発達障害・発達特性のある子の【トイレトレーニング】の方法を「療育の専門家」が解説

#7 トイレトレーニングはどうする?〔言語聴覚士/社会福祉士:原哲也先生からの回答〕

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

写真:アフロ(イメージ写真)

発達障害や発達特性のあるお子さんの保護者の方からのご相談に、言語聴覚士・社会福祉士であり、発達障害のお子さんの療育とご家族の支援に長く携わってきた原哲也先生がお答えします。

お子さんとの生活が楽しくなり、保護者の方の負担が軽くなるような実践的なアドバイスをお伝えしていきます。第7回は、こちらのご相談です。

トイレに行くのを嫌がり、なかなかオムツが取れません。何かよい方法はないでしょうか?

【発達障害・発達特性のある子のお悩みに専門家が回答】これまでの回を読む
第1回 発達障害かどうか気になります
第2回 2歳ですが言葉が遅く心配
第3回 偏食がひどくて困っています
第4回 子どもが真夜中まで起きている
第5回 「こだわり行動」とは? 種類・原因・対応
第6回 医療機関を受診する目安

今回はトイレトレーニングについてのご質問を取り上げます。

まず初めに一般的なトイレトレーニングについてお話しし、そのあとに発達障害の特性のある子のトイレトレーニングについて説明したいと思います。

トイレトレーニングはいつから?

トイレトレーニング開始時期は子どもによってまちまちです。1歳~3歳6ヵ月には約85%が開始するというデータがありますが、いずれにしろ個人差が大きいのです。完了は平均3~4歳とされますが、これも個人差があります。

トイレトレーニングにあたっては「個人差が大きい」ことを頭において、その子の発達に応じた対応をすることが大事です。

トイレトレーニングの開始の目安

トイレトレーニングの開始の目安は次のとおりです。

① トイレまで移動し、補助便座やおまるに座れる
② 昼間の排尿間隔が2時間~2時間30分以上
③ 尿意、便意を感じることができる
④ 簡単なことばでの指示が理解できる
⑤ 表情や身振り、ことばで尿意や便意を伝えられる
⑥ 自分である程度、衣類の着脱ができる
⑦ 大人のまねができる

大脳皮質の発達がカギ

①~⑦がそろったらトイレトレーニングを始めてみましょう。逆に、そろっていなければ、トイレトレーニングは少し待ったほうがいいでしょう。

トイレで排尿するには、①膀胱に尿がたまったと感じる→②漏らさないように我慢する→③トイレに行って排尿する、必要があります。それができるには、大脳皮質がある程度まで発達していなくてはなりません。

そしてそれは、歩く、座るなどの動作がスムーズにできる、かつ、ことばを理解し、片言でも話し始める時期と重なります。

トイレトレーニングでは、

 ●「おしっこ行こう」「うんち出た?」など、大人がことばで働きかける

 ●子どもが「おしっこ」と言ったり、「おしっこが出た」ことを股をトントンするなどの身振りで知らせる

ことが必要です。

ですから、まずは移動、座位が取れる、ことばの理解、ことばや動作でのコミュニケーションができることを確かめます。それらができるなら大脳皮質がトイレトレーニングが可能な程度にまで発達している、すなわち「準備完了!」です。

反対にこれらが不十分ならば、大脳皮質がまだ十分には発達していないので、トレーニングを始めるには早いということです。始めるのが早すぎるとトレーニングがなかなか進みませんし、失敗が多くて𠮟ることにもなり、親子双方にとってストレスになります。時期を見極めることが大切です。

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