子育てしながら「国家試験に合格」のシングルマザー 得たもの&失ったもの

第4回アラフォーADHD&シングルマザーの「リスキリング」~試験本番と合格発表~

それでも、私は国家試験を受けてよかったと思う。養成校の講師や同志の受験生、実習先の職員たちとの出会いは、大きな財産になった。一緒に合格を目指した受験仲間との交流は、今も続いている。彼らの優しく、あたたかい言葉に触れると、心がほんわかする。

どん底に落ちていた自己肯定感が上向きに

また、日常生活でも、学んだ用語がたくさん目に入るようになった。取材先の支援現場で聞いた話も、勉強した内容と結びつく。道を歩いていると、それまでは視界に入らなかった福祉施設が、家の近所や出先にたくさん存在していることに気づいた。

リスキリングに取り組む前は多忙で、映画などのエンタメを楽しむ余裕はなく、仕事の資料や子育て関連の書籍、新聞記事を読むのがやっと。それが、受験を機に仕事が減って時間ができたことで、福祉や障害に関する映画やドラマ、書籍にも手を伸ばせるようになった。

興味の範囲が広がっただけでなく、社福(社会福祉士)の知識があることで理解が深まり、見方が変わってきたことを実感した。

受験前に比べて見える景色は確実に広がり、心は豊かになった。

そして、自信もついた。それまでは、「役立たずのポンコツ」だと自分自身に烙印を押し、発達障害のADHDがあることも含めて自分の存在そのものを恥ずかしく思っていた。

でも、合格できたことで、決して優秀ではないけれど、少しばかりの学習能力はあるのかもしれないと思え、安堵した。何より、ほかの受験生の多くも、オープンチャットで「覚えた先からどんどん忘れていく」ことや、勉強から日常までのありとあらゆるミスについてつぶやいてくれたため、「忘れる」「ミスする」のは私だけではないと勇気づけられた。受験前はどん底まで落ちていた自己肯定感が、数センチくらい上がった。

勢いがつき、来年(2026年)はさらに別の福祉関連の国家試験を受けようと、動き出している。無謀と思われた大きな山を乗り越えたことで、次の試験はハイキングレベルの低山にも感じられる。

ただ、その次に待ち受けるのが、反抗期真っ只中の息子の中学受験だ。真冬の雪山のごとく過酷な登山になる気がするが、最後まで伴走できるだろうか。学んできたことを、子育てにも生かせるだろうか。戦いは続く。


【プロフィール】
藤川ユキ
フリーライター。出版社勤務を経てフリーに。結婚・出産・離婚を経て、2025年7月現在、小5(10歳)の息子と2人暮らしをするアラフォーのシングルマザー。2023年4月に社会福祉士養成課程のある通信制養成校に入り、2024年9月に卒業。現在はライター業を続けている。

連載は全4回 

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