
「過激すぎる」は大人の誤解!? 子どもが『サバイバル』『デスゲーム』に熱中する本当の理由とは
出版ジャーナリスト・飯田一史のこの本おススメ! 第5回 「サバイバル・デスゲーム」
2025.09.27
ライター:飯田 一史
選書③『6days 遭難者たち』

著:安田夏菜(講談社)
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リアリティラインがもっとぐっと現実よりのサバイバルもので中高生向けの小説としては『6days 遭難者たち』(著:安田夏菜/講談社)があります。
高校生3人が日帰り登山をしたところ、夏に低い山という油断、それぞれの「誰かがなんとかしてくれる」という甘えから準備不足が重なり、生死をさまよう遭難事故に陥ります。
大人でも調子に乗っていたり、逆に気持ちに余裕がなかったりすると、とんでもないミスをやらかすものです。私は中学生のころに、同級生が海難事故やバイク事故で亡くなっています。10代は経験が少ないことや感情で突っ走りがち、仲間に対して見栄を張りがちな年代であることもあって、よけいにリスクを見誤りやすいと思います。
『6days』では、若者が集まったときに「なにかやらかしてしまう」「大きな事故を起こしてしまう」ときの心理的なメカニズムを丁寧に描いています。思春期の人間は、大人から「気をつけなさい」などと言われても「わかってる」と答えつつ、内心「うるさいな」と思っていて聞くわけもないのです。それが普通です。
そういう年ごろの子どもたちに、「危険は意外と身近にある」と実感してもらうためには、同年代の主人公たちの視点を通じて体験できる物語が有用だと思うのです。
現実には、サバイバルもので描かれているような切羽詰まった状態に追い込まれないに越したことはありません。ただフィクションを通して恐怖への備えを身につけたり、自分と似た環境にいるキャラクターから勇気づけられたり、登場人物たちの生き方から自分の人生や人間関係を考えたりする良い機会になります。
大人から見て「刺激が強そうだけど大丈夫かな」と感じることもあるかもしれません。しかし近年、小中高生に人気のサバイバル、デスゲームもので残虐・残酷な描写が直接的に描かれている小説は非常に少ないのです。
刊行する児童書やティーン向け小説の編集部も、表現には十分気をつけていますので、保護者の方はあまり心配せずに、子どもの読書を見守ってあげてほしいと思います。
文/飯田一史
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飯田 一史
青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。 出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。 主な著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 (平凡社)『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社)『ウェブ小説30年史』(講談社)ほか。 ichiiida.theletter.jp
青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。 出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。 主な著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 (平凡社)『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社)『ウェブ小説30年史』(講談社)ほか。 ichiiida.theletter.jp