〔野間児童文芸賞受賞〕小説家デビューへの道・創作のための「3つのポイント」 児童文学作家・長谷川まりるさんに聞く

長谷川まりるさんインタビュー<後編>

高木 香織

長谷川まりるさんのデビュー作『お絵かき禁止の国』あらすじ

〈中学3年の女の子・ハルには好きな人がいます。それは同級生のアキラ。同性であるアキラを好きになったことで、ハルはうすうす感じていた自分の気持ちを確信します。「やっぱりあたし、女の子が好きなんだ。世の中にはそんな人がいることは知っていたけど、まさか、自分が、そうだったなんて!」恋に悩む中3女子の卒業までの1年間〉

長谷川まりるさんのデビュー作『お絵かき禁止の国』(講談社)
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LGBTの物語を書きたかった

──『お絵かき禁止の国』を書こうと思われたきっかけは?

長谷川まりるさん(以下、長谷川さん):
LGBTのお話を書こうと思ったんです。刊行したのは2019年ですが、そのころまだ日本はLGBTに対してあまり理解が進んでいなくて。「なぜこういう内容の本がないんだろう?」と思って書きました。

──同性を好きになるのは、普通の恋愛と同じですものね。本を出版されてからの、読者の反応はいかがでしたか。

長谷川さん:
マイノリティの方にとっては、リアルすぎてつらかったそうです。

物語の一番最後、卒業式のあとでハルが両親から「ハルには同性愛のことばっかりで人生を悩んでほしくない」と言われるシーンがあります。

両親はいいことを言っているつもりなのですが、当事者から見たら「あるある~。わかってないよね、この両親」という感想だそうです。こういったシーンを散りばめています。

プロの作家との出会い

──『お絵かき禁止の国』も『杉森くんを殺すには』も、リズミカルでイマドキの子どもらしい話し言葉が印象的でした。子どもたちと話す機会が多いのですか。

長谷川さん:
小説を書きながら普段は別の仕事をしています。仕事先では、アルバイトの大学生といつも話しているんです。このごろは執筆の時間を取りたくて、出勤は週4回に減らしてもらっていますが。

──執筆活動をはじめたのは、いつごろからですか。

長谷川さん:
中学生からです。小説を書いていると知られるのが恥ずかしくて、家族に隠れてこっそり書いていました。

当時は3部作の物語を書いていて、4回くらい書き直したりしていました。ルーズリーフに手書きしていたので、書き直すときは最初から全部です。そうやって少しずつ作品を書き溜めていました。

▲笑顔の長谷川まりるさん。インタビューは、第62回野間児童文芸賞の贈賞式会場(東京都、帝国ホテル)にて行われた。

長谷川さん:大学を卒業したころ、姉の友だちの母が児童文学作家のにしがきようこさんだと知りました。実家のすぐそばにお住まいだったので、訪ねていったんです。

にしがきさんに、「あなたも物語を書いているの?」と、尋ねられました。「そうなんです」と答えると、「じゃあ、ちょっと読ませて」と。それで、書き溜めていた小説をお見せすると、にしがきさんが参加している児童文学の創作同人会に入れてくださったんです。

──プロの作家に誘っていただいたんですね!

長谷川さん:
はい、人に読まれるのは勇気がいりましたが、創作同人会に誘っていただけたのは、とてもありがたいことでした。

会では、作品を提出すると、会員が読んで合評会で感想を言ってくれるのです。入会したときは「SFファンタジー研究会」といいましたが、今は改名して「駒草」といいます。名称は変わっても、作品群は変わらずSFとファンタジーが主な作品ですね。そんな会に入れてラッキーでした。

──長谷川さんもSFを書くのですか?

長谷川さん:
はい、SFとファンタジーを書いていますよ。今は忙しいので休会していますが、よく顔は出しています。

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