子どもの考える力と伝える力「クリティカル・シンキング」を低下させる親の「NGワード」 

子どもの考える力と伝える力を育む「クリティカル・シンキング」 #2

クリティカル・シンキングを育むときに親が口にしてはいけない最悪ワード

「私が今、講演会や塾で教えているクリティカル・シンキングを育む方法は、私が娘や息子にも試して、確信を得たものを紹介しています。

特に、今はもう大学生になった第1子の長女には、クリティカル・シンキング力をつけたくていろいろ試してきました。その対話方法が時には母親っぽくなかったときさえあり、保育園の先生から『娘さんのことを大人扱いしすぎじゃないですか?』といわれたほどです。

そんな試行錯誤の日々の中で、娘が小学校3年生になったときのこと、『お母さんに〈でも〉っていわれるのが本当に嫌だった』といわれたんです。

私は『でも』を使うことで、別の意見を出してあげよう、この子の意見を磨いてあげようと思っていたのですが、その老婆心が娘を傷つけたことにようやく気づきました。

ですから、クリティカル・シンキング力を我が子に育むときは、どうか子どもの話を『へ~』と受けとめたあとに、『でも』は使わないでください

子どもにとって親は、偉い存在です。その人から『でも』という逆接の言葉を聞いたら、子どもは否定されたと思ってしまいます」(狩野先生)

最悪ワード「でも」に代わる言葉とは?

私は、『じゃあさ』や『ところで』という言葉を意識して使っています。『へ~、そんなこと思っていたんだ。じゃあさ、これはどう思うの?』という感じです」(狩野先生)

連載第1回で「ところで私、ユーチューバーのことがわからないから……」という例でも登場した「ところで」という言葉も、「でも」の代わりになると同時に、対話を発展させるワードです。また、対話を発展させる行為は、相手の話に興味を持っていることに他なりません。

「大人が子どもの話を丸ごと受けとめて、それに反応すると、『お母さん(お父さん)は自分の意見に興味を持ってくれた!』と子どもはうれしがります。

それは自分の意見に自信を持つだけでなく、伝える行為を恐れないこと、親には何を話してもいいんだという安心感にもつながるのです」(狩野先生)

日本の社会には「忖度」や「空気を読む」という文化があり、それにはメリットとデメリットの両面がありますが、少なくとも子どものうちはいいたいことを主張できる環境が重要です。

「子どもの意見の駆け込み寺になりたいと思ったのが、私がクリティカル・シンキングを教えようと思った原点です」と先生は話します。家庭でも子どもの主張の安全地帯になることがクリティカル・シンキング力を高めるポイントになるでしょう。

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