注意すべき二次障害と対応
今、不登校の児童は約25万人(※)という統計が出ていますが、その中には相当数のディスレクシアの子どもが含まれている可能性があると思います。(※令和3年度・文部科学省)
ただ不登校の児童は頭痛や腹痛、不眠、情緒不安定などといった二次的な障害のほうが表出するため、大人はそちらの対処に奔走することになり、肝心の読み書きに関しては対応がないままになりがち。そうすると、学習の遅れが出てくるということになるのです。
日本ではひらがな、カタカナ、そのあと漢字を小学校で1000以上学び、ローマ字や英語も学ばなくてはなりません。このように、ディスレクシアの子どもには、学校生活において「波状攻撃的に困難さが襲ってくる」という現実があります。
ディスレクシアの子どもは、読み書きに困難さがあります。しかし、たとえば書くのが苦手な子が、パソコンでの入力・回答にすれば大丈夫だったり、記述ではなく口頭試問に変更したり、選択問題に変えたりすることで、解答できるようになるケースもあります。
学校から「この生徒は、きちんと分かっている」と正当に評価されれば、子どもが「自分はできる」と実感をもつことができて自信に繫がり、学習に意欲的に取り組めるようになります。
アセスメント(審査)を受けよう
私たちが運営する認定NPO法人エッジでは、小学2年生以上のディスレクシアの子どもさんに対して個別アセスメントを行っています(小学1年生までは個別相談)。
個別アセスメントでは読み書きのスピード、流暢性、正確性を客観的に測り、年齢平均と比べてどの部分がどの程度困難かを知ることができます。
また、本人に向いた具体的な学習方法、家庭でできること、学校での支援や合理的な配慮について記載した意見書をお出ししています。
これを参考にしていただき、家庭で試して本人ができると考えられたら、学校側との交渉や先生方への提案も、よりスムーズに進めることができます。
個別アセスメントのご相談をいただく層は学習段階に呼応しており、漢字の学習量が増える小学2年生、次は小学5~6年生、そして中学生のお子さんが多いですね。
ほかにも高校受験までは頑張ってこなしたけれど、高校に入ってから授業についていけなくなったという高校生や、大学入試を諦め気味になっている方もいらっしゃいます。しかし学び方や試験のやり方を調整・変更することで、自分の望む進学が実現したという例もたくさんあります。
アセスメントのツールには手に入りやすいものもあり、NPO法人エッジに相談に来られる方の中にも「これをやりました」「これをもらったのですが、どうやればいいのでしょう?」と、結果を持参される方がいらっしゃいます。しかし「具体的にどのような学習方法があるか」というところに結び付けなければ、ツールで検査をする意味もありません(※)。
(※注:アセスメントのツールは、例えば都や県の教育委員会などがウェブサイト上で無料で公開している。しかし、アセスメントができるだけではなく、教育的な支援や調整・変更に具体的につなげられることろはごく少ない。NPO法人エッジでは、アセッサー養成講座を開講して、育成も行なっている)
ですから「自分の子どもは、ディスレクシアかもしれない」と思われたなら、ぜひエッジをはじめディスレクシアのアセスメントができる機関にアクセスしていただければと思います。
【ディスレクシアの全ての人が活き活きと暮らせる社会を目指す団体「NPO法人エッジ」代表・藤堂栄子さんインタビューは全3回。第1回ではディスレクシアの基礎知識と現状について伺いました。続く第2回では「ディスレクシアの子どものために、親ができること」について伺い、最後の第3回では、藤堂さんご自身の子育て体験とそこから得られた発見について伺います。】
撮影/市谷明美
イラスト/山口陽菜
木下 千寿
福岡県出身。大学卒業後、情報誌の編集アシスタントを経てフリーとなる。各種インタビューを中心に、ドラマや映画、舞台などのエンターテイメント、ライフスタイルをテーマに広く執筆。趣味は舞台鑑賞。
福岡県出身。大学卒業後、情報誌の編集アシスタントを経てフリーとなる。各種インタビューを中心に、ドラマや映画、舞台などのエンターテイメント、ライフスタイルをテーマに広く執筆。趣味は舞台鑑賞。