先生とトラブル続き! 万年反抗期の子どもを夢に導く「個性を引き上げる」声がけとは
【コーチング子育て】子どもの個性を見抜き、教えずに導く方法 #2
2023.02.28
SoZo株式会社 代表取締役:あつみ ゆりか
#1の記事を読んでいただいた方の中には、「長女が素直だからコーチングが機能しただけなんじゃない?」と思われる方も多いかもしれません。しかし、我が家は長女の他にも今回の主役の万年反抗期の次女、そして偏向型ギフテッド(国語が全くできず、数学のIQがすごく高い)の長男、というバラエティ豊かな子どもたちがいます。
中学受験の塾から脱走! 受験をやめて手に入れたこと
次女は、小さいころからとにかく大人と喧嘩してきた子でした。3歳のころ、父親に階段で「待ってー」と繰り返し言っても、ちょっとずつ上の段に行ってしまうのに対して「待つっていうのは、ココで待つんだよ!!!!」と怒鳴る(笑)。
小学校の学童の先生には「学童以外の子はブランコに乗ってるのに、私たちはなぜいけないのか?」と反抗する。「危ないから」という先生に「学童の子のほうが、先生がそばで見てるから危なくないじゃないか!」と正論を言い、喧嘩になる。ある意味、本質的で論理的な思考ができる分、大人の矛盾を絶妙についてくる子でした。
そんな次女は、のちに自分で希望したはずの中学受験の塾から脱走するようになります。理由は「目指したい明確な理由がないから」。遊ぶ時間を削ってまで目指すには塾が厳しすぎるし、勉強はそもそも好きではないんだ、と言うのです。
結果として、次女は受験をやめます。そのときの会話を少しだけご紹介します。
母あつみ「小学校の先生とケンカ多かったじゃん」
次女「うん」
母あつみ「公立の学校って転勤あるから、どの先生に教えてもらえるかはロシアンルーレットみたいなもんだと思うんだ。でも私立は学校長のリーダーシップによって決まった方針があるから、相性の合う学校だと、そういうこと減ると思ったんだよ?」
次女「そんなに上手くいくか、わかんないじゃん! そんな不確かなことに頑張れない!!」
母あつみ「そうね、でも確率論としてはやっぱりあると思う。でもね。やめていいよ。その代わり、そのリスクを背負って公立中学を“自分で選んだ”ということは忘れないでほしい」
次女「別に選んでないし」
母あつみ「ううん、選んだんだよ。止めるってことを決めるって、同時に公立に行くってことを選んだってことだよ。そのことは忘れないでほしい」
次女「…………」
この「自分で選択した」経験こそが、次女にとって、意義深いものとなりました。
「目標仮置き力」が高い子と「厳密性」を求める子
子育てコーチングの第一歩は「目標設定」です。長女はすんなり「Googleで働く→早稲田大学→高校での選抜留学」という目標が決まりました。しかし、万年反抗期の次女は当然ながら一筋縄ではいきません。中学になってからも「夢なんてない」「勉強が嫌い」というネガティブなことは口を突いて出てきても、ポジティブな夢に思いを馳せられませんでした。
そんな次女には、彼女自身が行き詰まった瞬間に思考を広げる声がけを実践しました。例えば「先生の授業の進め方がおかしい!」と家で愚痴っているとき。単なる愚痴と思わないで、その内容をしっかり紐解いてみると、確かに筋が通っていることもある。そこで、
「あなたは本質的な思考ができるね。リーダーに向いているかもしれないね」
「日本の教育システムはあなたには合わないかもね。海外はもっとディスカッションベースの教育だよね」
など、今かかえている不満をポジティブな思考に転換する声掛けをします。その上で「でも、あなたがこの環境を選んだんだからね?」とも言う。
次女「仕方ないじゃん(不機嫌)」
母あつみ「だからこそ高校の選択が重要だよ」
このように、長期戦のつもりで夢に思いをはせる頻度を高めていきます。結果、中3のころには「1年留学に行くことがカリキュラムに組み込まれている高校に行きたい」という目標を描けるようになりました。
「目標の仮置き力」でアプローチを変えてみよう
目標設定は、長女のようにすぐに決まる子もいますが、次女のように数年がかりになるパターンもある。この差がなぜ生まれるかと言えば、私は「目標の仮置き力」だと思ってるんです。
長女はこの「仮置き力」が高い。「その方向に自分の興味がありそうだ。だったらそっちに走ってみようかな?」という思考ができるんですね。
一方、次女は思考が深い分、それができない。夢においてもつい完璧なものを求めてしまう。それは自分が本当に目指したいものなのか? それに心から納得しないと動けないんです。
親サイドはイライラしてしまいがちですが、これは能力の優劣ではなく個性と考えましょう。次女のような子はいったん決めたらその胆力はスゴイですし、潜在能力も高い傾向があります。
偏差値教育や受験社会に身を置いていると、親はどうしても「できる」「できない」や「言うことを聞く」「聞かない」など目の前の事象で優劣を判断しがちです。しかし、それでは子どもとの信頼関係は結べません。
コミュニケーションが難しいと言われる思春期だからこそ、親も数年がかりで子どもの可能性と寄り添う大きな心と覚悟が重要でしょう。