当事者が語る「きょうだい児」が抱える〈生きづらさの正体〉とは?

重度知的障害・自閉症・強度行動障害の弟をケアし続けた当事者が語る「きょうだい児の現実」(1)

平岡 葵

著者近影(撮影:講談社児童図書出版部)

病気や障害など、配慮や支援を必要とするきょうだいをもつ、「きょうだい児」。寂しさや孤立感、自己肯定感の低下などを抱えやすいと言われています。

平岡葵さんは、X(旧Twitter)や関連団体を通じてきょうだい児と交流し、悩みやつらさに寄り添ってきました。自身も重度知的障害・自閉症・強度行動障害の弟をもつきょうだい児(者)です。

前編では、2024年8月に出版された平岡さんの著書『きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記 カルト宗教にハマった毒親と障害を持つ弟に翻弄された私の40年にわたる闘いの記録』から、子ども時代を精一杯生き抜いてきた平岡さんの半生をたどります。

自閉症の弟に言葉や数、交通ルールを教えた幼少時代

──平岡さんは、どのような「きょうだい児」だったのでしょうか。

平岡葵さん(以下、平岡さん)
1歳年下の弟(1979年生まれ)が、重度知的障害と自閉症、強度行動障害をもって生まれてきました。

障害をもつ子への療育的なアプローチが、現代と比べるとまだ発展途上だったころです。私自身も小さかったのですが、「弟を少しでも、ひとりで生きられるようにしたい」と考え、道路の渡り方から言葉、数、そして嫌なときの拒否の仕方などを一生懸命教えました。

両親はカルト宗教に入信し、修行漬けの日々。弟のケアのほとんどを担っていたのは私でした。入浴・トイレ介助はお互いが思春期になっても続き、きつかったですね。「この子は、まだ自分でトイレにも行けないんだ」と悲しくなりました。

高校生になっても1歳下の弟の介助をせざるを得ない日々(『きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記』より)

弟は強度行動障害ももっていたので、時には殴られて鼓膜が破れたこともあります。

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