講談社児童文学新人賞を受賞したデビュー作『ルドルフとイッパイアッテナ』がシリーズ累計100万部超、幼年童話「おばけずかん」シリーズは累計200万部超。
2026年で作家デビュー40周年となる児童文学作家・斉藤洋(さいとう・ひろし)先生が、初めて「文章の書き方」を指南する著書『人生がちょっとよくなる文章術』が刊行されました。この記事では、本書の中の一部を抜粋し、「どんな人でも原稿用紙5枚分の文章がかける方法」についてお伝えします。
『人生がちょっとよくなる文章術』
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近くにある物をひとつ書いてみる
まず、心に浮かんだ物や事を、単語ひとつでいいから、書いてみましょう。
ううん、何も思いつかない……。でも、だいじょうぶ。何も思いつかないのがふつうなのです。
「今、すぐ思いついたことをいってください。」という問いに、「中央本線で特急として使われているE353系の列車!」と答えられたら、もう、どうしていいかわからなくなります。
でも、一、二秒か、それ以上待って、思いついたことがあれば、それを紙に書いてください。
しかし、もっと待っても、思いつかなかったら? だいじょうぶ! そういうかたにも、方法があります。
今、筆記用具を持っている手、または、筆記用具を持っていなければ、利き手の人差し指といちばん距離が近いものはなんですか? あなたが、茫漠(ぼうばく)とした宇宙空間に、ひとりでただよっているのでなければ、何か物があるはずです。
たとえば、スマホがあったら、
〈スマホ〉
と書きましょう。
もし、あなたが茫漠とした宇宙空間に、ひとりでただよっているとしたら、物はないから書けません。それなら……。
〈おお、茫漠とした宇宙空間よ!〉
とか。ここで、ちょっと横道にそれますが、ただ、
〈宇宙空間〉
と四文字で書いたのと、〈おお〉や〈茫漠とした〉をつけたのと、〈よ〉をつけたのと、〈!〉をつけたのでは、全然ちがうのです。
〈茫漠とした〉をつけたなら、主観が入り、〈おお〉をつければ、感情的に何か動くことがあったということです。〈よ〉は、呼びかける気持ちがあり、〈!〉は強い気持ちのあらわれなのです。
この〈おお、茫漠とした宇宙空間よ!〉と書いた人は、けっこう文章を書くのが好きな人でしょうから、この本で学べたり、楽しめたりすることはもうないと思います。卒業ですね。
そこで、話をもどしましょう。たとえば、
〈スマホ〉
と書いたとして、それを例にして、話を進めます。
それは、どんな「スマホ」?
さて、そのスマホですが、それがどういうスマホか考えてください。そして、そのスマホの前に、思いついた言葉をつけてみてください。たとえば、〈わたしの〉とか、〈古い〉とかです。ひとつかふたつは思いつきませんか。
そうしたら、次にそのスマホがどこにあるかを書いてください。机の前にあなたがいるとすれば、スマホは机の上にありますよね。すると、文章はこうなります。
〈わたしの古いスマホが机の上にある。〉
おっ、ここで次の単語、机が出てきました。そこで、うかがいますが、それはどんな机ですか? 〈木でできている〉とか〈スチール製の〉とか、〈ひきだしがある〉とか〈ひきだしがない〉とか、そういうことです。
たとえば、それが〈スチール製の〉で〈ひきだしがない〉机だとします。すると、文章は、
〈わたしの古いスマホが机の上にある。机はスチール製で、ひきだしがない。〉
になります。
さて、ここで、わたしたちの目的を思い出しましょう。
まずひとつ。「書くことがない」は、〈スマホ〉と書いた段階で、その問題はクリアできていますが、じつは、長く、原稿用紙五枚くらい、楽しく書くということが目的でした。

















































































