「子どもインタビュー」でわが子の本音が言語化! 人気作家が8年続けて知った大切なこと

シリーズ「子どもの声をきく」#2‐2 児童書作家・杉山亮さん~“子どもインタビュー”の極意

児童書作家・ストーリーテラー:杉山 亮

ご自宅で話を聞かせてくれた児童書作家・ストーリーテラーの杉山亮さん。  写真:桜田容子
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「子どもの声をきく」ことが昨今重要視されている中、26年前に一人の子どもの声を聞きまとめたロングセラーの本があります。その名も『子どものことを子どもにきく』(杉山亮著・岩波書店刊)。

児童書作家の杉山亮さんは、1989年から1996年までの8年間、毎年6月に息子の隆(たかし)さんを喫茶店やレストランに連れ出し、“子どもインタビュー”を実施。隆さんが3歳から10歳になるまで続けました。

毎回何らかのテーマを決めたインタビューは、録音テープ1本分の45分間では足りないほど話が尽きなかったそうです。

杉山さんはどのようにして子どもの話を引き出してきたのでしょうか。当時を振り返ってもらいました。

※全4回の2回目(#1を読む)

杉山亮(すぎやま・あきら)PROFILE
1954年東京生まれ。保父、おもちゃ作家を経て、児童書作家兼ストーリーテラーに。『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆。

インタビューは日常会話の延長

まず大前提として、僕らは会話が多い親子でした。僕は当時住んでいた埼玉県の長瀞町(ながとろまち)で、「なぞなぞ工房」というおもちゃ工房を開き、そこでおもちゃを作って売ったり、書き物をしたりして、主に自宅で仕事をしていました。

通勤がない分、家族で過ごす時間もじゅうぶん取れたし、自宅にはテレビを置いていないので、テレビに気を取られて会話が上の空、ということもありませんでした。

そんな環境でしたから、保育園の送迎中、食事中、自宅で何かしているとき、いつもなんやかんやと話していましたね。まあ、2歳上の姉のほうがおしゃべりで、それに比べれば隆は無口なほうでしたけれど。

だから、親子インタビューは、あくまでも普段の会話の延長。あえて違いをあげるとしたら、テーマを意識して話を進めていたことと、聞く場所を家という日常から切り離したこと。それくらいです。

スタートは子どもが今興味のあるテーマから

テーマはその時々の思いつきで決めました。今日はこんな話をしよう、と決めてから始めたほうが話しやすいでしょう。そこからずれたらちょっと戻したり、話を掘り下げたりすればいい。

もしこの記事を読んだ方が「我が家も“子どもインタビュー”をしてみよう」と思われたら、テーマは、子どもが最近熱中しているスポーツなど、話しやすいものから始めるのもいいですね。

逆に、「最近何か気になっていることある?」と子どもに聞いてテーマを探ろうとしても、漠然とした聞き方では答えに詰まるだけです。

インタビューは、あえて喫茶店やレストランまで連れていき、行いました。自宅でやろうとすると何か余分な情報が飛び込んできたり、何か雑用をしながら話を聞いてしまいかねない。でも喫茶店だと、「このときだけは特別な時間」という気持ちがしますよね。お互いに。

「ながら会話」ではなく、面と向かい合って1対1で話すことも大事だと思ったんです。隆本人も、「今日はいつもとは違う。しかも自分だけ選ばれた」と、なんとなく緊張感が出てくる。ところてんとかクリームソーダとか好きなものを注文できますしね。

そうやってインタビューを始めると、普段はどちらかといえば無口な隆が、質問を投げかけることでどんどん言葉が出てくる。

返ってくる言葉は短い単語でも、何回か質問をしていくうちに、自分のほうから「あ、そういえば」という感じで言いたいことを付け足してくるのです。

聞かれなければ思い出せないようなことっていっぱいあるじゃないですか。そういう話がどんどん出てきたのが、おもしろかったですね。

例えば、こんなふうに。
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※以下『子どものことを子どもにきく』から抜粋。(あきら=父・亮さん当時38歳、たかし=息子・隆さん当時6歳・小学1年生)

あきら あのさあ、今日はたけのこ保育園のことをききたいんだけど、隆、おぼえてる?
たかし うん、おぼえてるよ。
あきら どれくらい行ったんだっけ?
たかし 最初があひる組で次がひばり組、そいから
(※原文ママ)きじ組でわし組。だから四年。
あきら ああ、そうだね。先生の名前はおぼえてる?
(中略)
あきら ねえ、保育園でなにが一番おもしろかった?
たかし うーん、なにがって?
あきら いきなりそうたずねられてもわかんないよな。じゃ、一日で一番楽しいのはなんの時間だった?
たかし お帰りの時間。
あきら え、そうなの。早く帰りたかったの?
たかし ううん、そうじゃなくてなにやってもいいから。
あきら ああ、自由時間ってことね、お迎えが来るまで勝手に遊んでていいんだ。
たかし そう。
あきら 一日中ひまだったんじゃないの? お勉強もおけいこごともないし、劇や合奏もしないんだし。
たかし ううん、忙しかったよ。
あきら そうなの。一日の流れはどうなってたのかな、朝行くとまず、何をするの?
(中略)
あきら で、結論として保育園はどうだったの?
たかし うーん。……。まあまあかな。
(そんな大人びた言い方をする隆にぼくはほんの少し感心し、また、ほんの少しつまらないようにも思った。)
あきら なにがいやだったの?
たかし うーん。
あきら 保育園から帰りたくなった時、ある?
たかし ある。注射の時。
あきら アハハ、それはわかる。それから?
たかし うーん、こわかった。
あきら こわかった? そうかあ。……。
(ぼくはもうなんのことだかわかったけど、口に出して確定するのがいやでだまった。)
たかし 三村さん。すぐおこる。
あきら うん。伊部さんは?

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