子どもの「勉強しない」に潜む原因は? 親が変われば子どもも変わる

【今こそ学力観のアップデートをするとき】子どもの好奇心が爆発する親の接し方#3 「探究ナビ講座」で変わる大人の意識

ロールプレイングで子どもの気持ちがわかった

実際にお母さん役だった受講生は、ロールプレイングの感想を次のように話します。

「子ども役がこんなに話をきいてくれないとは思わなかったです。約束しても結局は実行されなくて、困ってしまいましたね」

そして、Aくん役はこう振り返ります。

「何かに熱中している状態を想像しながら役を演じてみました。そうしたら、驚くほどお母さんの声が入ってこなかった(笑)。ただの雑音にしか聞こえないんですよね。面倒だから適当に返事しているという感じです。そんな状態での約束だと、『やろう』とは思えないですね」

迫真の演技が繰り広げられるロールプレイング。  写真:川崎ちづる

ほかのグループでも、似たような話が出ていました。Aくん役はゲームをしている最中に話しかけられると話を聞く気にならず、母親役は本人の好きなことを否定しないように注意するものの、うまく気持ちを伝えられない。そうしたジレンマに悩んでいる間に、終了になってしまいます。

「5分という短い時間で子どもにうまく話をし、自分の意志で宿題をする方向にもっていくのはとても難しいですよね。ここでは、そうした『望ましい結果』にたどり着くことが目的ではありません。もちろん、『このナビゲーション方法なら間違いない』といった正解を示すものでもありません。

母親役は言葉を受け取った子どもの気持ちを知り、子ども役はかけられた言葉でどう気持ちが動くのか、もしくは動かないのかを体験してもらうためのロールプレイングです。

今回のケースは、ナビゲーションとしてはさらに工夫できる点はありますが、子どもの好きなゲームを否定したり無理やりやめさせたりせず、きちんと向き合おうとしたこと自体はとてもよかったと思います。子ども役をやってみた方も、素直にその時々の感情に従って熱演してくれたので、学びが多かったですね」(炭谷氏)
※実際の講座では、ナビゲーションの改善点や、ケースごとに隠されたテーマやポイントなどもお伝えしています。

ロールプレイングの後は、じっくり振り返りを行います。  写真:川崎ちづる

また、別のチームでは、お母さん役が一緒にゲームをやったり、ゲームの大会を探して妹と一緒に行こうと誘ったりして、むしろ好きなゲームをもっと楽しむ方向に舵を切ったケースもありました。

子ども役からは、「自分が好きなことをわかろうとしてくれ、さらには大会まで勧めてくれて、応援してくれている気持ちが伝わってきました。それだけですごくうれしくなり、気づくとゲームをやめて自分で会場への行き方を調べていました!」といった声が聞かれました。

「『ロールプレイングなんてただの演技』と思われがちですが、実際に言葉を交わすことで、それまでは気づかなかった感情面に意識が向くんです。

最近は、子どもを真っ向から否定するような対応をする方は減っていますが、少し前は、子ども役に反発されると苛立ってしまい、『もうゲームをやめなさい』などとヒートアップすることがよくありましたね。演技とわかっていても、それだけ感情が刺激されるということです」(炭谷氏)

子ども役は「熱中しているときに声をかけられる煩わしさ」や「好きなことを認めてもらえたうれしさ」を実感することができ、母親役は「子どもの生の声」を聞くことができる、貴重な機会となります。

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