誰もが胸を張って生きていける社会へ 自閉症の息子のニーズを追い求めた先に見えてきたもの

GAKUが自閉症アーティストになるまで #3 アイムの放課後等デイサービス「エジソン高津」

療育に正解はない 子どもの専門家は親

それでも、子どもの発達に悩む保護者は、ついつい療育の専門家や権威に頼ってしまいがち。

でも、典雅さんは「療育の正解なんて、誰も持っていない。だから、子どもの専門家は当事者であるその子の親だと僕は思っています」といいます。がっちゃんを育てた典雅さんの言葉は、強く響きます。

「子どもの一番の理解者は親であって、他の誰でもないです」(典雅さん)  撮影:葛西亜理紗

典雅さん:現在、アイムの生徒は全施設で300世帯ほど。これまでに約500世帯の子どもたちを見てきました。それでわかったことは、特別な療育は必要ないということ。がっちゃんもここのみんなも、毎日、こんなにハッピーに過ごせているんですから。

それと、よく「自分の子の才能にどうやって気づくのか」「がっちゃんのようなアーティストになるには何をさせたらいいの」といった相談をされますが、そんなのは知らない(笑)。がっちゃんだって、いつか絵を描くことに飽きてしまうかもしれない。それは常に思っています。だから、子どもに過度な期待はしないことが一番なんですよ。

また、典雅さんは子育ての世界にこうあるべき論はないとしながらも、「親として大事なのは、折れない心をどう育てるのか」ということだと話します。

典雅さん:人間、心が折れてしまったら終わり。受験に受かったり、良い企業に就職したりしても、心が折れたらアウトなんです。他人に否定されても関係ない、どれだけ強い感性を育めるのか。それって、そもそも親が心配性だと難しいんです。だから、アイムの親御さんたちには、「まずは親である自分自身を変えることから始めましょう」って伝えるようにしています。

エジソン高津にて。アイムのスタッフには、生徒の保護者も多く、「アイムの理念に賛同する保護者の方にたくさん協力してもらっています」(典雅さん)。  撮影:葛西亜理紗
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