再度受診するとよいでしょう。
なぜこの順序が大事かというと、マクロライド耐性マイコプラズマを過度に恐れ、マクロライド以外の抗菌薬(たとえばニューキノロン系など)を過度に使えば、耐性菌の問題が悪化する危険性があるからです。
耐性菌とは、抗菌薬への抵抗力が高くなって薬への耐性を持つ細菌のことです。抗菌薬をみだりに使い続けることで起こります。マクロライド以外の抗菌薬を最初から使うことは、抗菌薬の不適切な使用であり、抗菌薬の乱用といえます。抗菌薬の乱用は、耐性菌の増加につながります。
【1】通常の風邪に抗菌薬は無効であること
【2】抗菌薬は「ここぞ」というときに使うからこそ効果が発揮されること
【3】抗菌薬を乱用すると将来抗菌薬が効かない世界になってしまうこと
この3点を保護者がしっかり理解しておくことが大事です。抗菌薬は「とっておきの薬」と考えてください。
「マイコプラズマ肺炎が心配だからとりあえず抗菌薬を処方してほしい」と考えるのではなく、マイコプラズマ肺炎の可能性はどれほどなのか、抗菌薬が必要なのかを医師とよく相談して決めましょう。
また、抗菌薬の種類についても「マクロライド耐性マイコプラズマが怖いのでマクロライド系以外の薬を処方してほしい」と考えるのではなく、ガイドラインにしたがった正しい順番で抗菌薬の種類を決めましょう。
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次回は、マイコプラズマ感染症で高熱が出たときの対処法、解熱剤のタイミングなどについて、引き続き岡本先生に解説していただきます。
取材・文/大楽眞衣子
大楽 眞衣子
社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」
社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」
岡本 光宏
おかもと小児科・アレルギー科院長。日本小児科学会小児科専門医、認定小児科指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床研修指導医、日本周産期・新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命処置法インストラクター。 2009年奈良県立医科大学部卒業。同年神戸大学大学院医学研究科小児科学分野に入局。姫路赤十字病院、明石医療センターを経て、2019年より兵庫県立丹波医療センター 小児科医長。 2023年7月、兵庫県三田市で「おかもと小児科・アレルギー科」を開院。新生児から思春期の心の疾患まで幅広く診察している。3児の父として、子育てにも積極的に関わる。 著書に『研修医24人が選ぶ小児科ベストクエスチョン』(中外医学社)、『小児科ファーストタッチ』(じほう)など。 サイト「笑顔が好き」 https://pediatrics.bz/
おかもと小児科・アレルギー科院長。日本小児科学会小児科専門医、認定小児科指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床研修指導医、日本周産期・新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命処置法インストラクター。 2009年奈良県立医科大学部卒業。同年神戸大学大学院医学研究科小児科学分野に入局。姫路赤十字病院、明石医療センターを経て、2019年より兵庫県立丹波医療センター 小児科医長。 2023年7月、兵庫県三田市で「おかもと小児科・アレルギー科」を開院。新生児から思春期の心の疾患まで幅広く診察している。3児の父として、子育てにも積極的に関わる。 著書に『研修医24人が選ぶ小児科ベストクエスチョン』(中外医学社)、『小児科ファーストタッチ』(じほう)など。 サイト「笑顔が好き」 https://pediatrics.bz/