子どもが伸びる親の共通点 「待ち上手」な親になる「5つのステップ」を「先生の先生」が伝授

【子どもの才能を伸ばす「待ち上手」な親 #2】「待ち上手」には5つのステップがある

元公立小学校指導教諭、ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員:庄子 寛之

親子の間で横の関係が築けると「教えよう」プレッシャーから解放される!?

「『自分を整える』ことができて、『ただ見る』こともクリアできたら、次は『我が子から学ぶ』段階です。

これは親が子どもに一方的にすべてのことを教えるのではなく、ともに成長していこうという視点を持つことを指します。

親と子どもは、どうしても縦の関係になりがちです。上下関係は上からものを教えることになり、これを繰り返していくと子どものうちは一時的にいうことを聞くものの、大きくなるにしたがって耳を傾けなくなります。

そのため、ここで大切なことは『横の関係』を築くことです。

子育てを頑張っている親御さんほど親子間は距離が近くなりすぎる傾向にあるので、あえて物理的に距離をとってみましょう。そして、自分の常識に当てはめずに子どものやっていることを見て、素直に認めてあげてください。

子どもが取り組んでいることを面白がって受け入れることが、横の関係を築いていくきっかけになるはずです」(庄子先生)

たとえば子どもが石に興味があった場合、「石ばかり集めていていないで勉強しなさい!」というのはNG発言です。子どもは奇想天外なことに興味を持つこともありますが、石集めが将来の大発見につながったり、ビジネスチャンスを生む可能性もあります。

我が子を石の先生や研究者だと思って接してみると、お互いの関係が変わってくるでしょう。子どもから教えられることも多くあって親の知識が増えることがある一方、子どもは自分の好きなことに親が興味を持ってくれたことをうれしいと思うはずです。

同じ目線で話し合える関係は、人と人の関係に発展していきます。横の関係をつくることは、子育てをするうえで最も重要で難しいことですが、その目線ができれば、我が子のいいところがもっと見えてくるでしょう。

我が子を何かしらの先生だと思って接すると、親子関係が変わってきます。  写真:アフロ

親が上から目線になりそうになったら……

横の関係を意識しても、そもそも親子では経験年数が違うため、親は上から目線に戻ってしまいそうです。そんなときは……。

「子どもとの関係が上下になりそうなら、『もうちょっと教えて』と我が子に伝えてみましょう。あるいは『やり方を教えてくれる?』も良さそうです。

自然と横のつながりをつくって、かつ面白がっていることを伝えられる言葉ですから、これを聞いた子どもははりきって教えてくれますし、自分自身が肯定されたとも感じます。

また、子どもが教えてくれたことを親が試したら、感想を伝えることも大切です。試したことがゲームだとしても、『思ったよりも難しいんだね』『ボスを倒すには計算もしなきゃいけないんだ』など、素直な感想を伝えて、横の意識を親御さんの中に育ててください」(庄子先生)

横の関係でメッセージを伝えることのメリット

子どもをコントロールするように上から言い聞かせるのではなく、横の関係でメッセージを伝えると子どもは次第に約束を守れるようになってくると庄子先生はいいます。

「たとえばゲームをするときのルール決めも横の関係で決めることが大切です。ここで上下関係を使って『30分を超えたら、次の日はゲーム禁止!』などと言い聞かせても、上手にはやめられないでしょう。

こういった場合は『ゲームのやりすぎは良くないとお母さんは思う。あなたはどう思う? 1日何分にするか一緒に考えて決めよう』という具合で決めます。

そして、子どもがちゃんと時間どおりにやめることできたなら、『時間を守ってやめることができてすごいね。お母さんはなかなかできなかったから、本当に偉いと思うよ。これからも続けてね』と子どもができたことを言葉で伝えてあげてください」(庄子先生)

親はできることが当たり前だと思って声をかけないことがありますが、ここで丁寧に行いを伝えてあげることが大切です。フィードバックが自然と約束を守る子どもを育んでいきます。


連載第3回は、待ち上手な親になるためのステップ「(4)伝える」「(5)寄り添う」を解説し、子育てど真ん中にいる親御さんに向けて庄子先生のメッセージを紹介します。

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◆庄子 寛之(しょうじ ひろゆき)
元公立小学校指導教諭、ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員。
大学院にて臨床心理学科を修了し、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。これまでに担任した児童は500人以上。「先生の先生」として教育関係者だけでなく、企業や保護者向けに、2年間で44都道府県での研修・講演を行う。元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U‐21日本代表監督としてアジア大会優勝。2019年、U‐19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)、『教師のための𠮟らない技術』『withコロナ時代の授業のあり方』(ともに明治図書出版)、『子どもがつながる! オンライン学級あそび』(学陽書房)など多数。

『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』 庄子寛之/著 青春出版社
伸びる子どもの親の共通点は「待ち上手」なこと! 待ち上手になるための5つのステップを詳しく紹介しています。

取材・文/梶原知恵

【親が「待ち上手」であることが子どもの才能を伸ばす】の連載は、全3回。
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※公開日までリンク無効

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しょうじ ひろゆき

庄子 寛之

元公立小学校指導教諭・ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員

元公立小学校指導教諭 ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員 大学院にて臨床心理学科を修了し、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。これまでに担任した児童は500人以上。「先生の先生」として教育関係者だけでなく、企業や保護者向けに、2年間で44都道府県での研修・講演を行う。 元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U‐21日本代表監督としてアジア大会優勝。2019年、U‐19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。 著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)、『教師のための𠮟らない技術』『withコロナ時代の授業のあり方』(ともに明治図書出版)、『子どもがつながる! オンライン学級あそび』(学陽書房)など多数。

元公立小学校指導教諭 ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員 大学院にて臨床心理学科を修了し、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。これまでに担任した児童は500人以上。「先生の先生」として教育関係者だけでなく、企業や保護者向けに、2年間で44都道府県での研修・講演を行う。 元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U‐21日本代表監督としてアジア大会優勝。2019年、U‐19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。 著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)、『教師のための𠮟らない技術』『withコロナ時代の授業のあり方』(ともに明治図書出版)、『子どもがつながる! オンライン学級あそび』(学陽書房)など多数。

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。