「感受性」が強い 「注意力」の範囲が狭い 特性のある子の小学校生活の注意点を専門家が指摘

感受性と注意力で読み解く子どもの「困った」行動#3 学校生活への影響

小学校生活 注意力が狭いとどうなる?

第1回、第2回で紹介した幼児期の保護者の悩み(「寝つきが悪い」や「自分でできない」)は、成長とともに解決していくことがほとんどです。しかし、感受性の敏感度、注意力の範囲によっては、小学校入学後に困りごとが増えることもあります。

特に注意力の狭い子にとって、小学校の授業や活動はハードルが高く感じることが多いようです。

たとえば、小学校低学年の図工の授業では、絵の具でぶどうの絵を描く際に、先生がこのような指示を出したとしましょう。

──ロッカーから絵の具セットを持ってきて、パレットを出しましょう。パレットを出した人は、赤と青の絵の具を米粒ぐらいのせてくださいね。そのあと水道に行って水差しに水を入れます。そこまでできたら、先生のところに画用紙を取りに来てください。

「注意力の狭い子にとっては、とんでもなく難しいことです。5つのことを、一気に覚えてこなさなくてはならないわけですから。何の準備もしないまま最初に画用紙を取りに行ってしまう、水を入れに行ったまま隣のクラスの授業が気になって戻ってこない、水道で勢いよく水を出してびしょ濡れになってしまう……。こんなことがいくらでも起こります。

もちろん、子どもは怠けているわけでも適当にやっているわけでもありません。頑張ってもうまくできない状態で、本人はすごく困っているんです」(野藤氏)

また、持ち物や提出物なども、問題になりやすいことの一つです。教科書やノートを紛失する、忘れ物が多い、プリントを出さない(持って帰ってこない)などが頻繁に起こることも……。

「配布されたプリントを持ち帰ってくるというのは、保護者にしてみたらすごく簡単なことですが、これが思うようにできない子はたくさんいます。

前の子からプリントを受け取り、うしろの子に渡そうと紙をとり、残りをまとめ、ふり向いて手渡そうとしている間に『では教科書を出して』などと先生から声がかかると、焦って引き出しの奥にプリントを突っ込んでそのまま忘れて帰宅する……。子どもは必死に言われたことをやっていますが、先生にも保護者にも怒られてばかりになります。

注意力が限定的な子は、低学年では特に『うまくいかないこと』に囲まれながら生活している状態です」(野藤氏)

「小学生だから自分でできるでしょ」はNG

このように、子どもが小学校生活で小さなつまずきを抱えた場合、保護者はどうしたらよいのでしょうか。

小学生になったからといって、『自分のことは自分で』と突き放すのではなく、幼児期と同様に一緒にやる、支援することが基本です。

『学校の支度』というひと言の中にも、ランドセルのものを全部出す、時間割りを見ながら必要なものを用意して入れる、持ち帰ったプリントを保護者に渡す、などいろいろな要素が含まれています。こうした一連の作業を声をかけながら一緒に行い、その子の習慣になるまでサポートを続けてください。

今、この子はどこまでなら自分一人でできそうなのか、どんな状況だと忘れてしまうのか、手伝いながら把握して、少しずつ本人ができることを増やしていくとよいでしょう」(野藤氏)

また、学校でできなかったことや失敗に直面したとき、保護者がすべきはそれを責めることではなく、「必ず取り戻せると教えること」だと野藤氏は強調します。

「プリントを持ち帰れなかったら、次の日に持って帰ってこられるよう、その方法を一緒に考える。自分だけでは忘れてしまうなら、先生に連絡して支援してもらうなど、やり方はいろいろあります。失敗を失敗のまま終わらせず、『こうすれば大丈夫』という自分に起こった問題を解決する経験を積み上げていくことが大切です。

失敗を𠮟り続けると、子どもはそれ自体を隠したり過度に言い訳したりするようになります。それでは、本人はずっと困ったままです。でも、失敗したら素直に認め、取り戻すための行動をすればよいのだとわかれば、ゆくゆくは自分で問題を対処したり解決したりできるようになります」(野藤)

注意力の範囲が狭い子は、先生や友達からイライラされることも多く、自信をなくしやすいといいます。「だからこそ、保護者は否定するのではなく、失敗してもそれを取り返して、自分に安心をもたらすことがきるのだと示してあげてください」と野藤氏は力を込めて語ります。

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