赤ちゃんにふれた中学生が気づいた命の重み 世田谷区“赤ちゃん授業“の驚きの効果がこれだ

東京都世田谷区で実施「赤ちゃんとのふれあい体験授業」#2 ~授業に密着編~

編集者・ライター:関口 千鶴

赤ちゃんはやわらかくてフワフワしている!

「うわぁ~、かわいい」赤ちゃんと目を合わせて「はじめまして!」。  写真:関口千鶴

「こんにちは○○です」とママが赤ちゃんの紹介をすると、生徒たちも「こんにちは!」とあいさつをしてから体験授業のスタートです。

「じゃあ、抱っこしてあげてね」と赤ちゃんをママから渡された男子生徒は「うわっ!」と一瞬驚いたものの、次の瞬間には「やわらかい! フワフワしている!」と自分の腕の中にすっぽりとおさまっている赤ちゃんにうっとり。

それを見ていたほかの生徒から「○○、抱っこ上手! 本当のパパみたい!」と言われ、照れくさそうな笑顔をみせていました。

一方、ママの手から離れたとたんに泣き出す赤ちゃんも!

「イヤー!」とばかりに全身をのけぞらせて、精一杯の抵抗を見せる赤ちゃん。「やばい! やばい! どうしよう!」と言って、生徒はママに赤ちゃんを返そうとしましたが、ママが「大丈夫だよ、がんばって! 優しく話しかけてあげて」とアドバイスを。

なんとか赤ちゃんの体を落ち着かせようと、「大丈夫だよ~○○ちゃ~ん」と目を見ながら話したり、そっと体をゆらしてみたり……。

そして、困っている友だちを助けるように、いつのまにかグループ全員で赤ちゃんを囲み、「○○ちゃ~ん!」とあやし始めていました。

泣き出してしまった赤ちゃんを、グループみんなで「大丈夫だよ~」とあやします。  写真:関口千鶴

そして、グループのみんなが赤ちゃんを順番に抱っこし終えると、次はママパパへの質問タイムです。「何か聞きたいことあるかな?」とママから声をかけると、「育児で、一番大変なことはなんですか?」という質問が。

「今は、夜ゆっくりと眠れないことかな。まだ4ヵ月で、夜は2時間ごとに起きるので、生まれてからぐっすりと眠ることはできていないかもしれない。だから、疲れがたまってついイライラしてしまうことも多くて……」生徒たちは真剣な眼差しで聴き続けます。

ある生徒が、「私もそうだったのかな?」とひとこと。

「もしかしたら、そうかもしれないね。お母さんとお父さんは、きっとそうやって大変な思いをしながらも、みんなのことを育ててくれたのだと思うよ。私も親になって、改めて自分の親に感謝したんだよね」

「そうかあ、今日、帰ったらお母さんとお父さんにありがとうと言おうっと!」

「うん、絶対に伝えて、きっと喜んでくれると思うよ」といった心あたたまる会話が生まれていました。

いろいろな質問をしていた生徒たち。ママも真摯に答えます!  写真:関口千鶴

他のグループでは「服のサイズは?」という質問が。

ママが「今は60cmだよ」と答えると「えっ!? 俺と100cmも違う!」と驚く生徒。

ママは「そうだよ~、みんなも15年前はこんなに小さかったんだよ。でも、今はこんなに大きく立派になって、本当にすごいね! この子もみんなのように大きくなると思うと、とっても楽しみだな」と笑顔を見せていました。

ほかにも「いつもは何を食べているんですか?」「歯は生えていますか?」「どんなときがかわいいですか?」「名前の由来は?」等々、生徒たちは興味津々。多くの質問が出て、各グループともに交流を深めていました。

赤ちゃんを抱っこしたり、ママパパと交流していると、あっという間に時間が過ぎ、いよいよ終わりの時間に。

授業の最後には、ママから生徒のみんなへのメッセージを。  写真:関口千鶴

命の重さと大切さを学びました

まずは、参加者を代表してひとりのママが感想を生徒たちに伝えます。

「私の夫は、この東深沢中学校出身でみなさんの先輩です。私たちはこの地域に住み、子育てをしています。学校近くの公園にもよく遊びに来ています。

でも、実は、公園やお散歩に行くのって、準備が大変で荷物も多くて……。出かける前にくじけてしまいそうになることも多いんです」

そう言うと、聞いていた周りのママパパも大きくうなずきました。

「でも、道で生徒のみなさんが赤ちゃんを見て、『かわいい!』とか言ってもらえるとすごくうれしくて、マスクの下では結構ニヤニヤしていたりします。もう、それだけで、“がんばって出かけてきてよかった”と思えるんです!

みなさんも知らない人には、声をかけづらいかもしれませんが、もし、街で赤ちゃんに出会ったら手をふったり、目を合わせてニコッとしてみたりしてくれるとうれしいです。

私たちのようなママパパは、それだけで救われます。どうぞ、恥ずかしがらずに、ぜひ声をかけてくださいね。今日は本当にありがとうございました!」

話し終えると、教室は大きな拍手に包まれました。つづいて、生徒代表がお礼の言葉を。

「今まで、赤ちゃんはかわいいだけだと思っていました。でも、今日抱っこして命の重さとか大切さを学びました。

お母さんたちとお話しして、親のありがたさを感じたので、今日は帰ってから、ありがとうって言おうと思いました。今日はありがとうございました!」

この生徒の言葉を聞いて、思わず涙ぐむママの姿も。

楽しい時間は、あっという間に過ぎ、いよいよお別れの時間です。

名残惜しそうに赤ちゃんに近づいて手を握る生徒や、目を合わせてバイバイと言う生徒も多く見られました。交流時間の途中で、泣き出していた赤ちゃんも、生徒たちに手を握られてニコニコに。

わずかな時間での交流ではありましたが、そこにはとてもあたたかい大きな優しさがあふれていました。

お別れの時間です。名残惜しそうに赤ちゃんにバイバイ!  写真:関口千鶴
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