
「過激すぎる」は大人の誤解!? 子どもが『サバイバル』『デスゲーム』に熱中する本当の理由とは
出版ジャーナリスト・飯田一史のこの本おススメ! 第5回 「サバイバル・デスゲーム」
2025.09.27
ライター:飯田 一史
選書②『ブルーロック』

文:吉岡みつる/原作:金城宗幸/絵:ノ村優介(講談社)
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『ブルーロック』は、世界一のストライカーを育てるために日本中の高校生フォワード300人が集められ、サバイバルに挑むサッカー漫画。ノベライズ版も男女問わず、とても人気があります。
物語は、日本代表をワールドカップで勝つチームにするために個性的なストライカーだけを集めた“青い監獄(ブルーロック)”プロジェクトが始まり、主人公・潔世一(いさぎ・よいち)たちは、他の選手を蹴落として日本代表入りをめざす極限の試練に挑みます。参加者たちは脱落するとサッカー人生も終わってしまうという緊張感あふれる競争が魅力です。
協力よりも自分の「エゴ」を磨いて突き抜けた個性を競い合う、といったことが、作中冒頭では言われます。しかし実際のところよく読むと、それぞれの選手は、チームメイトや対戦相手との戦いのなかで自分らしい武器が何なのかに気づき、尖らせていくことで、むしろチームに貢献できる存在になっていきます。
個々人が自分の長所を使い合うことで集団としてうねりが生まれる、という『ブルーロック』の描写は、お互いに気をつかって遠慮しがちな若い読者に「もっと自分を出してもいいんだ」と背中を押すものになっています。
スポーツをやっている子たちにとっては、レギュラーに入れるかどうか、試合で勝てるかどうかはサバイバルそのものですから、その心理を漫画らしい誇張で表現しているとも言えます。部活で忙しいとか、身体を動かすのは好きだけどあまり本に興味を示さないという子でも、『ブルーロック』なら読んでくれるかもしれません。