
子どもの「読書感想文」は【親子インタビュー式読書感想文】で克服! 「感想インタビュー」「質問シートの整理」とは?〔文章力養成講座の専門家〕がわかりやすく解説
「親子インタビュー式読書感想文」松嶋有香さんが解説⑥ 教材:課題図書『ぼくの色、見つけた!』
2025.07.15
【ステップ4:質問シートの整理】近い内容のものをつなげて文にする
ゆか先生:子どもの話を聞いていると、「この子が感動したのは、ここなんだ」という場所がみえてくると思います。そうしたら、メモに書かれた言葉を少しずつふくらませながら、文をつなげていきます。子どもが「楽しい」「すごい!」などと同じ感情を抱いたところ、同じ話題について繰り返し話していると感じたところが「つなげるポイント」。
ステップ3で使った『ぼくの色、見つけた!』質問シートを元に、説明していきましょう。ピックアップしたのは、担任の平林先生が信太朗の困りごとに気づいて、放課後の居残り授業のときに話しかけてくれたシーン。

ゆか先生:インタビュー会話のやり取りは、こんな感じです。
親
「なぜ“本当!?”と思ったの?」
子ども
「平林先生が『言ってもどうにもならないって、もし思っているんだったら、それはちがいますよ』って言っているから」
親
「あなたは、言ってもどうにもならないと思っているの?」
子ども
「うん。だって信太朗も、絵をバカにした信行には、なんにも言わなかったよね」
親
「そうだったね。じゃああなたにとって “言ってもどうにもならない”ことはなあに?」
子ども
「えーと、男子が休み時間に教室の中を走るのは、言ってもやめないから、どうにもならないかな」
親
「そういうときは、どうしてるの?」
子ども
「私はなんにも言わない。でも、○○ちゃんは怒って注意している」
親
「そうなんだ。○○ちゃんは勇気があるね」
子ども
「この間も、走っていた子にぶつかられて転んだときに助けてくれて、“ちゃんと謝ってよ!”って言ってくれたの。私はなんにも言えなかったからうれしかった。信太朗が平林先生に言われて、じわじわうれしかったっていう気持ちと同じかも」
ゆか先生:このやりとりで「言ってもどうにもならない」と子どもが感じた、2つのシーンが出てきました。このシーンの前に、信太朗が描いた絵を信行がばかにするシーンがあって、そこには「先生にガッカリした」とメモがありました。どうやら「先生」が気になるみたいなので、つなげてみましょう。
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平林先生は『言ってもどうにもならないと思うのは、ちがう』と言うけれど、私はどうにもならないことはあると思う。実際に休み時間に教室を走っている男子に先生が注意しても、やめてくれないから。
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ゆか先生:うまくつながりましたね。さらにその後に出てきた言葉を足してみましょう。
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平林先生は『言ってもどうにもならないと思うのは、ちがう』と言うけれど、私はどうにもならないことはあると思う。実際に休み時間に教室を走っている男子に先生が注意しても、やめてくれないから。
でも、私が走っている子にぶつかって転んだとき、○○ちゃんが助けてくれたのはうれしかった。勇気があるなと思った。
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ゆか先生:このように、話をしながら子どもの気持ちを確認しつつ、少しずつ文章に肉づけをしていきます。
──文を肉づけするときのコツはありますか?
ゆか先生:次の5つを試してみましょう。
① 「ワンワン」「ドンドン」などの擬音語を入れる
② 「ひやひや」「ゆったり」などの擬態語を入れる
③ 「聞いた」を「耳を傾けた」というような大人びた言い方に変える
④ 「うれしかった」「おもしろかった」のような単純な言葉を工夫する
⑤ 「胸がドキドキした」「興奮してジャンプした」など、自分の体の変化を書く
ゆか先生:③は年齢や読書量によって、語彙量に個人差があります。知らない言葉は口から出てこないので、ほかにどんな言い方があるのか、親子で考えてみるとよいでしょう。
④は一度使用禁止にしてみるとおもしろいです。私の講座では「うれしかった」を禁止ワードにしていますが、子どもたちは「えーっ!」と言いながら、色々工夫をします。「うれしかった」場合、「他のどんなときのようにうれしかったのか」、「うれしいときにどんな行動をしたのか」などと質問を重ねて、言葉を増やしていきます。
うまく文をつなげられたり、新しい表現に書きかえられたりしたら、たくさんほめましょう。「すごいね、いっぱい書けたね」とほめてもらえたら、「がんばって書いてよかった」「次もがんばってみようかな」と前向きな気持ちになります。子どもの「書く」力を応援して、ほめて、伸ばしてあげてくださいね。
次回は最終回! いよいよ原稿用紙に感想文を書きます。さらに「読書感想文」がレベルアップする、書いた後のもう一工夫とは?
松嶋 有香
静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」
静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」