子どもだけで作った手作り屋台39店がズラリ! 2000人が集う「ゆめ横丁」で子どもが得る力とは

シリーズ「地域をつなぐ みんなで育つ」#2‐2 どろんこプレーパーク「川崎市子ども夢パーク」(神奈川県川崎市)の“こどもゆめ横丁”

ライター:太田 美由紀

「あなたにとって自由とは?」

今回の「こどもゆめ横丁」のテーマは「自由」。会場では、「あなたにとって自由とは? ぜひ教えてください」という看板を持って、子どもたちがアンケートをとっていました。

「自分らしく生きること」「自分の好きなことができること」「私が自由であることは周りもハッピーであること」「自由は人それぞれ違う」「全員が楽しめること」など、いろんな意見が記入されています。

「自分で考えて自分でやること」や、「夢パーク」と答えた人もいます。

会場には「あなたにとって自由とは?」を記入した羽根がたくさん掲示されていた。  撮影:太田美由紀

「人生って何があるかわからない。結局、自分の頭で考えて、自分で判断して行動していくしかない。自分で思ったとおりにやってみて、たとえ失敗したとしても、それを受け止めて、その失敗からしなやかに立ち上がる力がとても大事ですよね。

ゆめ横丁では二人以上で出店することが決まりです。必ず誰かと話し合い、協力して店を作り上げます。そこで、うまくいかなかったり意見が合わなかったりしたときは、対話してすり合わせなきゃいけない。コミュニケーションの経験にもなると思います」(西野さん)

こどもゆめ横丁のクライマックス。中央のステージで、フォルクローレ演奏を楽しむ。  撮影:太田美由紀

この日の売り上げは、全ての店を合わせると、横丁史上最高の380,300円。売上から納める横丁税は38,030円。この税金は、夢パークのために使われます。子どもたちとスタッフで結成された「横丁楽しくしよう会(YTK)」で何をするか、何を作るか、時間をかけて話し合っていきます。

店の解体では、バラした木材の釘を1本1本全て抜くまで子どもたちがやり遂げる。  撮影:太田美由紀

店も自分たちで解体してようやく解散(日没までに終わらせるため、解体だけは大人の力も借りて一気に取り壊します)。その帰り道、再び大きな荷物を持った子どもたちは、あちこちでこんな会話をしていました。

「ああ、疲れた。お昼ご飯食べる暇もなかったし、立ちっぱなしだよ」

「ホント、疲れたよね。でも楽しかった!」

「来年は、何屋さんにしようかな」

日はすっかり落ちて、シルエットになった子どもたちが、軽やかな足取りで帰っていきました。

次回は、学校や家庭・地域の中に居場所を見いだせない子どもや若者が安心して過ごせる居場所「フリースペースえん」、夢パークで行われた「野染め」の様子をお届けします。

〈教育学者・汐見稔幸先生から〉

こどもゆめ横丁は、子どもたちが大人の手を借りずに街を運営するようなイベントですね。ドイツのミュンヘン市には、同じような取り組みがあります。

ミニ・ミュンヘンという小さな仮設都市で、8月の夏休み期間に3週間だけ7歳から15歳までの子どもだけで運営されます。もう30年以上前から行われているものです。

子どもたちが市長や議員、銀行員や大工、調理師やデザイナーなどあらゆる仕事をして街を運営します。楽しみながら、市民として自分たちの街を運営する経験をするのです。

こどもゆめ横丁でも、自分たちで企画、運営し、値段をつけて、税金を払って、その税金を使って自分たちの暮らしを良くしていくための話し合いをしています。これは、まさに市民社会で市民として生きていく練習です。

市民とは、自分たちのコミュニティをよりよいコミュニティにしたいと思って行動する人のこと。みんなで議論し、全員が政治の主人公になる社会、それが本当の市民社会です。

これからの日本は、そのような本当の市民が作る「市民社会」に変えていくことが必要です。本当は学校がそうした練習の場になってほしいのですが、子どもたちにこうした経験の機会があることはとても大切ですね。

取材・文/太田美由紀

汐見稔幸(しおみ・としゆき)PROFILE
1947年、大阪府生まれ。教育・保育評論家。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。東京大学名誉教授、エコビレッジ「ぐうたら村」村長、一般社団法人家族・保育デザイン研究所理事、『エデュカーレ』編集長。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。著書に『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(河出新書)、『これからのこども・子育て支援』(風鳴舎)、『「天才」は学校では育たない』(ポプラ新書)など多数。

太田美由紀(おおた・みゆき)PROFILE
1971年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集部を経て独立。育児、教育、福祉を中心に、誕生から死まで「生きる」を軸に多数の雑誌、書籍に関わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』の番組制作やテキスト制作に関わる(2020年まで)。2011年より新宿区教育委員会・家庭教育ワークシートプロジェクトメンバー。2017年保育士免許取得。子育てコーディネーターとして相談現場でも活動。「人間とは何か」に迫るため取材・執筆を続けている。初の自著『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)重版出来、好評発売中。

保育所、認知症デイホーム、地域の寄り合い所といった3つの機能をあわせ持つ施設「地域の寄り合い所 また明日」が一冊に。幼い子どもと認知症の高齢者が共に暮らす“強み”とは。『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』(著:太田美由紀/風鳴舎)。
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おおた みゆき

太田 美由紀

編集者・ライター

1971年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集部を経て独立。育児、教育、福祉を中心に、誕生から死まで「生きる」を軸に多数の雑誌、書籍に関わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』の番組制作やテキスト制作に関わる(2020年まで)。 2011年より新宿区教育委員会・家庭教育ワークシートプロジェクトメンバー。2017年保育士免許取得。子育てコーディネーターとして相談現場でも活動。「人間とは何か」に迫るため取材・執筆を続けている。 初の自著『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)重版出来、好評発売中。 ●『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』公式HP

1971年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集部を経て独立。育児、教育、福祉を中心に、誕生から死まで「生きる」を軸に多数の雑誌、書籍に関わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』の番組制作やテキスト制作に関わる(2020年まで)。 2011年より新宿区教育委員会・家庭教育ワークシートプロジェクトメンバー。2017年保育士免許取得。子育てコーディネーターとして相談現場でも活動。「人間とは何か」に迫るため取材・執筆を続けている。 初の自著『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)重版出来、好評発売中。 ●『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』公式HP

しおみ としゆき

汐見 稔幸

教育・保育評論家

1947年、大阪府生まれ。教育・保育評論家。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。東京大学名誉教授、エコビレッジ「ぐうたら村」村長、一般社団法人家族・保育デザイン研究所理事、『エデュカーレ』編集長。 専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。著書に『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(河出新書)、『これからのこども・子育て支援』(風鳴舎)、『「天才」は学校では育たない』(ポプラ新書)など多数。

1947年、大阪府生まれ。教育・保育評論家。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。東京大学名誉教授、エコビレッジ「ぐうたら村」村長、一般社団法人家族・保育デザイン研究所理事、『エデュカーレ』編集長。 専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。著書に『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(河出新書)、『これからのこども・子育て支援』(風鳴舎)、『「天才」は学校では育たない』(ポプラ新書)など多数。