0歳児をコートに隠しR‐1へ出たママ芸人・竹田こもちこんぶがTikTokでバズるまで
4男児のママ芸人・竹田こもちこんぶインタビュー#3 「ママ芸人の挑戦」
2023.07.03
芸人:竹田 こもちこんぶ
飾らない、ありのままをさらけ出す子育てネタが共感を呼ぶ静岡在住のママ芸人、竹田こもちこんぶさん(45)。舞台俳優出身の演技力と、等身大の子育て話は、笑いだけでなく、ときには母親たちの涙も誘います。
「ひとりじゃないよ、幸せが孤独に飲まれそうな夜があるのは」と訴えかけるTikTokのコメント欄には「涙が出た」「じーんと、来ました」などの言葉が並びます。
4兄弟に囲まれ、てんてこ舞いな日々を過ごす母親歴9年の竹田さん。子育て一筋の“幸せが孤独に飲まれそうな夜”から、いかにして自己表現の場を見付けたのでしょうか。その軌跡を辿りました。
竹田こもちこんぶPROFILE
大学在学中から演劇を始め、闘病を機に舞台俳優・芸人に。劇団仲間の夫と結婚、2014年に第1子出産後、夫の故郷である静岡県富士市へ移住。笑いと涙を誘うTikTokの投稿は、子育て世代の大きな反響を呼びフォロワーは約33万人(2023年6月現在)に。
生後11ヵ月の長男と出場した『R‐1グランプリ』予選舞台
千葉県出身の竹田こもちこんぶさん(45)は、9、6、4、2歳の4人の男の子を育て、今年(2023年)9月には第5子を出産予定です。大学生のころから演劇の世界に入り、社会人になってからも舞台俳優、そして芸人として活動していました。
やがて劇団仲間だった夫と結婚。出産、地方への移住という人生のイベントも到来し、舞台からは距離を置くように。
しかし自己表現できないモヤモヤは消えず、頭に浮かんだのが子連れでの再挑戦でした。長男が生まれた2014年の年末、乳飲み子を抱えて『R‐1グランプリ』(カンテレ・フジテレビ系)に挑んだのです。
竹田こもちこんぶさん(以下、竹田さん):「夫は子どもが生まれたあとも、週末は劇団の活動を続けていました。私が中断して、夫だけは続けている。『なんでお前だけ……』という悔しい思いはありました。
私はというと、子どもが生まれて静岡にいるので、なかなか活動を続けることは難しい。どうやって決着をつけようかと思ったとき、頭に浮かんだのが『R‐1グランプリ』(以下R‐1)でした。
R‐1は年にたった1回、たった1日だけの2分間の舞台です。これなら私もできるって思ったんです。『1日だけ夫に預けて出ればいい』と思っていました」
本番へ向けて調整を始めた竹田さん。ところが練習ができない現実にぶつかり、自身が投稿したように“幸せが孤独に飲まれそうな夜”を知ることとなります。
竹田さん:「どうにもこうにも練習ができないんです。子どもが泣くんです。お母さんになって自由じゃなくなったことがすごく悔しくて。
ほかの芸人は自由の身で、たくさん練習して舞台へ上がっていく。でも私は練習すらできない。その舞台に自分が並んでも勝てないと思いました。
でもふと、『いっそのこと子どもを抱っこして舞台へ出て、ネタも子育て話にすれば成立するんじゃないか』って思ったんです。不自由な身を逆手にとって、舞台に上がってやろうじゃないか! とやけくそになりました。
でもR‐1はピン(一人)芸人の大会ですから、断られる可能性もあります。『あなたはピンじゃなくて、(抱っこしている息子と)2人でしょ』って言われちゃったらアウト。そうなる覚悟もしていた上で、それでも挑戦してみようと思いました」
2014年冬、いよいよ子連れで名古屋のR‐1グランプリ予選会場へ。一人で出場する大会に子連れは大丈夫なのか。大きな不安と断られる覚悟を抱いて会場へ向かいました。
竹田さん:「生後11ヵ月の長男を抱いて、大冒険の気分で新幹線に乗りました。子連れで会場に入ることさえ許されなかったら、『あとで夫が迎えに来ます』ってとりあえず言ってみようかな、とか考えながら。
でも結局、長男は会場に着く前に抱っこ紐の中で寝たんです。だからコートで子どもを隠して中に入りました(笑)。周りの芸人たちが奇抜な格好で来るので、ふくらんだコートでもあんまり目立たなかったんだと思います」
芸人たちがひしめき合うR‐1の予選会場の舞台裏。子どもを抱いたまま出番を待つ緊張の竹田さんに、さらなる緊張が襲いかかります。
竹田さん:「とうとう子どもが泣き出してしまったんです。周りの人は『おぉ~なにコイツ!?』『コートの中になに持ってんの?』みたいな雰囲気になりましたね(笑)。コートの中に小道具か何か隠し持っていると思ったらヒトだった! って。
舞台上のジャマはできないから声を出しちゃうとまずいと思って、とりあえず抱っこ紐から下ろし、あやしてごまかしながら出番を待ちました。
無事に子どもを抱いてそのまま舞台に上がりました。子育てをしているから『竹田こもちこんぶ』。そのときに付けた名前です。
R‐1は、長男・次男・三男、3人それぞれ抱っこして出場しました。四男だけコロナ禍で県外に連れ出せず、実現できませんでしたが。
三男を抱っこして出た2020年1月のR‐1予選では、ピストルネタで初めて3回戦までいったんです。3回戦というのは、芸人の中でも高いステージで、手応えもありました」