子どもたちがママと一緒に退院してきた日からパパにとっても待ったなしの子育てが始まります。パパはどんな心づもりで、どんな工夫をしていけばよいのでしょうか。
『双子妊娠がわかったときによむ本』を執筆し、4人男児のパパでもある工藤啓さんと、「多胎育児のサポートを考える会」を発足させ、代表を務める市倉加寿代さんに話を伺いました。第二回目は「新生児〜乳児期編」です。
産後のママにはとにかく少しでも休息を
いよいよ子どもたちとの暮らしが始まるなか、パパは何をして、どこに気を配ればよいのか。まず多胎児を出産したママの体調と、多胎で育ち生まれた新生児たちの様子から知りましょう。
市倉加寿代さん(以下、市倉さん)「多胎妊婦のほとんどが帝王切開で出産します。開腹手術後の回復には時間もかかりますし、ホルモンバランスも崩れ、個人差はあれど産後は心身ともにとても過酷な状態です。本来ならしばらく横になっておくべきですが、子育てをしなければいけないのが多くのお母さんの現実です。
また、多胎で生まれた子どもたちは一般的に小さく、低体重が多いです。体力もなく、哺乳力の弱い新生児2人以上を昼夜問わず、世話するのはとても大変。育休を取れるお父さんなら一緒に育児に取り組んだり、そうでないお父さんも仕事から帰ったら抱っこをかわったり、ミルクをあげたり、少しでもお母さんが休めて一人になれる時間を作りましょう。そのほかにも、日中の話を聞いたり、子どもとは関係のない世間話をするなど、気分転換できるように極力、配慮してほしいです。
お父さんも日中の仕事で疲れているのはわかるのですが、昼間、新生児にかかりっきりになっているお母さんは体力が消耗しているうえ、想像以上に孤独です。
“自分ひとりでこの子どもたちの命を預かっているんだ”というプレッシャーを想像してみてください。だからこそ、お父さんは“今が大事”と思って一緒に乗り越えてほしいのです」
工藤啓さん(以下、工藤さん)「妻の場合は、双子の妊娠中からつわりが長く、貧血もあり、見ているだけで大変そうでした。双子は生まれたあとも入院していたのですが、妻の退院後1ヵ月間は僕も育休を取り、通院や上の兄弟たちの世話など、つきっきりで育児をしました。その後も1年間くらいは妻の体調回復を最優先にしながら、双子をどう世話するか常に考えていました」
産後のママは歩行練習や授乳など忙しく動いているため、パパからは、一見、平気そうに見えるかもしれません。ですが、「大丈夫だからできる」のではなく、「やらざるをえない状況」なだけ。子どもたちの世話をしながら、ママにも気を配りましょう。
多胎家庭は家族・友人だけじゃなくシッターサービスにも頼ろう
ママとパパで頑張って子育てをしていても、2人でできることには限界があります。多胎育児となるとなおさらのこと。子育てに限界を感じる前に、積極的に周囲の人に助けてもらったり、育児サービスを使うことを考えておきましょう。
工藤さん「僕は周りの人々に本当に助けてもらいました。ご近所や友人には前々から “双子が生まれるので頼るね”と伝えていたので、ほんの30分でも子どもたちを見てほしいときなどはSOSを出す。友人とも家族ぐるみの付き合いをしていると、ときに協力し合えますし、大きくなっても一緒に遊べる。ここは遠慮せずに頼ることをおすすめします」
市倉さん「職場によっては育休が取れなかったり、単身赴任でいつも近くにいられないというお父さんもいると思います。そういう場合は、お父さんから外部サービスの利用を提案してほしいです。
ベビーシッターなど費用がかかるサービスは、お母さんが利用するのをためらってしまうという話を聞きますが、多胎家庭のベビーシッター利用は当たり前だと考えること。そしてお父さんが率先してそれらの情報を調べ、お母さんに提案してほしいです。
お父さんが“ベビーシッターさんに頼ったら?”と言うだけではダメです。なぜなら、お母さんは調べたり、手続きする余裕もないから。大切なのは、お父さんがあらかじめ調べて “○○○というサービスが良さそうだから使ってみようか”と提案すること、そして夫婦で話し合う雰囲気を作ることです」