
首都圏都市部にもクマは出る!? 子どもたちへクマ先生が教える「アーバンベア」が現れた真の理由[専門家が警告]
#3 夏の子連れレジャーの“クマ”対策「環境教育編」岩手大学農学部 山内貴義准教授インタビュー (3/3) 1ページ目に戻る
2026.08.04
岩手大学農学部准教授:山内 貴義
「そうは言っても、都会には関係のない話」と思うかもしれません。しかし、将来的に東京の立川市や府中市といった、これまで出没してこなかった首都圏の都市部にまでクマが進出してくるという説は、専門家の目から見ても決して否定できない現実味があるといいます。
「青梅や高尾山周辺にはクマが生息しています。八王子も、山を切り開いて宅地開発された街ですから、地形的にはクマが出没しても全くおかしくない場所なのです。
一帯を流れる多摩川の河川敷は樹林化が進んでいます。クマは河川敷や森づたいに移動するため、一晩で数十km移動することも決して珍しくありません。
GPSでクマの位置を調査すると、被害報告がまったくないエリアでも、夜間のうちに人里近くの河川沿いなどを普通に行き来しているんですよね。気づいていないだけで、彼らは常に私たちの背後にいると考えていいでしょう」(山内准教授)
「ある意味、クマの行動はまったく異常ではない、ということですよね」という問いかけに、山内准教授はうなずきます。
「『アーバンベア』と聞くと、まるで新種の恐ろしいクマが現れたように思われますが、クマ自体は変わっていません。アメリカの研究者の間では『野生動物の問題は、いかに人間をコントロールするかという問題だ』とよく言われます。
人里に依存するクマをつくったのは、人間が原因であることも多いのです。クマだけを悪者にしていては、本当の原因は見えてこないでしょう」(山内准教授)
クマを正しく知ってもらうために
山内准教授は、岩手県内の小学校で、ツキノワグマ防除対策の出前授業を続けています。クマの生態や身を守る方法を伝えるだけでなく、毛皮や頭骨、ツメの標本に実際に触れてもらい、クマを身近に感じる機会も設けています。
「子どもたちは『思ったより毛が厚い』『ツメが鋭い』と驚きます。ただ怖がらせるのではなく、クマを正しく知ることで、『出会わないためにはどうしたらいいか』を自分で考えられるようになるんです」(山内准教授)
山で暮らすクマの本来の姿は、大人にもあまり知られていません。山内准教授が講演会などで山のクマの映像を見せると、「動物園のクマですよね?」という反応が返ってくることもあると言います。
「思った以上に、『人を襲う恐ろしい動物』という印象を持つ人が多いですね。しかし、ほとんどのクマは山の中で木の実を食べたりして平和に暮らしています」(山内准教授)
クマは人身被害をもたらすこともありますが、木の実の種子を運び、豊かな森を育む役割も担う、森の生態系に欠かせない存在でもあります。
「クマの問題は、クマだけの問題ではありません。人口減少や高齢化による耕作放棄地の増加、里山の荒廃、農業や林業の担い手不足など、人間社会の変化が背景にあります。
クマはその変化に適応しているだけで、むしろ人間の側が対応できていない。だからこそ、野生動物対策だけではなく、農業や林業、まちづくりも含めた『日本全体の課題』として考えていかなければ、根本的な解決にはならないと思います」(山内准教授)
「クマが悪い」で終わらせるのではなく、「なぜそうなったのか」を考えること。その視点は、子どもたちが自然や野生動物とのこれからの付き合い方を、学ぶきっかけにもなるはずです。
取材・文/稲葉美映子
※3回目/全3回
1回目「準備編」を読む
2回目「サバイバル編」を読む
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稲葉 美映子
フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。
フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。



































山内 貴義
岩手大学農学部 地域環境科学科准教授(野生動物管理学研究室)。農学博士。 クマをはじめ大型野生哺乳類の生態や、人と野生動物が共存するための科学的根拠に基づく保護・管理手法を研究。 明治大学農学部卒業後、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。岩手県環境保健研究センター主任研究員を経て現職。自治体や教育機関などで、クマとの共存や野生動物対策に関する講演・普及啓発活動にも積極的に取り組む。
岩手大学農学部 地域環境科学科准教授(野生動物管理学研究室)。農学博士。 クマをはじめ大型野生哺乳類の生態や、人と野生動物が共存するための科学的根拠に基づく保護・管理手法を研究。 明治大学農学部卒業後、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。岩手県環境保健研究センター主任研究員を経て現職。自治体や教育機関などで、クマとの共存や野生動物対策に関する講演・普及啓発活動にも積極的に取り組む。