0歳児をコートに隠しR‐1へ出たママ芸人・竹田こもちこんぶがTikTokでバズるまで

4男児のママ芸人・竹田こもちこんぶインタビュー#3 「ママ芸人の挑戦」

芸人:竹田 こもちこんぶ

「TikTokのほうがバズる!」友人の助言で大ヒット

このとき、舞台を見ていた役者仲間から、竹田さんの転機となる言葉をかけられます。

竹田さん:「私のネタを見ていた劇団の友人が、『R‐1は一般のお客さんの前でやるけど、子育て中の人たちの前でやったらもっとウケるんじゃない?』ってアドバイスしてくれたんです。

自分としてもR‐1だけで終わらせるのが惜しくなっていましたから、その年の夏にインスタグラムを始めました。『家事育児おつかれさまです』というフレーズで始まる1分間動画の投稿を始めました。

すると別の子育て中の役者仲間が、『これみんなに見せたいから』と一生懸命私の投稿を拡散しようとしてくれて。でもなかなか拡散しない。するとその友人が『TikTokのほうがハマればバズるからやってみれば?』と言ってくれて。

私はTikTok=若者のダンス投稿動画、というイメージがあったのですが、開いてみたら1分間の動画でもいいことが分かり、挑戦してみました」

100、200、300、600──。流し始めると、みるみる増える再生回数。1〜2件だったコメントもどんどん増えていき、バズるように。一度バズると「おすすめ動画」に上がりやすくなり、どんどんフォロワーも増えていきました。

竹田さん:「ネタ見せの場所としていいなって思ったんです。東京の芸人たちはいろんなライブに出てネタを見せてブラッシュアップしていくんですが、ここ(静岡県)で子育てしながら練習して、どこかでネタ見せするというのは物理的にできない。だからTikTokは『ちょうどいい場所を見つけた!』と思いました。

バズると一日何百人という人がフォローしていく。それがおもしろくて。パチンコがじゃんじゃん出る感覚と同じだと思います(笑)。当時はゲーム感覚で毎日投稿していました。

最初のころは昔のネタも投稿していたんですが、そのうちネタが尽きてしまって……。でも私は子育てしかしていない。だから子育ての話をするしかなかったんです」

自己表現を手に入れた竹田さん。子育てにも変化があったといいます。

竹田さん:「TikTokを始めてから、子育て自体のストレスが減りました。大変なことが起きても、『ネタにしちゃえ』って思えるようになり、子どもを温かく見守れるようになりました。モヤモヤした感情を逃がす場所を見つけた感覚です」

書き溜めたネタ帳には飲み物をこぼした形跡も。一冊一冊に育児の汗と涙と笑いが染み込んでいる。  写真:宮内誠理
すべての画像を見る(全5枚)

編集も妥協もしない演出は舞台俳優出身のこだわり

時間がない中でのネタ作り。自宅で撮影しているとはいえ、舞台出身の竹田さんが仕込む1つのネタには、かなりの手間と時間がかけられています。今もネタ帳は紙のノート。時間を見つけては鉛筆で書き込みます。

竹田さん:「早いときはサクッとできちゃうこともあるんですが、3分程度の長めのネタは、練習にも撮影にもかなり時間がかかります。数えきれないほど何テイクも撮ることも。だんだんフォロワー数が増えてくると、しっかりネタ作りするようになって、1週間くらいかかることもあります。

セリフを全部覚えて、ちょっとでも言い間違えたら撮り直し。その辺が劇団っぽくて、役者らしさが出ているんだろうなって思います。つなぎ合わせなしで全部流しているところが生の舞台っぽいですね。でも子どものお昼寝中に撮っているときは、起きちゃうとタイムアウトです(笑)」

最近は締め切りのある仕事が増えてきたという竹田さん。

竹田さん:「だからどうしても一人時間がほしいときは、日曜に子どもたちを夫に預けて、近くのファストフード店で仕事をします。そうやって無理にでも自分時間を作るしかないんです。

家にいると子どもが仕事部屋に入ってきちゃったりするので、外に出ないとダメなんですよね。そんな日々だから、最近は全然TikTokに投稿できていないんです(笑)」

───◆─◆─◆───
子育てで奪われた自由。その悔しさをバネに、TikTokという自己表現の舞台を見つけました。生活のほとんどを子育てに捧げる日常は、多くの人の笑いとなるだけでなく、励ましとなって全国へ配信されています。

次回は、寄り添う子育てが賞賛される竹田流子育てのルーツについて、お届けします。

取材・文/大楽 眞衣子

この記事の画像をもっと見る(全5枚)
14 件
たけだこもちこんぶ

竹田 こもちこんぶ

Komochikonbu Takeda
お笑い芸人

大学在学中から演劇を始め、闘病を機に舞台俳優・芸人に。劇団仲間の夫と結婚、2014年に第1子出産後、夫の故郷である静岡県富士市へ移住。産後も子どもを抱き『R‐1グランプリ』に挑戦し続ける。笑いと涙を誘うTikTokの投稿は、子育て世代の大きな反響を呼びフォロワーは約33万人(2023年6月現在)に。 2022年12月『女芸人No.1決定戦 THE W 2022』(日本テレビ系)で準決勝敗退、2023年1月には『おもしろ荘』(日本テレビ)に出演。 4男児(2014年生まれ、2017年生まれ、2019年生まれ、2021年生まれ)の母。2023年9月第5子出産予定。 TikTok @takeda_komochikonbu Instagram @takeda_komochikonbu

大学在学中から演劇を始め、闘病を機に舞台俳優・芸人に。劇団仲間の夫と結婚、2014年に第1子出産後、夫の故郷である静岡県富士市へ移住。産後も子どもを抱き『R‐1グランプリ』に挑戦し続ける。笑いと涙を誘うTikTokの投稿は、子育て世代の大きな反響を呼びフォロワーは約33万人(2023年6月現在)に。 2022年12月『女芸人No.1決定戦 THE W 2022』(日本テレビ系)で準決勝敗退、2023年1月には『おもしろ荘』(日本テレビ)に出演。 4男児(2014年生まれ、2017年生まれ、2019年生まれ、2021年生まれ)の母。2023年9月第5子出産予定。 TikTok @takeda_komochikonbu Instagram @takeda_komochikonbu

だいらく まいこ

大楽 眞衣子

社会派子育てライター

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」