夏の子どもの肌 オムツかぶれ・虫刺されなどから守る方法を専門医が解説
皮膚科医・野崎誠先生に聞く「夏の肌トラブル対処法」 #3 じんましん・オムツかぶれ・あせも・虫刺され
2023.07.18
皮膚科医:野崎 誠
夏場に起こりやすい子どもの肌トラブル。オムツかぶれやあせもは特に多く、また、じんましんは夏風邪や夏休みの疲れから出てくることも。
『わかばひふ科クリニック』院長・野崎誠先生に聞く、子どもの皮膚トラブル。3回目は、「じんましん」、「オムツかぶれ」、「あせも」、「虫刺され」の4つのトラブルについて、主な症状と対処法を解説していただきました。
(全3回の3回目)
野崎誠(のざき・まこと)
山形大学医学部卒業、国立成育医療研究センター皮膚科(小児皮膚科)などを経て2013年、「小児皮膚科」「一般皮膚科」を専門とする『わかば皮膚科クリニック』を開院。
一般向け、教育機関向け講演活動などにも力を入れており、乳幼児から思春期・成人の皮膚の病気に関する正しい情報の啓発活動に努めている。
「あせも」は室内の温度・室温のコントロールも重要に
あせもは大量の汗をかくことによって、汗の出口がふさがって炎症を起こすことで起こります。
【症状】
赤いポツポツが急速に現れて、かゆみや炎症を伴います。汗をかきやすい場所や蒸れやすい場所によく起こります。
【治療】
あせもができてしまった場合は、ステロイドの外用剤などの塗り薬を使って治療します。あせもを掻きむしってしまうことで、とびひや湿疹などにつながります。子どもがかゆがっていたら早めに皮膚科や小児科を受診して、適切な治療を受けましょう。
また、塗り薬などによる治療とあわせて、皮膚を清潔に保つことも大切です。あせもは高温多湿の夏場に多いトラブルなので、衣服の工夫やエアコンなどによって、温度・湿度をコントロールすることが予防につながります。
「オムツかぶれ」排泄物の刺激に加え、カンジダなども原因に
オムツかぶれは、オムツをつけている部分に起こる皮膚の炎症です。原因はいくつかあり、うんち・おしっこによるかぶれ、あせも、そしてカンジダというカビによるかぶれなどです。どれもオムツの中に起きますから、「オムツかぶれ」とまとめて呼ばれますが、実は全て違うものです。
●あせもによるオムツかぶれ
あせもによるオムツかぶれは、オムツの腰やお腹のバンド部分に汗をかくことで、蒸れたりこすれたりしてあせもができることで起こります。
私が患者さんを診ている限りでは、2歳を過ぎてくるとオムツによるかぶれが増えてくる印象です。そのような場合は、そろそろオムツを外す準備を始めたほうがいいかもしれません。
●おしっこやうんちによるオムツかぶれ
男の子の陰部の周りや、女の子の陰唇(膣と尿道の周辺)部分、あるいは肛門周りが赤くなったりかぶれたりするのは、おしっこやうんちによるかぶれです。
特に、月齢が小さい場合は、こまめにオムツを取り替えていても、赤ちゃんが成長をした1歳以降、ママもパパも油断して、オムツ替えの回数が減ることがあります。そのようなときにおしっこやうんちがついたままの状態になって、かぶれが生じることがあるのです。
●カンジダによるオムツかぶれ
オムツかぶれだと思っていたら、実はカンジダというカビによる炎症だったということもあります。カンジダはもともと口の中などにある常在菌で、普段は病気を引き起こすことはありません。しかし、免疫力や体の抵抗力が弱っているときなどに、繁殖して炎症を起こすことがあります。
オムツの中は湿っていて温かく、菌が繁殖しやすい環境が整っています。オムツかぶれのケアを続けてもなかなか治らないときは、カンジダの可能性もあるため早めに医師に相談しましょう。
【治療法】
原因にかかわらず、きれいに洗い流して清潔を保つことが大切です。特にうんちをした後など、拭き取るだけではまだうんちがお尻に残っていることがよくあります。できればシャワーなどを使って、水で洗い流してあげるといいでしょう。
かぶれによる湿疹に対しては、塗り薬などを使って治療しますが、薬を使いたくない場合などは、皮膚の保護剤を使うことも。ベタッとした保護剤で皮膚に膜を張ることで、うんちなどがつきにくくなります。
子どもの「虫刺され」は反応が強く、症状が長引くことも
蚊やアブ、ダニ、ブヨなどの虫に刺されることで起こる虫刺されは、非常に身近な皮膚トラブルのひとつです。搔きむしってしまうと、とびひなどになることがあるため、注意が必要です。
【症状】
虫に刺された部分にかゆみと赤い盛り上がりのある発疹が起こります。虫の種類によっては、かゆみだけではなく痛みを伴うこともあります。
虫刺され対策としては、虫除けをしっかり使うことや肌を必要以上に露出しないことが大切です。虫除けの薬としては、「ディート」や「イカリジン」と呼ばれる成分などが有効。ドラッグストアで売られている市販の虫除け剤にも、これらの成分が含まれたものがありますから試してみるといいでしょう。
野外活動やアウトドアでは、長袖長ズボンで肌を覆うようにしましょう。メッシュ地など、目が粗い素材の場合、衣服の上からでも刺されてしまうことがありますから、できるだけ目の細かい服やアウトドア用の服を選ぶのがおすすめです。
なお、蚊などは汗の臭いに引き寄せられてやってくるため、出かけにシャワーを浴びてさっぱりすると虫除け対策になります。
【治療】
虫刺されは日常的によく起こることですが、特に就学前の子どもなどは、虫刺されが長引く傾向があるため、注意が必要です。大人ならば数日で治ってしまうような虫刺されであっても、子どもは反応が強くて長いため、1週間以上も治らないようなことがあります。
たかが虫刺されと軽く見ないで、症状が強かったり、長引いていたりしたら、皮膚科や小児科に相談しましょう。もちろん市販の薬でもかゆみを止める効果はありますが、皮膚科では炎症そのものを抑える薬を出すことができます。そのような薬を上手に使ってかゆみを感じる期間を減らすことが、とびひなど二次的な症状を抑えることにつながります。
「じんましん」は疲れや夏風邪など、アレルギー以外で起こることも
じんましんは、皮膚の表面が赤く盛り上がり、時間とともに跡形もなく消えてしまう皮膚の病気のひとつです。アレルギー反応として起こると思われがちですが、アレルギー以外のさまざまな原因によっても起こります。
アレルギーは、体が発する「危険信号(アラート)」だと理解するとわかりやすいでしょう。どこか調子が悪いときに、体が不調を伝えるために出てくることが多いからです。特に子どもに関しては、風邪、疲れ、食べ物などが原因で起こることがよくあります。
【症状】
皮膚の表面がくっきりと盛り上がり、時間が経つときれいに消えてしまいます。じんましんは、体の中にウイルスなどの異物が侵入し、その異物を体の外に排出しようという働きに伴って起こることがあります。そのため、胃腸炎や風邪、中耳炎などさまざまな病気と同時に起こるのです。
病気だけではなく、疲労から来るじんましんもあります。夏休みに旅行や普段とは違う活動をした後に、疲れからじんましんが出る子ども少なくありません。
【治療】
じんましんの治療では、抗ヒスタミン薬などを中心とした薬物療法を行います。また、疲れから来るじんましんの場合は、しっかり休むことが治療につながります。
よくじんましんが出るという人は、日記をつけておくこともお勧めです。どのようなときにじんましんが出るのか日記につけることで、自分のパターンがつかみやすくなりますし、病院を受診するときも医師に正確な情報を伝えることができます。
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3回にわたって野崎先生に子どもの皮膚トラブルについて解説していただきました。
いずれのトラブルも、搔きむしるととびひに発展することがあるので注意が必要です。心配なときは早めに小児科や皮膚科を受診し、二次的な症状を抑えるように親御さんはケアしてあげましょう。
取材・文/横井かずえ
撮影/土居麻紀子(野崎先生)
横井 かずえ
医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL: https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2
医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL: https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2
野崎 誠
山形大学医学部卒業、国立成育医療研究センター皮膚科(小児皮膚科)などを経て2013年、「小児皮膚科」・「一般皮膚科」を専門とする『わかば皮膚科クリニック』を開院。 一般向け、教育機関向け講演活動などにも力を入れており、乳幼児から思春期・成人の皮膚の病気に関する正しい情報の啓発活動に努めている。 わかば皮膚科クリニック http://www.wakaba-hifuka.com/
山形大学医学部卒業、国立成育医療研究センター皮膚科(小児皮膚科)などを経て2013年、「小児皮膚科」・「一般皮膚科」を専門とする『わかば皮膚科クリニック』を開院。 一般向け、教育機関向け講演活動などにも力を入れており、乳幼児から思春期・成人の皮膚の病気に関する正しい情報の啓発活動に努めている。 わかば皮膚科クリニック http://www.wakaba-hifuka.com/