「働かなくて悲しくないの?」スウェーデンと日本の「子育て」驚きの差とは

育児にイライラしない秘密を伝授 心地よいスウェーデンの子育て #1

親がストレスを溜めない工夫をしている!?

「私自身がしつけの厳しい家庭で育ったので、自分の子どもに対してもなるべくちゃんとしつけようと思っていました。

ただ、スウェーデンではそこまで厳しくしつけている親が見当たらず、日本のように『あれやっちゃダメ、これやっちゃダメ』とこまごまと子どもを注意していないんです。

スウェーデンでは我が子が自宅に友だちを連れてきたら、夜ご飯まで食べさせるのが暗黙のルールなのですが、子どもたちの食べているところを見るとしつけがされていないなぁと思うことが多々ありました。

日本ではなるべく残さずきれいに食べましょうなど、食事ひとつとっても細部まで注意されますが、スウェーデンではそれがありません。

しつけをそこまでしないというのは悪くいえば放任ですが、良くいえば子育て自体がのびのびしているともいえます。

子どもを注意したり、叱ったりするとその度に親にもストレスがかかりますが、この国で子育てをする親は、余計な負担を抱えてまで叱らないという意識がどこかにあると感じます」(井浦さん)

スウェーデンでは専業主婦(主夫)で子育てをしている人は失業者という肩書きになるほど、男女ともに仕事に就いているのが当たり前です。

仕事に加えて育児でもストレスを抱えると二重の負担になるからか、「子どもってそんなもの」と、おおらかに構えることでストレスの量をうまくコントロールしているといえます。これが叱りすぎで悩まないコツにつながっていくのでしょう。

子どもだけに自分を注ぐ人生は悲しいじゃないか、と夫にいわれて……

スウェーデンでは、夫婦共働きで子育てをするのが一般的です。働くことに関しては、子育てをする人たちに向けた社会制度が充実していることも関係していますが、スウェーデン人男性の価値観も影響しています。

「スウェーデンはいわずと知れた福祉大国です。ですがその分、税金が高いことでも知られています。

物価も高いので夫婦共働きをしないとやっていけないという経済上の背景もありますが、個や生き方に対する価値観が違うことも仕事を持つことを後押ししています。

私はスウェーデンに移住してきて結婚した当初、言葉がうまくできないこともあって、専業主婦でもいいかなと思っていた時期がありました。

そんなときに夫から、『働かなくて悲しくないの?』といわれてびっくりしたことがあったんです。

『なんで悲しいの?』と夫に聞き返したら、『自分の世界を持てないことは、悲しいことじゃないか』と返答がありました。

仕事を持って、自分を持ちなさいというのがスウェーデン人の考えです。つまり個が尊重されるのが、スウェーデンでの人のあり方なんです。

結婚をして夫婦となっても妻だから、夫だからという前にその人そのものがいて、みんなが対等に自分を楽しむべきだという意識が根付いています」(井浦さん)

井浦さんは夫に「子どもだけに自分を注ぐ人生は悲しいじゃないか」という意味合いの言葉もいわれ、ハッとしたと語ります。

グローバル社会の中心である欧米では、個の存在が重要であり、尊重されます。妻となり子どもを持っても、まずは自分であるべきだという考えが浸透しています。

自分自身を楽しむことが子育てだけにとらわれない自分を形成して、育児に向かういい精神バランスを保つ要素となっているのです。

「子どもだけに自分を注ぐ人生は悲しいじゃないか」といって、井浦さんは夫にまずは自分を持つことと楽しむことを勧められました。  写真提供:井浦ふみ
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