【起立性調節障害:OD】子どもが「朝起きられない」 原因は怠けや夜更かしではない?

#1 中学生の約1割にみられる「起立性調節障害」とは

写真:アフロ

朝起きられず学校には行かないのに、夜は元気な様子でなかなか寝ない子ども。親は「やる気がない」「怠けている」「サボっている」など、つい小言を言いたくなったり、「なんで学校に行きたくないの?」と、問い詰めたくなったりします。

しかし、本当は、起立性調節障害(OD)という体の病気がまねく症状かもしれません。

毎日のように症状が表れる場合は要注意! 起立性調節障害をはじめ、小児期から青年期の子どもの診察や保護者の相談にあたっている、昭和大学病院小児科教授・田中大介先生にお話をうかがいました。


全3回の1回目

起立性調節障害って、どんな病気?

──起立性調節障害(OD)とは、どんな病気なのでしょうか?

田中先生:ODは、体の機能を調節する自律神経がうまく働かないために、その名のとおり「起立」したときにさまざまな不快な症状が表れやすくなる病気です。「起立」同様、頭と足に落差ができる「座位」でも生じることがあります。

ひとつひとつの症状は、寝不足や疲れ、軽い体調不良があるときなどによくみられるものですが、ODの場合、毎日のように症状が表れることが多く、長期にわたることも少なくありません。

自律神経の働きに問題があるかどうかは、一見しただけではわかりません。だからこそ、子どもの様子をよくみていきましょう。気がかりな症状が長引くようなら、「もしかしたらODかも?」という視点をもってかかわっていくことが大切です。

ODでよく見られる症状をチェック!

起立性調節障害(OD)は、小学校高学年から高校生くらいの年代の子どもに発症しやすいことが知られています。子どもの様子をふり返り、当てはまる項目をチェックしてみましょう。3つ以上当てはまれば要注意です。長引くようなら小児科や専門医などを受診し、原因を確かめておきましょう。

□立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
□立っていると気持ちが悪くなる。ひどくなると倒れる
□入浴時、あるいはいやなことを見聞きすると気持ちが悪くなる
□少し動くと動悸、あるいは息切れがする
□朝なかなか起きられず、午前中調子が悪い
□食欲不振
□顔色が青白い
□臍疝痛(おへそのまわりの差し込むような痛み)をときどき訴える
□倦怠(だるい)あるいは疲れやすい
□乗りものに酔いやすい
□頭痛

(日本小児心身医学会編『小児心身医学会ガイドライン集 改訂第2版』による)

思春期に多いのは、どうして?

──ODは思春期に多いということですが、どうしてなのでしょうか。

田中先生:ODは、自律神経の調節不全がまねく「体の病気」であり、小学校高学年以降の子どもに多くみられる病気でもあります。思春期にみられる急激な身体的変化に自律神経の発達が追いつかないことが、調節不全に陥る有力な原因のひとつと考えられています。

自律神経の調節不全が解消されるまでにどれくらい時間がかかるかは個人差があります。しかし、身体的な成長が一段落すれば、その状態に適した調節もしやすくなります。実際、大半の子どもは、高校を卒業するころまでには症状が出にくくなります。

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