子どものウソは親のウソや叱り方が原因? ウソを減らす3つの方法を公認心理師が伝授
公認心理師・佐藤めぐみさんに聞く、「子どものウソ」の対応の仕方 #3 ウソをつかないようにする3つの方法
2022.10.08
公認心理師:佐藤 めぐみ
今まで2回にわたって、子どものウソは自己防衛が特徴である、というお話をしてきました。子どもは、とても狭い世界で生きています。特に3歳くらいまでは、家庭がほぼすべての世界で、ウソはその中での自己防衛なんですよね。
ということは、子どものウソの多くの場合、親の誘発も多いということが考えられます。子どもは親から身を守るための自己防衛のウソをついているのです。
例えばこんなシーン。子どもが壁やテーブルに落書きしていたとき、お母さんが来ました。「誰がやったの!?」と、すごい勢いで聞いてしまうと、つい「僕はやってない!」となってしまいます。
責任追及で、子どもを問い詰めてしまうときの言葉の強さや、怖い表情、勢いはしっかり伝わりますから、子どもにしてみればそれはとても怖いもの。逃げたいという心理が働き、自己防衛となるウソが生まれるわけです。
そのため、自分を守るためのウソに逃げてしまう。これが多いパターンだと思います。
さて、ここで何が大事かというと、犯人探しが目的ではなく、落書きを壁にしてはいけないということを学ばせることです。
親御さんは、子どもが犯人と頭でわかっていても、「誰がやったの!?」と、つい言ってしまうところをぐっと我慢してください。親が強く責めることで、子どもはウソへ逃げやすくなってしまうからです。
他にも、床におもちゃや、絵本が足の踏み場もないほど散らかっていたら、「誰が散らかしたの!」と言うのではなく、まずは一緒に片付けましょう。
いたずら書きをしていたら、一緒に拭き掃除を。犯人探しの言葉で責めることから始めるのではなく、親御さんが子どもと一緒に行動を起こすことが大切です。
ウソをつくことで自分を守れることを経験で学んでしまうと、ウソへのハードルは低くなるものです。小さいころは親の叱責から自分を守っていましたが、大きくなると、それが先生だったり、上司だったり、要は自分の目上の人から身を守る手段として用いられることもあるでしょう。
強い圧力をかけることが、ウソの回数を増やしてしまうし、それに晒されること自体が、ウソに馴染んでしまうことにつながる。子どものときこそ、親の行動の仕方ひとつでウソは減らせるのです。
絵本の力も偉大 子どものウソを減らす2つめの方法
2つめのウソを減らす方法は、ウソをつかれたとき、直球で言い聞かせようとしないというもの。
たいていの大人は、「ウソをついちゃダメだよ」、「ウソは泥棒の始まりだよ」と、「ウソがいけない」ということを直球で教えようとします。ですが、実際にはそれを頭でわかっていてもついてしまうのがウソ。ですから実際には、この言い方にあまり効果はありません。では、どうすればというと、ひとつ面白い研究を例にお話ししたいと思います。
カナダの大学で、3歳から7歳の子を対象に、どんなことをすると、ウソが減るかという実験が行われました。
まず実験者(大人)のいる部屋に、子どもを1人ずつ呼びます。実験者は、「私が戻るまで、ここのおもちゃを覗かないでね」と、おもちゃがある位置を示しながら部屋を出ていきます。
「覗かないで」と言われると、覗きたくなることを「カリギュラ効果」というのですが、この実験で大半の子たちがおもちゃを覗いていました。
ただ、その場で「覗いてしまったかどうか」は聞きません。というのも、聞く前にワンステップあり、子どもたちを4つのグループに分け、グループごとに違う本を読み聞かせていたのです。
1つめのグループは、「ウサギとかめ」。うさぎが昼寝して亀が先にゴールする、あのお話です。
2つめのグループは「狼少年」。ウソを繰り返して、誰も自分の言うことを信じてくれなくなって、最後には痛い目に遭うというお話です。
3つめのグループは、「ピノキオ」。ウソをつくと、ピノキオの鼻が伸びるお話ですね。
4つめのグループは、「ジョージ少年と桜の木」。これは、お父さんが大事にしていた桜の木を切り倒してしまったジョージ少年。しかし、それをお父さんに告白すると、「木を切り倒したことよりも、正直にそれを言ってくれたことを褒めた」という物語です。
すると、4つめの「ジョージ少年と桜の木」の話を聞いた子どもたちが、「実はおもちゃを覗いちゃった」と、認める子が圧倒的に多かったといいます。他の物語を聞いた子どもたちと比べると、その差は3倍ほどもありました。
これは、最初にお話しした、「直球で言い聞かせようとしない」ということにつながっていきます。「ウソはダメだ」とか、「泥棒の始まりだ」という言い方ではなく、「何が正しいのか」という部分の教えが、子どもたちには一番伝わりやすく、大事なのだと思わされる結果でした。
親が「〜してほしくない」と思うときは、それ自体をストップさせる直接的な言葉をかけます。しかし、その行動をやめた後、どこへ導いていきたいのかというのが不明確なことが多く、ただ「やめよう」というよりも、より自分が導いてあげたい方向の話をしてあげると、よいというのがこの実験結果からわかりました。
また、この実験の結果を見ると、「~すると痛い目に遭うよ」というのではなく、「いいことをすると、いいことが起こるよ」というポジティブ×ポジティブの展開のほうがよいということもわかります。