金田一先生が断言! 子どもが本好きに育てる「親の言葉磨き」とは?

国語の神様・金田一秀穂先生に聞く「国語力を養う親子の時間」#3〜子どもを本好きにするには編〜

日本語学者:金田一 秀穂

「百人一首やかるたで言葉を覚えるのもいいけど、一緒にやる親が本当に楽しんでいることが大切」と、金田一先生。
写真:菅沢健治
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先生自らが子どもと楽しんだ『あいうえおの本』

その点、安野光雅さんの絵本は親子で楽しめますよ。

個人的に特に好きなのは、『あいうえおの本』(福音館書店)。「あ」は「あんパン」、「い」は「いえ」など、その文字から始まる言葉が、美しい絵とともに描かれている。その絵も、大人が、真剣に、真面目に、ていねいに描いた絵で、見れば見るほどいろいろな工夫がされているんです。

僕は、2人の子どもが2歳と0歳の頃、アメリカで3年間暮らすことになって、日本語を忘れないようにと、この本を持って渡米しました。

「“あ”はね」と言って一緒に読むんです。子どもも興味を示してくれましたが、何より大人である自分が楽しかった。

やはり、絵がいいんです。それぞれの絵が精巧な日本画で描かれているんですが、とにかく芸術的で美しい。

金田一先生が好きな『あいうえおの本』(福音館書店)。1976年から続くロングセラー絵本で、1974年発売の『ABCの本』と同シリーズ。

井伏鱒二(いぶせますじ)が翻訳した、ヒュー・ロフティングの『ドリトル先生航海記』(岩波少年文庫)も大好きでした。

小学校低学年になってひらがなや簡単な漢字が読めるようになったら、おすすめしたいですね。上手な日本語を読ませたいと思うなら、特に。やはり井伏鱒二が翻訳しただけあり、言葉がきれいです。

親の言葉が「主」 本は「副」

ただ、やはり本に頼りっきりになるよりは、親の言葉づかいを磨くことが先決。子どもはどこまでいっても、親の影響を受けますから。その上で、補助的に本やラジオ、テレビなどを使ったらよいのではないでしょうか。

例えば、普段、自分(親)が多用していない「雨模様」という言葉が絵本に出てきたとします。「『雨模様』って何? 雨が降っているの?」と聞かれたら「まだ降っていないけど、今にも降りそうな空の様子を『雨模様』っていうんだよ」と教える。

そうすると親自身の語彙も広がり、子どもとの会話で使う表現も豊かになりますよね。自分が「雨模様」の意味をあやふやに覚えていたら、国語辞書をひくなどして、一緒に調べるといいでしょう。親が辞書を多用すれば子どもも使うようになるんじゃないかな。

子は親の真似をする生き物。本を与えるよりもまず、自分の言動を見直してみることが第一歩です。あくまでも“主”は親だということを忘れずに。


取材・文/桜田容子

金田一先生の記事は全4回です。
次回(#4)は「子育てと日本語のQ&A」について。21年12月28日公開です(公開日までリンク無効)

第1回(#1) スマホは子どもの国語力に影響なし! 事実と意見を区別する力が必要
第2回(#2) 「ヤバい」を連発する子どもに親ができる語彙力アップ

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きんだいち ひでほ

金田一 秀穂

日本語学者

1953年生まれ。東京外国語大学大学院日本語学専攻課程修了。中国大連外語学院、米イエール大学、コロンビア大学などで日本語講師を務め、現在は杏林大学外国語学部客員教授。専門は日本語学。日本語学を専門とする。著書に『15歳の日本語上達法』(講談社刊)、『日本語大好き』(文藝春秋刊)など。編集に『学研現代新国語辞典』(学研プラス)など。

1953年生まれ。東京外国語大学大学院日本語学専攻課程修了。中国大連外語学院、米イエール大学、コロンビア大学などで日本語講師を務め、現在は杏林大学外国語学部客員教授。専門は日本語学。日本語学を専門とする。著書に『15歳の日本語上達法』(講談社刊)、『日本語大好き』(文藝春秋刊)など。編集に『学研現代新国語辞典』(学研プラス)など。

さくらだ ようこ

桜田 容子

ライター

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。