『どしゃぶりのひに』全ページ無料公開!【「あらしのよるに」全7巻 全ページ試し読み】380万部の国民的ベストセラー 20年ぶり“奇跡“の新シリーズが3月12日スタート!

「あらしのよるに」シリーズより『どしゃぶりのひに』を全ページ無料公開!

児童図書編集チーム

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「あの……その、みんなには だまってて わるかったけど、あいつは すごく いい やつで……。」
「いい やつ!!」
「オ、オオカミが!?」
みんなの かおが けわしく なる。
「おれたちを たべる やつらだぜ。」
ともだちの タプまで おこっている。
「で、でも、はなしも あうし……。」
「あのねえ、メイ。やつらから みたら おまえは ただの えさだ。
そうやって いつでも よびだせる えさは、いざと いうときの べんりな しょくりょうさ。」
「いや、それだけじゃない。」
としよりの ヤギが くびを ふった。

「やつらに ヤギの かくればしょや えさを たべに いく ばしょを ぜんぶ しられたら、
わしらは おしまいさ。
そいつ、ともだちの ふりして、 ききだすつもりかも しれんぞ。」
「そうだ、一ぴきずつ おびきだして たべることだって できるんだぞ。」
「そ、そんな……。」
メイが くちごもると、みんなは さらに おおごえを はりあげる。

「おまえ、この おいしい くさと おともだちに なれるか。
ほら、えさは どこから みても やっぱり えさだろうが。」
「なあ メイ、うまれたときから いっしょに いる おれたちと、
このあいだ しりあったばかりの ともだちと どっちが たいせつなんだ?」
「とにかく、あんたは だまされてるのよ。」
「はやく めを さませよ、メイ。」

そうやって どれくらい みんなに せめられただろうか。
そのひから メイは サワサワやまを でられなく なってしまった。
いつも なかまが みはっているのだ。

ひとりに なって かんがえてみると、みんなの はなしは たしかに まちがっては いない。
『そういえば、ガブは まえに いちど、タプに おそいかかったっけ……。
フカフカだにに よく えさを たべに いくと いってたけど、
もしかして いままで なんびきもの ヤギを……。
じゃ、やっぱり、わたしを だまして……。
いや、あのガブに かぎって、まさか……。』

メイが そんなことを かんがえていると、としよりの ヤギが みんなと いっしょに やってきた。

「なあ、メイ、おまえ、そのオオカミと もういちど あってみないか。」
「ええ!? ガ、ガブと?」
「もし やつらが おまえを りようする つもりなら、はんたいに こっちが やつらを
りようしてやるのじゃ。
にこにこしながら そいつと あって、やつらの いる ばしょ、そのかず、やつらの にがてなもの、
いろいろ ききだしてくれ。
そうすれば おまえは もとどおりの わしらの なかまじゃ。」
メイは すこし かんがえてから こたえた。
「やってみます。」

そのころ、ガブの ほうはと いうと、やはり なかまたちに かこまれていた。
「へっ、ヤギと おともだちだって!?」
「ガブ、おまえ、きは たしかか?」
サワサワやまの メイの うわさは、リスや ウサギ、サルたちの あいだでも もちきりに なり、
とうとう バクバクだにの オオカミにまで つたわってしまったのだ。
「でも、あいつ、すごく きの いい やつで。」
「あのなあ、ガブ。ヤギは おれたちの えさだぜ。
そのえさと ともだちに なれるわけ ないだろう。」
「かんがえても みろや、ヤギに ウシに ブタ、みーんなと
おともだちに なっちまったら、おれたちゃ うえじにだぜ。」

「だから、あいつだけで いいんでやんす。」
「でもな、ガブ。たった 一ぴきでも、ともだちと なれば、なんでも はなすだろ。
おれたちの いる ばしょも、いつ、どこに かりに いくかも、
みーんな やつらに わかっちまうんだぜ。」
「おまえ、やつらに りようされてるのが、まだ わからないのか。
このあいだだって おまえが そのヤギを たすけたんじゃないか。」
ガブが ひとこと こたえると、みんなが つぎつぎに こえを はりあげる。
「しかし、あたまの いい ヤギも いたもんですねえ、あにき。
とぼけた かおして、さみしい オオカミを しっかり つかまえちゃってさ。
うまいこと おともだちに なっちまえば、もう なんでも いうがまま。
さいこうの ようじんぼうだぜ。」

「なあ ガブ、いいかげんに めを さませや。
あいつらだって なかまを おれたちに くわれてるんだ。
ほんきで おれたちと ともだちに なれると おもうか。」
「はあ、そりゃあ……。」
そこに いちばん としうえの ギロが、ずいっと まえに でて こういった。
「いいか、ガブ。おまえ、そのヤギと もういちど にこにこして あってこい。」
「え!? なんででやす?」
そこで ギロの あいぼうの バリーが わらいながら いった。
「はんたいに むこうの うごきを ききだすのよ。
おれたちだって、そういう ともだちを りようしたら、まいにち えさにゃ こまらないってわけよ。
カッカッカッ。」
「もし まだ ばかなことを かんがえてるんだったら、ただじゃおかねえぞ。
うらぎりものは、どこまででも おいかけてやるからな。
こっちだって、えさが とれなきゃ、いきられねえんだ。わかったか。」
ギロの ことばに、ガブは すこし だまってから こう こたえた。
「も、もちろん わかったす。」

そのひの ゆうぐれどき、ヨモギの おかに 一ぽんの せんが えがかれた。
それは、とおく バクバクだにの オオカミたちからも よく みることが できた。
一ぴきの オオカミも、それを みて、おなじようなことを かえした。
しかし、そのあいずは、もう ひみつの あいずでは なくなっていた。

やくそくの ときが きた。
ひるさがりの ソヨソヨとうげは、どこか しめっぽい くうきに つつまれていた。
「やあ、おそく なっちゃって。」
「いや、おいらも、いま きたところで……。」
メイが みあげると、そこには まさしく オオカミの かおが あった。
「ど、どうします。きょうは?」
「そうっすね。じゃ、このしたの たにがわまで おりてみやすか。」
そういって ガブが ぎこちなく わらう。

次のページへ ガブとメイはどんな会話をするのか……⁉︎
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