シリーズ累計25万部超! 児童書『こども地政学』が戦争下で親子に読まれるワケ

制作者インタビュー「こども地政学」#1 ~地政学入門編~

ライター:遠藤 るりこ

国ってなんだ? どこからどこまでが日本?

そして、最後のアクションは、「③日本をじっくり見てみる」ことだと坪井さんは言います。

試しに、子どもに「日本はどこ?」と聞いてみてください。本州だけを指さしたり、ざっくりと北海道から沖縄までだけを日本と認識している子どもも多いのではないでしょうか。

「日本は本州、九州、四国、北海道の4つの大きな島と沖縄など小さな島々から成り立つ、海に囲まれた島国。海も日本に含まれる領海があります。

きっと、子どもたちが知っているよりも、日本の範囲は広いということがわかるでしょう」(坪井さん)

こうして「どこからどこまでが日本」なのかを知ることで、おのずと国土や領海についても説明することができます。

日本のような島国は、周囲を海に囲まれているので『海洋国』とも呼ばれています。『こども地政学』では、領土や領海について説いています。

「国境が陸地にある国は、自動車や徒歩で国境を越えることができますが、日本はどの国とも陸地でつながっていないので、船や飛行機を使わなければ外国へ行くことができません。

また、日本の国土の広さは、世界196ヵ国中で61位。世界地図で他の国と比べると、それほど大きくありません。

しかし、領海を含む排他的経済水域(EEZ)の面積は世界6位の広さで、日本は世界屈指の海洋国なのです」(『こども地政学』より抜粋)

国土は小さいけれど、領海も含めて日本なのです。

「陸地に国境がない日本のような国でも、海上に設定される領海(領海の最も外側が海上の国境になる)や、排他的経済水域(EEZ)の範囲をめぐり、他国と争いが起こることがあります」(『こども地政学』より抜粋)

こうして子どもと一緒に順を追って日本のことを知っていくと、世界のスケールに想像がつくようになってきます。

「国の関係や国際政治が、地理に影響されるというのは考えてみれば当たり前のことですよね。でも、そんなの学校で教えてくれなかったし、わからなかったという大人もいるはずです。

子どもと一緒に地政学を学んでいくことで、そういったことがあらためて感じられるようになるのではと思います。

子どもたちが歴史・地理・政治、これからいろいろな勉強をしていく前の段階で、知識のベースに《地政学》があればいいなと思っています」(坪井さん)

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次回は、「みんなで仲良くできたら理想的なのに、どうして世界では戦争が起こってしまうのか」を、地政学の視点から考えます。

船橋洋一(ふなばし・よういち)
1968年、朝日新聞社入社。2007年6月から2010年12月まで朝日新聞社主筆。現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバー。2011年9月に日本再建イニシアティブを設立。2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。『こども地政学』(カンゼン刊)では、監修を務める。

坪井義哉(つぼい・よしや)
2001年、出版社・株式会社カンゼン創業に合わせて、出版部編集長に就任。2008年同社取締役就任。2013年より現在の専務取締役に。編集者として担当する書籍は『こどもSDGs』『こども統計学』『こども地政学』『こどもロジカル思考』『こども倫理学』(バウンド著)などの「こどもシリーズ」ほか多数。

取材・文/遠藤るりこ

2021年3月に出版された『こども地政学 なぜ地政学が必要なのかがわかる本』(カンゼン刊)。グローバル化の時代、世界を正しく見る教養として、地政学をわかりやすく解説しています。第1作の『こどもSDGs なぜSDGsが必要なのかがわかる本』(15刷・12万7000部)をはじめ、「こどもシリーズ」は、9タイトル。シリーズ累計25万2000部売れている人気作だ。
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ふなばし よういち

船橋 洋一

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長

1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年6月から2010年12月まで朝日新聞社主筆。 米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975~76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005~06年)。 2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。 2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。 『こども地政学』(カンゼン刊)では、監修を務める。

1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年6月から2010年12月まで朝日新聞社主筆。 米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975~76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005~06年)。 2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。 2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。 『こども地政学』(カンゼン刊)では、監修を務める。

つぼい よしや

坪井 義哉

カンゼン専務取締役

1972年生まれ。明治学院大学法学部政治学科卒業後、日本エディタースクール昼間部一年制卒業。 1996年より編集プロダクション・株式会社レッカ社にて、雑誌、書籍の編集業務に携わる。2001年、出版社・株式会社カンゼン創業に合わせて、出版部編集長に就任。2008年同社取締役就任。2013年より現在の専務取締役に。 編集者として担当する書籍は『こどもSDGs』『こども統計学』『こども地政学』『こどもロジカル思考』『こども倫理学』(バウンド著)などのこどもシリーズほか多数。 kanzen.jp Twitter @KANZEN_pub

1972年生まれ。明治学院大学法学部政治学科卒業後、日本エディタースクール昼間部一年制卒業。 1996年より編集プロダクション・株式会社レッカ社にて、雑誌、書籍の編集業務に携わる。2001年、出版社・株式会社カンゼン創業に合わせて、出版部編集長に就任。2008年同社取締役就任。2013年より現在の専務取締役に。 編集者として担当する書籍は『こどもSDGs』『こども統計学』『こども地政学』『こどもロジカル思考』『こども倫理学』(バウンド著)などのこどもシリーズほか多数。 kanzen.jp Twitter @KANZEN_pub

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe