子どもの「睡眠時無呼吸症候群」の原因? 「舌の位置」の想定外の重要性を〔専門家が解説〕
口呼吸との関係も? 舌が下がることの危険性と生活習慣 #2
2024.03.01
「口呼吸」と聞くと、なんとなく「あまりよくないイメージ」を持っている方も多いでしょう。しかし、口呼吸が及ぼす危険性については、どの程度知っているでしょうか。
実は口呼吸は、子どもの可能性を潰しかねない重大な問題が潜んでいるものですが、親御さんが気をつけてあげれば改善できるものでもあります。
「食いしばりと低位舌(ていいぜつ)がなければ歯医者はいらない」をモットーに、舌の重要性を伝えている石塚ひろみ先生に、舌の役割と口呼吸との関連性、正しい舌の位置についておうかがいします。
(全3回の2回目、#1を読む)。
◆石塚 ひろみ(いしづか ひろみ)
歯科医師。オウル歯科院長。
「お口はカラダの玄関」を基本理念とし、訪問診療や障がい者歯科(重症障がい者を含む)にも力を入れている。また、低位舌が口腔内のみならず全身に与える影響や、舌の機能の重要性を広めるために、セミナーや講演活動も精力的に行っている。
【舌が下がることの危険性と生活習慣:第1回 第3回を読む】
※公開日までリンク無効
子どもの口呼吸は低位舌が関係している!?
普段「舌」を意識して生活している方は少ないでしょう。無意識に動かしていることの多い舌ですが、食べること、飲むこと、話すこと以外に、実は呼吸と深く関係しています。
「特に注意が必要なのは口呼吸です。近年、子どもの『睡眠時無呼吸症候群』が増えています。睡眠時無呼吸症候群は小さなお子さんの場合、気道の狭さや扁桃腺の腫れやすさも関係していますが、舌が下がって口呼吸になっていることが原因の場合も多いんです。
睡眠時無呼吸症候群のお子さんは、症状がそれほどひどくない場合でも、脳に酸素が足りずにぼーっとしていたり、集中力に欠けていたりする特徴があります。
実はそれが原因で、発達障がいの診断でグレーゾーンにされてしまうお子さんもいるんです。呼吸を治せばいいだけなのに、発達障がいを疑われて特別支援級になってしまうケースもあります。これは子どもの可能性を潰してしまうことになりかねません。
お子さんの睡眠時無呼吸症候群は、親御さんが気づいてあげられるかどうかが重要になってきます。普段から、いびきや寝返りが多くないかを気にかけてあげてほしいですね。
口呼吸だといびきをかきやすくなりますし、寝返りの多さや寝相の悪さは、実は息苦しいために姿勢を変えて無意識のうちに自分で調整している場合もあります。
特に、あごを上げて頭頂部がうしろに下がっているような寝方は、気道を確保しているといえるでしょう。そういう場合には、お子さんが寝ているときにちゃんと鼻で呼吸をしているか確認してあげてください」(石塚先生)
さらに、舌の先から足の先まで筋肉はすべてつながっているので「影響が出ないところがないといっても過言ではありません」と、こうも指摘されます。
「低位舌は、口腔内とその周辺の成長不全につながります。上の歯列の上には脳があります。舌が正しい位置にあり口蓋(こうがい)を押していれば、脳への刺激を与えてくれます。
しかし、舌が下がっていると、脳へ刺激がいかなくなるのです。舌は脳以外にも目や鼻の精神神経にも刺激を与えてくれます。近年、鼻が成長せずに平面のような鼻のお子さんも多く見られます。これは刺激が伝わらず骨が正しい方向に成長していないので、ただの穴のようになっているんです」(石塚先生)
そのほかにも、「舌は口の中の玄関番です」と話す石塚先生。食べ物や飲み物の、熱い・冷たいを感知する以外に、身体の中に毒を入れない役割もあるといいます。
舌が正しい位置になることで改善が期待できる症状
聞けば聞くほど「舌」が重要であることがわかってきました。では、舌が正しい位置になるとどんな効果が期待できるのでしょうか。
「単純に、舌が下がっている人の真逆と考えてもらっていいです。滑舌がよくなったり、口周りが動くようになって顔の凝りがとれたりします。子どもだけでなく、ほうれい線やマリオネットラインが気になる大人にとっても改善が期待できますよ。
また、先ほどお話ししたようにすべての筋肉はつながっていますので、舌が下がっていると内臓まで下がってしまいます。
舌が正しい位置にあれば、内臓も本来あるべき位置に戻り、調子もよくなってきます。私のところへ相談に来られる方のなかには、便秘が治った方はもちろん、40代で自然妊娠した方もいらっしゃいますよ」(石塚先生)
そのほかに、気になる人にとってはこんなうれしい効果もあるといいます。
「こぼれ話になりますが、実はオナラが減るという効果があります。舌が下がっていると、食事の際に空気を多く飲んでしまうので、その分、オナラも多くなります。舌が上がっていれば空気を飲む量が減るので、必然的に減るというわけです」(石塚先生)