指しゃぶりが終わる3歳ごろから始まることが多い、子どもの爪嚙み。親としては、わが子が爪を嚙んでいると、「原因は心理的なもの?」、「衛生状態が気になる」と、心配になるものです。
「よく、爪嚙みは親の愛情不足と言われることがありますが、それはまったくの的外れです」とは「ふらいと先生」の名でTwitterのフォロワー13万人の、新生児医・小児科医の今西洋介先生。
そこで今西先生に、子どもの爪嚙みについて解説していただきました。
1回目は「子どもはなぜ爪を嚙むのか?」についてです。
(全3回の1回目)
新生児医・小児科医
今西洋介(いまにし・ようすけ)
新生児科医・小児科医、小児医療ジャーナリスト。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師を努めた。
SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会問題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。
Twitter(@doctor_nw)のフォロワー数は13.2万人。
「爪嚙み」=「愛情不足」は間違い
──爪嚙みは衛生的にも心配ですし、周りの目も気になったりして、親としてはできればやめさせたいと思うもの。でも、なかなかすんなりやめられないものです。
まずは、どうしたらやめられるのかという前に、子どもは、なぜ爪を嚙むのでしょうか?
今西洋介先生(以下、今西先生):爪嚙みは、医学的には「神経性習癖」と呼ばれています。神経性習癖は、指吸いや耳を触る、大人なら貧乏ゆすりなど、いろいろな行動として出ることがあります。
神経性習癖は、子どもが緊張や退屈を感じたり、イライラするなどの心理的要因を抱えていると出やすいと考えられています。
自分の子どもが爪嚙みをしていると、親御さんは「愛情が足りてないのでは?」と心配に思うかもしれませんが、医学的に「愛情不足」という指摘は的外れなんですよ。
──緊張やストレスを解消して、心のバランスをとるために、無意識に出てくる行為ということでしょうか。
今西先生:そうですね。爪嚙みの頻発年齢は指吸いが終わった3~5歳と言われていますが、神経性習癖は社会性の未熟さから出る行為と考えられています。
子どもは大人に比べると社会経験が少ないですよね。例えば、「学校で友達に嫌われた」とか、「悪口を言われた」とかのときに、大人ならほっとけばいいと思えるけど、子どもは上手に受け流すことができずに、ストレスを感じてしまうことも。
子どもゆえの未熟さが、心理的な負荷となって、さまざまな行動に表れるという背景があります。
同じ年齢でも、社会性をどれくらい備えているかは子どもによって違うので、そういった習癖が出る子と出ない子がいるのは事実ですが、未熟さが背景にあるということは、成長すれば治るケースがほとんどということです。親御さんが過度に心配しすぎることはありません。
──未熟な存在だから、小さな環境の変化にも敏感に反応してしまうということですね。新学期や、入園や入学するなど、生活環境が変わるときに特に出やすくなるのでしょうか。
今西先生:そうですね。生活習慣が変わったり乱れたり、あとはお昼寝をしなくなったりしたときにも出やすいですね。そういうときは、爪嚙みを無理やりやめさせるのではなく、睡眠時間を増やすなどして、親が対処してあげることが必要だと思います。