約20年ぶりの新設校は起業家を育てるために起業家が立ち上げた高専だった!
高専の知られざる魅力 #5 注目すべき高専6選「神山まるごと高専」「旭川工業高等専門学校」
2024.02.10
時代に合わせた柔軟なカリキュラムづくり
「旭川工業高等専門学校」は現在51校ある国立高専の中で最北に位置します。北海道に4つある国立高専のなかでも、留学生を積極的に受け入れており、寮生活も国際色豊か。全学生数は752名(2023年5月1日現在)。学科は、「機械システム工学科」「電気情報工学科」「システム制御情報工学科」「物質化学工学科」の4つから選択できます。
近年、世界的な半導体不足が深刻化。半導体はパソコンやスマートフォンなどの情報機器や自動車、医療機器などあらゆる製品に必要な部品で、社会問題にもなっています。
2022年4月に台湾TSMC(台湾セミコンダクター)が日本に工場を新設、intel(インテル)やSamsung(サムスン電子)といった世界的な半導体メーカーも日本に研究施設の設置を検討するなど、半導体に関するニュースが産業界を賑わせています。
そんななか、旭川工業高等専門学校では2023年10月、新科目「半導体概論」を開講しました。
──日本でも2022年8月、半導体の専門家集団と日本企業8社が出資して設立した半導体メーカーRapidus(ラピダス)が北海道に工場をつくることも話題ですね。科目を新設した背景を教えてください。
松原英一先生(以下、松原先生):半導体というのは実はすごく裾野が広くて、機械、建築、化学などを含む、ほぼすべての産業に関係し、同時にそれらを支えているもの。どんな分野を目指すにしても半導体の知識を持っておくことは大切です。
もともと高専の電気情報工学科には半導体の授業があり、大学の授業と同レベルの、わりと高度なことをやっているんですね。そこで、電気情報工学科以外の学生にも学ぶ機会を増やしたいという思いがありました。
「半導体概論」では、そもそも「半導体とは何か」というベーシックなところから始めて、産業全体の話や製造工程(どうやって半導体ができるのか)まで教えていきます。
──急遽つくった科目と伺いましたが、履修する学生の反応はいかがですか。
松原先生:日頃から半導体のニュースにも関心が高く、電気情報工学科の学生はもちろん、機械システム工学科、システム制御情報工学科からも受講者がいます。「北海道で世界最先端のことができるようになるんだ」と、みんなモチベーションは高いですね。
日本が半導体で再び世界をリードできる可能性もあり、これから北海道の産業全体が活気づいていくと思います。全世界をフィールドにして、幅広い分野で活躍できる高専生を育てていきたいですね。
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日本の産業界に貢献できる人材を育成する。高専の専門性が高く実践的な教育は、学生たちにイノベーションの精神と未来に立ち向かう自信も育んでいるように感じました。人生のキャリアパスはさまざまで、正解はありません。わが子の将来を考えた選択肢の一つとして、高専も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
全国各地の都道府県に合わせて、51校の国立高専があります。各高専ともオープンキャンパスも開催していますので、高専に興味を持ったご家庭は気になる高専に足を運んだり、HPなどで選択科目を調べてみてくださいね。
取材・文/鈴木美和
高専連載は全5回。
1回目を読む(高専理事長インタビュー前編)。
2回目を読む(高専理事長インタビュー後編)。
3回目を読む(高知工業高等専門学校・広島商船高等専門学校)。
4回目を読む(沖縄高等専門学校・北九州工業高等専門学校)。
鈴木 美和
フリーライター。千葉県出身。『dancyu』、『読売新聞』、『UOMO』などの雑誌や新聞、オンラインを中心に食の記事を寄稿。 出産を機に千葉県・房総に移住。2人の男児の子育てに奮闘する中で、育児の悩みや教育の大切さを実感したことから、現在は教育業界を中心に、取材や執筆活動を行っている。 地元の新鮮な食材を使って料理をするのが日々の楽しみ。
フリーライター。千葉県出身。『dancyu』、『読売新聞』、『UOMO』などの雑誌や新聞、オンラインを中心に食の記事を寄稿。 出産を機に千葉県・房総に移住。2人の男児の子育てに奮闘する中で、育児の悩みや教育の大切さを実感したことから、現在は教育業界を中心に、取材や執筆活動を行っている。 地元の新鮮な食材を使って料理をするのが日々の楽しみ。