発達が気になる子どもが「保育園留学」で成長 小樽市で療育とレジャー体験[北海道]

『保育園留学』体験記#3 観光&療育の成果編

ライター:永見 薫

療育最終日は室外活動へ

いよいよ最終日。この日の療育は、特別プログラムが用意されていました。

いつもは「きっずてらす」内での活動ですが、最終日は施設を飛び出て、同じ「ウイングベイ小樽」内にある、大型遊具施設へ出かけるのです。

「きっずてらす」の活動として、月に1回、こうした事業所外の大型遊具施設に行きます。粗大運動(体を大きく使う運動)の活動を促進するためです。

同じ「ウイングベイ小樽」内にある大型遊具施設。ふわふわ遊具や大型トランポリン、バンジージャンプなど体幹を鍛える遊びができます。  写真提供:永見薫
すべての画像を見る(全18枚)

体を動かすことに苦手意識がある息子は、普段はこうした大型遊具施設にいくと、躊躇しがちです。ましてやお友達が多いと、自分のペースでできないため、ますます遠慮する傾向があります。

しかしこの日は、平日で利用者も多くなく、子どもたちにとっても安心してトライできる環境。こうした背景が後押ししたのか、息子はのびのびと活動をしていたそうです。

流石にバンジージャンプは怖がって遠慮したようでしたが、いつもよりも積極的に挑戦している姿を見ることができ、とても驚きました。

療育にこうした遊具を取り入れてくれるのも珍しく、また商業施設内で行き来ができるためとても便利ですし、広大な施設のなかにあるからこその活動だな、と感じました。

キッズ用バンジージャンプ。さすがに息子は怖がってトライしませんでした。  写真提供:永見薫
怖がるかと思いきや思いっきり楽しんでいたそう。場の空気や、子どものやる気の大切さを思い知ります。  写真提供:発達支援事業所「きっずてらす」
お友達と自然に手をつないで仲良く回っていたと聞き感動。  写真提供:発達支援事業所「きっずてらす」

環境を変えることで見えることがある

こうして無事に終えた8日間の保育園留学プログラム。参加することで、どんな変化が見えるのか未知数でした。

というのも、療育は病を治すかのように劇的な変化があるものではありません。日々の活動の積み重ねを経て、振り返ればある日少しずつ変化して「いた」と気づくもの。日頃、療育を受けている人は実感するところだと思います。

ですから、1週間程度参加したところで何が変わるのだろう? という思いもあったのです。ところが行ってみてわかったのは、「思った以上に子どもが緊張感やストレスなく、周囲になじんでのびのびと活動していたこと」です。環境の変化が良い方向に作用したのかもしれません。

また、最終日に施設のスタッフとの面談で、「知らない場所にやってきて、“わからないこと、困ったこと”を自分の言葉で伝えて解決することができていた」とフィードバックをいただきました。そのおかげで、普段とは違う環境でも適応し、これまでの療育で身につけた力を、きちんと状況に合わせて“発揮できていた”ことに気づきました。

これには、いくつか理由があります。ひとつは、日頃東京で受けている小集団の療育よりも、教室内でのスペースも人の密度も余裕があることから、子どもが緊張せずのびのびできていたことです。

また、運動療育のプログラムが「良い行動」を引き出してくれたのかな、とも思います。とかくトレーニングになりがちな運動療育ですが、トレーニング要素よりも、「楽しさ」を重視したゲーム感覚で体を動かす「遊び」の要素を多く取り入れていたため、いつもより自然と楽しめていました。

そして、先生方の子どもへの促し方も大きく影響がありました。「できる」をのばすことはもちろんのこと、「できないこと」はやらなくてはいいよ、とは言いません。

いつも通う療育では「できないこと」は避け、自分が「できそう」と思ったら、自らやりたいこと・できることを申告して、挑戦させるスタイル。方針が分かれるところでした。

しかし、ほんの少し手を伸ばせば「できるかもしれない」という加減のことには挑戦するよう、甘やかしすぎず・厳しくしすぎず、促す声がけをしてくれたことで「できる」を実感できていたのだと思います。

仮に療育であらゆることを身につけたとしても、環境が変わってもなお「同じようにできる」とは、限らないわけです。ですが、場所が変わっても、東京で取り組んでいたことがきちんと発揮できていたことは、私たち家族にとっての喜びでした。

私たち家族みんなにとって、1週間とたっぷり時間があることも良い影響をもたらしてくれました。

日頃は親子ともども、あわただしくスキ間をぬって療育に通っていますが、場所を変えることでじっくりと「そのこと」に集中できます。また、親も日々の余計な雑念から逃れられるので、より子どもと向き合えた実感があります。

今回の滞在。息子の心に深く刻まれたようです。

東京に帰宅をしてからもなお、小樽のことを気にしています。療育で使った遊具のことを思い出し、「あれで遊びたい」と言うこともあれば、毎日の天気予報でも、北海道や小樽の天気のチェックが欠かせません。

思い出しては胸が高ぶり「また行きたい」と何度も口にする日々。親にとってももちろんですが、子にとって第2の、第3の故郷になってくれたらなあと願っています。

各家庭によってお子さんの困りごとの形はさまざまのため、「保育園留学」挑戦までのハードルがある人もいるかもしれません。ですが、「場所を変えたからこそ見えること」もあるのではないでしょうか。

【日本初の「発達が気になる子ども向け『保育園留学』プログラム」体験レポート、第1回では「準備・出発・到着まで」、第2回では「療育&生活」をレポートしました。最後の第3回となるこの記事では、現地の魅力と療育の成果をお伝えしました】

【参考】
保育園留学
発達支援事業所「きっずてらす」
小樽市総合博物館
小樽運河クルーズ

「発達が気になる子ども向け『保育園留学』プログラム」体験レポ
#1 事前準備はどれくらい? 準備・出発・到着編
#2 北海道小樽市での『保育園留学』と療育の実体験
#3『保育園留学』プログラムに参加して得られた良い変化とは?(⇦今回はココ)

(画像:アフロ)
この記事の画像をもっと見る(全18枚)
44 件
ながみ かおる

永見 薫

Kaoru Nagami
ライター

複数の企業勤務後、フリーライターへ。地域や街、暮らしや子育て、働き方など「居場所」をテーマ に、インタビューやコラムを執筆しています。 東京都の郊外で夫と子どもと3人でのんびり暮らす。知らない街をおさんぽしながら、本屋を訪れる休日が好き。 X:https://twitter.com/kao_ngm note:https://note.com/kaoru_ngm

複数の企業勤務後、フリーライターへ。地域や街、暮らしや子育て、働き方など「居場所」をテーマ に、インタビューやコラムを執筆しています。 東京都の郊外で夫と子どもと3人でのんびり暮らす。知らない街をおさんぽしながら、本屋を訪れる休日が好き。 X:https://twitter.com/kao_ngm note:https://note.com/kaoru_ngm