ダウン症児のママ都議・龍円愛梨「インクルーシブ公園は親も子も大きなプラス」

シリーズ「インクルーシブ公園」最新事情#2‐2 東京都議会議員・龍円愛梨氏インタビュー ~インクルーシブ公園が教えてくれること~

東京都議会議員:龍円 愛梨

都立初のインクルーシブ公園・砧(きぬた)公園内「みんなのひろば」(東京都世田谷区)のオープン後、訪れた龍円さんとニコくん(2020年当時)。  写真提供/龍円愛梨
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都立砧(きぬた)公園内「みんなのひろば」(東京都世田谷区)、都立府中の森公園内「もり公園にじいろ広場」(東京都府中市)と、都内を中心に増えているインクルーシブ公園。

障がいの有無や国籍、年齢、ジェンダーなどに関係なく、すべての子どもが平等に遊べるように作られたこれらの公園は、親子にとって、地域の人々にとって、社会にとって、どのようなメリットをもたらすのでしょうか。

都立で初となるインクルーシブ公園「みんなのひろば」が整備されるきっかけを作った東京都議会議員で、ダウン症のある子どものシングルマザーでもある龍円愛梨(りゅうえん・あいり)さんに伺います。

※全2回の後編(前編を読む)

龍円愛梨PROFILE
東京都議会議員。1977年スウェーデン生まれ。1999年テレビ朝日入社、アナウンス部、報道局記者として勤務。2011年に退社し渡米。2013年、カリフォルニア州でダウン症のある長男を出産。帰国後、2017年に東京都議会議員選挙で初当選。2019年には、第14回マニフェスト大賞グランプリを受賞。

アメリカ・カリフォルニア州での出産・子育て経験から、インクルーシブ公園の整備を提案した東京都議会議員・龍円愛梨さん。ダウン症のある長男・ニコくん(9歳)を育てるママです。  Zoom取材より

他者を知り一緒に楽しく遊べる場所

──インクルーシブ公園には、さまざまな親子が遊びにきていますね。龍円さんが見聞きして、印象に残っているエピソードを教えてください。

龍円愛梨さん(以下、龍円さん) 「みんなのひろば」がオープンしたとき、身体的障がいのある小学校高学年の子のお母さんが「生まれて初めて公園で遊びました。今日が公園デビューです!」と喜んでいらっしゃって、私もうれしかったのをよく覚えています。

同じく「みんなのひろば」で、人気のブランコの列に息子と並んでいたときのこと。私たちの前に歩行器具を利用している女の子がいて、背もたれ付きのブランコに乗ったんです。

今まであまりブランコに乗った経験がなかったのでしょうね、「きゃ~!!」と大きな歓声を上げて大喜び。その姿を見て、ジーンとしてしまいました。

すると、私たちの後ろに並んでいた男の子が、お母さんに「この公園は、障がいのある子のための公園なの?」と聞いたんです。

「お母さんは何て答えるかな?」と思って聞き耳を立てていたら、「この公園は、障がいのある子もない子も、みんなが遊べる公園なんだよ。だから、みんなが遊んでいいんだよ」と言っていて、「まさに、こんな会話が生まれてほしいと思ってたのよ!」とうれしくなりました。

こうした親子の会話は、ほかの場所ではなかなか生まれないですもんね。

砧(きぬた)公園内の「みんなのひろば」(東京都世田谷区)は、緑豊か。自然に触れてリフレッシュできるのも、この公園の魅力です。  写真提供/龍円愛梨

──障がいのない子にとっても、その親にとっても学びがありますね。

龍円さん そう思います。最近だと、2021年7月に完成したインクルーシブ公園、「恵比寿南二公園」(東京都渋谷区)へ遊びに行きました。

そこには背もたれ付きの4人乗りシーソーがあるのですが、中央の台が円盤状になっていて、その台に乗ってシーソーを揺らすこともできます。

順番に並んでいると、友達同士ではない子どもと一緒になることもあって、9歳の息子が乗ったときは、いちばん小さい子が3歳ぐらい、上の子が中学1年生の女の子でした。

どうやら近くに住んでいる子どもたちで、いつもこの公園で遊んでいるのか、慣れた様子で知らない子も交えて遊んでいました。

大きい子たちが、小さい子たちに「怖い? 大丈夫?」と聞きながら、シーソーをバウンスする強さを加減してあげたり、乗り降りを手伝ったりもしていました。

息子を含め、世代を越えた子どもたちが一緒に遊んでいるのです。3歳児と中学生が遊ぶって、普段はなかなか見ない光景ですよね?

そのうち、中学生の子が息子を見て「うちの学校にはニコくん(息子の名前)みたいな子がいないの。とっても純粋でかわいいから、もっと一緒に遊びたいのに残念」と言ったんです。

その子は、息子に違いがあることは気づいたはず。

「違いに気が付いて、自分の周りに違いのある子がいないことを残念に思ってくれるなんて、まさにインクルーシブ!!」とうれしくなりましたね。

恵比寿南二公園の4人乗りシーソー。背もたれが高いので筋力の弱い子どもでも座れて、中央の円盤状の台は寝転んでもOK。地域の子どもたちと楽しそうに遊ぶ愛息・ニコくん(左)。  写真提供/龍円愛梨

孤立しがちな親子と地域が繫がるきっかけに

──幼稚園や保育園、学校だけでは築けないコミュニティが、インクルーシブ公園では生まれているんですね。

龍円さん 子どもだけでなく、親にとっても繫がりが生まれる場所だと思います。公園だと知らない子同士でも遊び始めることがありますが、そうすると、親同士も自然と会話を始める傾向がありますよね。

例えば、4人乗りシーソーでは子どもたち同士がコミュニケーションをとっていて、その周辺では地域の親同士がコミュニケーションをとっている。「なるほど、この遊具はすごいな」と感心しました。

──親同士の繫がりが生まれると、子育てがしやすくなりそうです。

龍円さん そう思います。乳児期で保育園などを利用していない親子は、孤独を感じがちです。特に歩き始める前や歩き始めたばかりの子どもは、遊び場が限られますよね。

府中の森公園では、インクルーシブ公園である「もり公園にじいろ広場」ができて、そういった小さい子どもたちがたくさん遊びに来るようになったと公園管理事務所から聞きました。孤立しやすい時期に公園で遊べて、地域に友達や知り合いが増えるのはよいことです。

スペシャルニーズ(障がい)のある親子は、乳幼児期により孤立しやすい傾向にあります。障がいを受け入れるのに時間がかかり、前向きな気持ちで外出できなかったり、人の視線が気になってしまったり。

周りに迷惑をかけてしまう心配などから、ほかの子どもが多くいる場に行きたがらないこともあります。多様な子どもが集まるインクルーシブ公園は、孤立しやすい親子が地域と繫がるきっかけになるはずです。

公園は、子どもにとって「成長の場」です。体を動かせば身体的な発達も促されますし、他者と触れ合うことでコミュニケーションや社会性が養われ、「友達と遊ぶと楽しい」「虫の観察はおもしろい」「お花がきれい」といった感性も育ちます。

インクルーシブ公園によって、すべての子どもがその「成長の機会」を得られるようになるのではないでしょうか。

緑が豊かで気持ちのいい、府中の森公園内「もり公園にじいろ広場」。遊具には近隣の幼稚園や保育園、小学校に通う子どもたちが考えたニックネームが付けられているそう。  写真提供/龍円愛梨
スプリングシーソーのニックネームは「バネバネバランス」。座面の幅が広く、友達や介助者と並んで乗ることができます。  写真提供/龍円愛梨
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