人気作家が8年続けた「子どもインタビュー」はわが子の内面成長の尊い記録

シリーズ「子どもの声をきく」#2‐3 児童書作家・杉山亮さん~子どもインタビューでわかる成長~

児童書作家・ストーリーテラー:杉山 亮

現在、杉山さんが住む山梨県・小淵沢の自宅前にて。子どもインタビューは、当時埼玉県長瀞町にあった自宅ではなく、毎回、近所の喫茶店やレストランへ出かけ、45分間、1対1の対面で行っていました。  写真:桜田容子

3歳の会話の中に今につながる言葉があった

隆は高校卒業後、自然環境を学ぶアウトドア系の専門学校に入り、現在はネイチャーガイドとして働いています。

森林や山岳のガイドとして、山好きの人に自然のあれこれを教えながら一緒に山頂まで登ったり、小学校の団体登山のお世話をしたり。要は、重い荷物を背負い、ときには危険な場所にも行く、体を張った仕事をしているわけです。

また、小学校などで自然の状況を講義することもあります。体を張った山歩きと、学校で講師として話すのは、技術としては全然違う。いわば、二足のわらじです。

今思えば、この「二足のわらじ」の“伏線”が、4歳のインタビューにあったと思うんです。

次のくだりです。
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※以下『子どものことを子どもにきく』から抜粋。(あきら=父の亮さん当時35歳、たかし=息子の隆さん当時4歳)。

あきら ねえ、この前言ってた話さー、隆、大きくなったら飛行機のパイロットになって、それでフライトのない日にはパン屋さんやりたいって話、ほんと?
たかし パン屋さんじゃなくてレストランでしょ?
あきら あれ、そうだっけ。
たかし パン屋はおねえちゃんだもの。
あきら それ、とってもいい考えだなあ。ねえ、飛行機に乗るにはどうすればいいか知ってる?

─・─・─・─・─・─・
僕としては、人生は有限だから、やりたいことはみなやったほうがいいよ、という考え。プロ野球の大谷翔平選手がその好例で、ピッチャーかバッターか、どちらかに絞る必要はないと思っています。

隆も4歳の時点で、まさにそう考えていたんです。「大きくなったらパイロットとパン屋の両方をやりたい」と。

このとき、「特にやりたいのはどっち?」なんて決めさせていたら、「両方やりたい」という芽を摘んでいたかもしれない。そう思うと、隆の答えを絶賛していたことは大正解でした。

記録を取っておくと、「過去の話に、今につながる言葉があったんだ」ということがわかります。記録をしていなければ絶対に忘れていた。そう思うと、このインタビューは実に尊い成長記録になりました。

話が長くなりそうなので、ここでいったん区切ります。次回、どのような思いで子育てをしてきたか、お話しします。

2022年11月に文庫化され再発売となった『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)。

杉山亮(すぎやま・あきら)
1954年東京生まれ。離島などでの保父を務めた後、埼玉県でおもちゃ作家として、手作りのおもちゃ屋「なぞなぞ工房」を主宰。現在は山梨県北杜市の小淵沢に住み、児童書作家兼ストーリーテラーとして活動中。『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆している。ストーリーテラーとして、全国各地の小学校などを廻り、話をする「物語ライブ」も行っている。2022年11月に、かつての単行本を文庫化した『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)が発売。

取材・文/桜田容子

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すぎやま あきら

杉山 亮

Akira Sugiyama
児童書作家・ストーリーテラー

1954年東京生まれ。離島などでの保父を務めた後、埼玉県でおもちゃ作家として、手作りのおもちゃ屋「なぞなぞ工房」を主宰。現在は山梨県北杜市の小淵沢に住み、児童書作家兼ストーリーテラーとして活動中。 『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆。ストーリーテラーとして、全国各地の小学校などを廻り、話をする「物語ライブ」も行っている。 2022年11月に、かつての単行本を文庫化した『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)と、本人のTwitter発のメッセージ集『児童書作家の思いつき: 子どもと子どもの本のためのヒント集』(仮説社)が発売。

1954年東京生まれ。離島などでの保父を務めた後、埼玉県でおもちゃ作家として、手作りのおもちゃ屋「なぞなぞ工房」を主宰。現在は山梨県北杜市の小淵沢に住み、児童書作家兼ストーリーテラーとして活動中。 『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆。ストーリーテラーとして、全国各地の小学校などを廻り、話をする「物語ライブ」も行っている。 2022年11月に、かつての単行本を文庫化した『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)と、本人のTwitter発のメッセージ集『児童書作家の思いつき: 子どもと子どもの本のためのヒント集』(仮説社)が発売。

さくらだ ようこ

桜田 容子

ライター

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。