学童期の発達障害グレーゾーンの子の困りごと 具体的な対処法を紹介
#3 「授業についていけない」「かんしゃくを起こす」そんな困りごとを解決
2024.01.12
発達障害の特性がみられるものの、そこまでくっきりとは際立っていない、いわゆる“グレーゾーン”の子どもたち。グレーゾーンの子にとって、小学校生活は自分の持つでこぼこを自覚し、少しずつ対処法を身につけていく時期にさしかかります。
やることが増え、壁にぶつかりやすい時期でもありますから、本人が無理なくスムーズに毎日を過ごしていけるよう、引き続き周りが積極的に声をかけ、手伝っていきましょう。
『発達障害グレーゾーンの子の育て方がわかる本』(横須賀市療育相談センター所長・広瀬宏之先生監修)からその方法をご紹介します。
広瀬宏之(ひろせ ひろゆき)
横須賀市療育相談センター所長。小児精神・神経科医、医学博士。専門は発達障害の支援。1995年東京大学医学部卒業。同附属病院小児科、同大学院、国立成育医療センターこころの診療部発達心理科、米国フィラデルフィア小児病院児童精神科を経て、2008年より現職。
目次
子どものSOSをキャッチしよう
1年生になると、教室でみんなといっしょに学び、給食を食べます。身の回りのこともある程度は自分で行わなければなりません。
宿題も出るでしょう。保育園・幼稚園のころと比べると急にやることが増えるので、慣れるまでは大変に感じるかもしれません。
小学校前半(1~3年生)の目標は、学習意欲を持つことと、集団生活に慣れることです。とくに前者は、高すぎないハードルを設定して「できる!」を重ね、学ぶことが楽しいと体感してもらうことが不可欠です。
定型発達の子の場合はなんとなくできるようになることも、グレーゾーンの子の場合はそうはいかないことも多いものです。何に困りやすいのか、SOSの出やすいポイントがあるので、把握しておきましょう。
就学後にSOSが出やすい3つのポイント
①勉強の遅れ
学習面では、その子のでこぼこに合った学習環境が必要不可欠。適切な支援がないと授業の内容を十分に理解できず、ついていけなくなることがあります。
②友達とのトラブル
「空気を読むのが苦手」「衝動的に動いてしまう」など、子どもの持つでこぼこのタイプによっては友達とぶつかることもしばしば。大人が間に入る必要があります。
③身の回りの生活習慣
次の日の授業の準備や宿題など、身の回りのことも自分でやることが求められます。でこぼこがある子にとってはどれもハードルが高く、つまずきがちです。
“できたら”ではなく“やり始めたら”ほめる
「小学生なんだからこれくらいできるよね」と、親はつい期待を込めてハードルを高く設定しがちです。しかし就学前と同様、ハードルは低めにするのが基本。そして、できてもできなくても、子どもが何かをやり始めたらほめましょう。
でこぼこのある子は壁にぶつかりやすく、ほめてもらえる機会を逃しやすいのです。プラスにならなくても、マイナスがゼロになったらほめてあげてください。
ほめることは明日への活力になります。何をしても報われない、そんな気持ちにならないように声をかけていきましょう。
子どものころにたくさんほめてもらった経験は、大人になってから「自分で自分のがんばりをほめる」という行動につながります。周りからほめられなくても、自分自身をねぎらい、自己肯定感を維持することは、でこぼこと付き合っていくうえでも大切なスキルです。